第34話完敗
そして俺はリーシャには逆らうまいと心に誓ったのであった。
◆
認めたくは無いが完敗であった。
護りに入っていたにも関わらずクロード殿下と会話をしているという事実に浮かれてただただクロード殿下の言いなりとなってしまっていた。
しかし、私と違いリーシャ様はあれ程羨ましいくらいにクロード殿下に心配されているにも関わらず、普段であればクロード殿下が関わると明らかにテンパってしまっているリーシャ様が冷静に状況を判断して私の逃げ道を完璧に塞ぎ、たったの一撃で止めを刺した。
その一撃は息を潜み一撃に全てをかける遠距離魔撃者のように鮮やかであったと言わざるをえない。
クロード殿下に見惚れて何も出来なかった私と、クロード殿下に見惚れる事なく止めを刺したリーシャ様。
正に未来の王妃としての才能をこうもまざまざと見せつけられては認めるしかないではないか。
私は今まで、私こそ一番王妃に、クロード殿下の婚約者に相応しいと思っていた。
その気持ちはあの瞬間、あの一撃で過去形へと変わった。
「お嬢様、着きました」
「ご苦労様」
そんな事を思っていたからか、今さっき出発したと思っていたのだが馬車は魔術学園敷地内に作られている駐車場まで到着したらしい。
御者が目的の場所に着いた事を告げ、側仕えのメイドが扉を開けて手を差し伸べてくる。
魔術学園の駐車場には既に何台かの馬車が停車しており御者が馬の世話しているのが見える。
その中にクビィスト家の馬車が目に入り、リーシャ様は既に登校している事が分かると否が応にも一気に緊張感が高まってくる。
ただでさえ駐車場は生徒の安全、主に接触事故を考慮されている為学園校舎まで長い距離を歩かなければならないというのに、歩く前から気が重い。
「おはよう御座います、シャルロット様」
そして、魔術学園の門から校舎入り口までのアプローチ、ちょうどその中間に差し掛かった時私に挨拶をしてくる者がいた。
侯爵家の令嬢である私に自分から話しかける事が出来る人物などこの学園では片手の指よりも少ない為、声の主は自然と一人の人物に絞られてくる。
周りには登校途中の学生が多く見られ、皆一様に息をのむのが分かる。
「おはよう御座いますリーシャ様」
声の方向へ顔を向けるとそこには予想していた通りリーシャ様がいた。
私は抵抗する事も無く、そうするのが当然であるという風に右手を胸に添え片膝をつき頭を垂れ、首を差し出す。
「グラデアス王国、ひいてはクロード殿下並びにご婚約者様であるリーシャ様に栄光と繁栄を」
そして私は王国とクロード殿下、そしてクロード殿下のご婚約者としてリーシャ様へ忠誠を誓う。
貴族令嬢の代表格と言っても過言ではないシャルロットがリーシャへ忠誠を誓ったという事件は登校中の多くの学生に見られ一日と待たずして瞬く間に貴族令嬢内で広まるのであった。
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