第33話サイン
そして俺はひとしきり、気が済むまで笑うと真剣な表情でシャルロットを見つめる。
そしてシャルロットは俺に見つめられたからか顔が真っ赤に染まって行き、もじもじとし始めるのだがそれを指摘する事はパンドラの箱を開けてしまう可能性が高い為気付かないふりをして口を開く。
代わりと言ってなんだが、侯爵家の娘であるシャルロットと言えどまだまだ子供だという事を教えてあげようではないか。
「ではシャルロットよ」
「は、はい………」
「今回我がシャルロットのお父様宛に謝罪の手紙を書かないという事は貸一つという事でよろしいか」
「は………い?…………ぁっ」
そしてシャルロットは俺の言葉を理解していくにつれ顔面が赤から青へと変化していく。
ここは侯爵家の娘である。
他人に弱みを───それが貸し一つであったとしても───見せる事の恐ろしさは理解しているようである。
それが王族であるのならば尚更であろう。
そして俺は青ざめたシャルロットの表情を見て今回の件は水に流そうと思っているのだが、その事はシャルロットが分かるはずも無く、いつ貸しを返せと言われるか分からない為これからは俺ひいてはリーシャに対して強く出る事は出来ないだろう。
「ではクロード殿下、念のため一応こちらの半紙に謝罪文をしたためて頂いてもよろしいですか?」
しかしリーシャは言った言わないの水掛け論となってしまう可能性がある為言質だけでは足りないと判断したのか謝罪文を書くように指示してくる。
そして俺はそれもそうだなと何も考えずにニーナに羽ペンとインクを用意させて謝罪文を書くとリーシャへ手渡す。
するとリーシャはその謝罪文を書いた半紙の上へさらに何か書き始めてシャルロットへとわたす。
「シャルロット様、こちらにサインをお願い致しますわ。なに、シャルロット様がわたくし達に不利益な事をしないのであればこちらは貴方のお父様へはお送りいたしません。たったそれだけを守るだけでいいのですから深く考えずにサイン致しましょう。一応、効力はわたくし達が魔術学園を卒業するまでの間とさせて頂いておりますのでかなり良心的な契約であるとわたくしは思いますけれども?」
そしてリーシャは優しくシャルロットへ声をかけながら手紙を渡しサインをするように促す。
その手紙の内容を見たシャルロットはただでさえ青かった顔を更に青くさせていた。
むしろ人がさせて良い青さじゃない気がするのだが大丈夫なのであろうか?
あのシャルロットをここまで追い詰める内容が気になった為、覗くとそこには『わたしシャルロットの独断でクロード殿下の言葉を許可無く遮っただけではなく、クロード殿下がお父様へ謝罪の手紙を送ると言われた際も、お父様に怒られるのが怖いからという理由で阻止致しました』と書かれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます