第35話【アイリーン編】ヒロイン
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リーシャとシャルロットが池にダイブするという事件が起こってから既に半年が経過して、俺もリーシャも無事に二学年へと進学した。
変わった事と言えばミーシャとゼフが婚約し、来年ミーシャが十五となった時を見計らって結婚する事が決まった事や、俺の国王としての勉強や政の仕事が少し増えて来た事などがあげられるのだが、やはり一番の変化はリーシャを取り巻く環境であろう。
あの事件の翌日にはその日書かせたサインの効力なのかシャルロットがリーシャへ忠誠を誓ったらしく、その噂は瞬く間に魔術学園中に広まった。
それまでは反リーシャ派という貴族令嬢が多くいたのだが、貴族令嬢の中での二台巨頭であるリーシャとシャルロットが組んだことでリーシャ派へ寝返った者や、反抗するもリーシャとシャルロットによるロジックハラスメントもかくやという攻撃により言い負かされリーシャ派へとなった者や、その光景を目撃してリーシャ派へと寝返った者等々、半年という短い期間でリーシャは学園中の貴族令嬢に忠誠を誓わせていた。
正に一国の王妃となるべく与えられし天性の才能といっても過言ではないだろう。
そして、貴族令嬢達がリーシャに跪くその光景を目にし、リーシャが敵でなかった事を心の底から安心すると共に、将来リーシャの尻に敷かれるのかなーと思ったりもするのだがリーシャの尻であるのならば敷かれるのもやぶさかではない、むしろ敷かれたいと思ってしまうのは致し方ない事だと俺は思っている。
その為俺が変態なのではなく、リーシャが可愛すぎるのがいけないのだと俺は声を大にして言いたい。
貴族令嬢達をその手腕で一気に束ねたリーシャの美しさたるや、絵画にしても良いくらいの美しさであると思ったものである。
なのでリーシャは天使かな?と思ってしまっても何らおかしなことではない。
くどいようではあるが、そんな美しすぎて可愛すぎるリーシャが悪いのであって断じて俺は変態ではない。
その事を、俺がいかにリーシャは可愛いのか、美しいのか、素晴らしいのか、才能が溢れているのか等々を懇切丁寧に話していると言うのに『その話何回目だよ』とげんなりとした表情と『こいつ変態じゃん』という表情を足して二で割った様な表情をするニーナに誰か教えて欲しいものである。
俺が教えようとするたびにニーナの表情が強くなるので解せない。
美しいものを美しいと思う心が美しいのだと、ニーナはいい加減学ぶべきである。
「きゃっ!?」
「おっと、すまない。考え事をしていて意識が散漫になっていたみたいで……あ………る」
「わ、わわわわ、私の方こそごめんなさいっ!!よそ見していたのはこちらも同じですからお気になさらずにっ!!」
そんな事を思いながら廊下を歩いていると貴族令嬢とぶつかったみたいである。
即座に反応できたお陰で貴族令嬢を支えてコケるのを防げたと安堵しながら謝罪の言葉を口にし、その貴族令嬢へと視線を向けると、その貴族令嬢は貴族令嬢ではなく平民であった。
「…………アイリーン……………っ!」
そして俺は顔を真っ赤にしながら走り去って行く彼女を見ながら、この魔術学園唯一の平民であり前世でプレイしていた乙女ゲームのヒロインでもある彼女の名前を呟くのであった。
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