第24話母故の強さ





我が父であるロードデル国王により大鉈が振り下ろされる事により約四時間もの間断罪とそれによる地獄絵図の生観劇を終えた俺とニーナは別室である応接室へと向かう。


部屋に入り何も指示を出さずとも何処からともなくコーヒーを淹れてくれるニーナの指は珍しく震えていた様に見えた。


「ご苦労」


そして俺はそう一言ニーナを労うとコーヒーを一口飲みテーブルへと戻す。


「いえ、これも私の仕事のうちで御座いますから。まあでも、今日でクロード殿下のお付きも最後になるかもしれませんが」


そう言うとニーナは、普段感情を表に出さない彼女にしては珍しく目と鼻はあからみ、唇が震えていた。


ふむ、ニーナなりに覚悟を決めたという事であろ。


「そうか」

「クロード殿下、私の娘の事で御座いますが、その、最後に言える様な立場でも無いのですが、親の我儘として言わせて下さい。私の娘を、ミーシャをどうか宜しくお願いします」


そしてニーナは泣きそうになるのを我慢しながら震える声で何とか言い切ると深く、深く頭を下げた。


出会った当初も、その後のダブルスパイも娘の事を思えばこそ。


母故の強さを感じざるを得ない。


「そうだな。ニーナの娘、ミーシャの件であるが安心したいと申すのも理解出来る。ニーナの娘は今年で十三で間違いないな?」

「はい、間違いありません」

「ふむ、婚約者や妾に選ぶのにも申し分ない歳だな。では当初の契約通りニーナの娘であるミーシャを我の妾として迎え入れよう。ではこの書類にニーナのサインを書いて頂きたい」


そして俺は当初の契約を果たす為に妾契約と書かれた書類とペンをニーナへ渡すと、ニーナは何一つ疑う事をせずスラスラとサインを書くと俺へと渡す。


ふむ、ニーナのサイン・・・・・・・には偽造されている様な箇所は見られないな。


そして俺はニーナにサインを書かせた妾契約書を大事に受け取ると、コーヒーを一口飲み、口を開く。


「ニーナよ。とある国には『敵を騙すのならばまず味方から』という言葉があってな」

「ま、まさかっ!?クロード殿下っ!!」

「まぁ、少しは落ち着きたまえニーナ。我はな、目には目を、歯には歯を、恩には恩をと思っておる。勿論お主のした裏切り行為は決して許される事では無いが、以降の献身的な態度と此度の不穏分子の排除に大きく貢献した実績なども考慮してニーナの罪は帳消ししてもお釣りが来ると思っておる。入って来い」


そして俺の掛け声と共に応接室の扉を開けてミーシャと一人の近衛騎士が入室して来る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る