第40話天真爛漫
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俺は親父と違い身体の線が細い上にどれだけ食べても筋肉や脂肪が付きにくい体質であった。
どれだけ筋トレしようと、同僚と比べて筋肉の増えかたを比べる度に、その差に最近では負の感情がドロドロと俺の胸の中を渦巻き、そのヘドロの様な感情は決して消える事なく俺の中で小さく燻り続けていた。
この感情が産まれたのは恐らく十三歳を迎えた頃であろうか?
周りは背も伸び始めると同時にこの頃から増え始めた筋トレに比例して身体が大きくなっていっていた。
初めは少し遅いだけで俺もいつか大きくなるのだと、彼らと同じ量の練習をしているのだからと、気付いていないフリをし始めた頃からであろう。
この身体の体質はどうやら母親の家系の体質らしく元々代謝の高い身体の家系であったらしい。
その為いくら食べても太らないのが、お母様の自慢でもあった。
しかし、その体質は俺にとっては呪いの何者でもない。
今は何とか同僚よりも倍近くのご飯を食べて何とか食らいついているのだが、他人よりも多く盛られたご飯の量を見るたびに、まるで欠陥品であると言われているかの様で嫌になる。
将来親父である騎士団長を継ぐ者としてよく言われるのだが、そう言われる度に誇らしかったが今ではその言葉を言われるたびに俺の背中にどっしりと重石が乗せられている様な感覚を感じてしまう。
しかしここまでならばまだ良かったのかもしれない。
問題は親父の剣術が俺の体質に全くもって合っていないという事に他ならない。
俺の父上は背の丈二メートルと体格もよく、俺の身体と違ってまるで巌の様な身体をしており、親父の戦いかたはその巌の様な身体を使った力任せな戦法を主軸としていた。
そして当然その戦法は俺には合うわけもなく、今の俺はいつ同僚に抜かれてしまうのかと気が気ではなかった。
そんな時に彼女、アイリーンと出会ったのである。
天真爛漫という言葉が似合う、とても活発で、可愛らしい女性であった。
そんな彼女はこの魔術学園に通う女子生徒達と違って少し毛色が違うように見える為、疑問に思って聴いてみるとどうやら彼女は他の女子生徒と違い平民の出であるという事が分かった。
こうしていつも俺に会いに来てくれる時間があるということは、恐らく彼女は平民というだけで貴族令嬢でもある他の女生徒からハブられてしまっているのかもしれない。
それでも彼女はそんな事をおくびにも出さず、いつも変わらず天真爛漫と輝き、笑顔を振りまいていた。
そして俺はそんな彼女に惹かれてしまうのも致し方ないであろう。
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