第30話濡れ鼠





リーシャが池に落ちた。


その知らせを聞いた時は心臓が止まるかと思った。


そして俺はリーシャが運ばれたという保健室へと急いで向かう。


勿論魔術で身体強化も施している為、その速さは当然車よりも速い。


それでも、遅いくらいであると思った。


当たり前である。何なら瞬間移動で直様リーシャの元へと駆けつけてやりたいと思っている位である。


それほどまでに愛しいと思える女性が池に落ちたというのにその場に居なかった事を悔やまずにはいられない。


そして俺は勢いよく保健室の扉を開けると挨拶もそこそこにリーシャの元へと向かう。


するとそこには初めて見る魔術学園指定のジャージを着て、わざわざつけて下さった薪ストーブで暖を取るリーシャとシャルロットの姿が目に入ってくる。


因みに魔術学園指定のジャージは文字通りコレが見るのが初めてである。


皆ダサくて着たくないと様々な貴族が校則を権力で押しつぶしており、今や体育の授業だからと体操着及びジャージを着る者は誰もいなかった。


とりあえずはリーシャが無事な姿を見て俺は一気に脱力する。


全く、人騒がせな。


そして件の二人はと言うとジャージ姿を俺に見られた恥ずかしさからか顔を真っ赤にしてあたふたと見事にポンコツ化しており、このポンコツ二人の代わりに保健室勤務の先生から池に落ちた経緯を聞く。


保健室の先生曰くシャルロットとリーシャは些細なことで口論となり、それがエスカレートして頭の引っ張り合いへと発展し、そのままバランスを崩して池に落ちたというではないか。


何というか、まるで幼稚園児の喧嘩ではないか?と思ってしまうのは仕方のない事であろう。


そして俺はリーシャの頭を乱暴に撫で、そして俺はシャルロットへ感謝の言葉を告げる。


シャルロットは俺に、婚約者を濡れ鼠にした事で怒られると思っていたのか叱られた犬の様な表情が一転、その尻尾はブンブンと風切音が聞こえてきそうなほど振りまくっているのが容易に想像出来る程嬉しさがシャルロットの顔に滲み出ていた。


そしてシャルロットの態度で気付く。


リーシャを学園で一人ぼっちにさせてしまっていたのは俺自身ではないか、と。


一体、俺は何をやっているんだ。


何かしら事件が起こらないとミスにすら気付けないとは、まるで話にならない。


こんな事ならば王太子としての体面を気にせずしっかりと、自分の気持ちを発表するべきであったのだ。


しかし、所詮はたらればであり、リーシャから奪った約半年と少しの時間は、もう二度と戻って来ない。



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ジャンル別恋愛部門日間ランキング二位へと浮上しておりましたっ!!


あぁ、もう、感謝しかございませんっ!!まるで夢の様でございますっ!!


ジャスト一分だ。良い夢見れたかよ?と言われているような、未だに現実なのかと確認も込めてスクショしまくってますっ!


読んでくださった皆様っ!!ありがとうございますっ!!ありがとうございますっ!!

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