第31話リーシャはリーシャ
そして俺は早急に、俺が娶るのはリーシャ一人である旨の報せを配布する手配をと考えていると、リーシャが俺の方を掴み今にも泣きだしそうな表情で見つめて来た。
「ダメです、クロード殿下」
「ふむ、一体何がダメなのかな?リーシャ」
「クロード殿下は今『妻にはリーシャ一人しか娶らない』と考え、それを実行しようとしておりませんか?」
「顔に出ていたか。しかし、それの何がいけないのかな?俺はリーシャ一人いればそれで良いと思っている。それにリーシャは俺が複数の女性を囲う事を望んでいるのか?」
その真剣なリーシャの表情に思わず折れそうになるものの、しかしそこは譲れないと言い返す。
こればっかりは前世の影響が強く出ている事は理解しており、王族という身分である俺の立場からすれば単なる我儘であるという事も理解している。
しかし、数十年生きて来て培われた倫理観という物は『はいそうですか』と簡単に覆るような簡単な物ではない。
その為、妻はリーシャ一人、その他婦人も愛妾も作るつもりなど無いのであれば早い段階からその旨を報せる必要があったのだ。
その結果、婚約者であるリーシャを傷つけてしまっているのならば本末転倒ではないか。
「わ、わたくしもクロード殿下がわたくしの他に妻や愛妾を作る事を想像したら胸のあたりがじくじくと痛み、嫌な気分になりますわ。ですが、殿下は王太子なのです。もし殿下が今考えている様な御触れを出し、万が一わたくしがおのこを授かる事ができずに事故または病などで死んでしまった場合、間違いなくこの国は二つに割れ、数えきれない程の不幸を生んでしまいます。わたくしはクロード殿下の婚約者であり、それは未来の王妃でもあります。であれば、わたくし達の欲求を満たす為だけの軽はずみな行動は控えるべきでございます」
そう、力強く訴えてくるリーシャ。
いつもみたいに、おどおどする事も無く、照れて自分の気持ちと正反対の意見を言ってしまう事も無く、そこには確かに俺の妻としての決意と覚悟をその身に宿した王妃然としたリーシャの姿があった。
そして俺は再確認する。
ゲームでも幾度となく見て来たではないか。
そしてこの世界でも傍で何度も見て来た。
ゲームと違い家族仲が回復して性格がゲームとは変わってしまった様に見えたとしても、リーシャはリーシャなのだ。
自分の気持ちよりも、正しさを貫かんとするその勇気に俺は惚れ、そして助けたいと心の底から思ったのではないか?
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