第23話心なしか疲れている様に見える
「暴れるなっ!」
「痛い痛い痛い痛い痛いっ!貴様っ!こんな事をしておいてただで済むと思うなよっ!痛いっ!やめろっ!痛いと言っとろうっ!貴様の顔は覚えたからなっ!貴様の一族全てこの王国で平和に暮らせると思うなよっ!一族全員犯罪奴隷に落としてやるからなっ!痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!」
そしてアルビンは近衛に捕まり暴れ回る為に関節を決められ、痛いと喚き暴言を吐き権力で他者を貶めようとするその姿に周囲の人間にはもはやアルビンを擁護する者はいないだろう。
むしろアルビンこそ悪であると、獅子心中の虫であると声高々に皆言うであろう。
「近衛騎士よ、煩くて敵わん。早く縄でも何でも縛って牢屋にでも放り込んで来い」
そして先程から煩く喚き続けるアルビンにロードデル国王は聞くに耐えないと近衛騎士に牢屋へ入れて来いと命令するその表情は心なしか疲れている様に見える。
「はっ!ほらっ、さっさと立てっ!」
「やめろっ!俺に触るんじゃないっ!離せっ!コラッ!縛るなっ!触るなっ!縛るなっ!」
「ほら行くぞっ!」
「引っ張るんじゃないっ!俺はこれからロードデル国王へ真実を告げてあそこにいるクロード殿下の悪行を暴く必要が───」
「口を開くなっ!黙って歩けっ!」
「強く引っ張るんじゃないと言っておろうがっ!ロープが肉に食い込んで痛───」
そしてアルビンは近衛騎士に腕をロープで縛られ、そのロープを引っ張られながら扉の向こうへと消えていくとバタンと静まり返った部屋に扉の閉まる音がやけに大きく響く。
そしてその扉を二人の近衛騎士が厳重に護り固めるその姿はまるで、今よりここから誰一人として外には出さないという風にも見える。
その近衛騎士達の姿を見てロードデル国王は一度うなずいた後、口を開く。
「さて、先程わが息子が提出した罪人アルビンについての報告書であるのだが、当然アルビンの悪事を示す為に様々な証拠と共にアルビンと繋がっている貴族達の名も記載されておった訳である」
ここでロードデル国王は周囲をギロリと睨み、怒りを抑えた声音で言う。
「逃げれると思わない事だな。何、自宅をこれから隅々まで調べさせてもらって無実と分かれば慰謝料として大金を握らせ保釈してやろう」
ロードデル国王のこの発言で静まり返っていた周囲は再び騒がしくなり、それとともに青い顔をしたり床へ崩れ落ちる者がチラホラと出始める。
そして、最終的にその数は六名も現れ、その多さに今一度周囲は騒つく。
この日、グラデアス王国はロードデル国王の指揮のもと大鉈が振り下ろされ、これにより捕まった貴族達は一人も保釈される事もなく国家反逆罪として死罪が決定したのであった。
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