第22話ご苦労であった
その表情を見る限りアルビンはニーナが実は既に裏切っているなどとは微塵にも思っていない様である。
よくここまで信頼させてきたものである。
そのことから見てもニーナはやはり優秀であると思わざるをえない。
そしてニーナはここ十数年にも渡るアルビンの、グラデアス王国ひいてはロードデル国王への不義理の数々から始まり、裏切り行為の数々の証拠を纏めた書類をロードデル国王へと渡す。
不義理で止まっていればまだ何とかなっていたかもしれないが裏切りともなれば、その数や内容からも死罪は免れないだろう。
しかし、そんな事など露知らずアルビンは今尚余裕のある態度で胸を張り俺を見下すような、そして勝ち誇った様な顔を向けて来る。
「クロード殿下よ。ニーナを使って一体何をロードデル国王へ渡したのか分からないが、これからの起こるであろう来るべき未来に対して自身の身の振り方を考える事をお勧めしよう」
「ふむ、そうであるな。これからそなたのお陰で忙しくなりそうだからな。極力書類仕事でミスをしない様に今から身を引き締めるとしよう」
「はっはっはっはっ!!これは一本取られましたな。いや、クロード殿下には笑わせてもらいました。そう、そうですな。そうなると良いですな。クロード殿下」
そしてアルビンが俺を挑発して来る為俺は素直にその挑発に乗ってやると、アルビンは可哀想な者を見る目で俺を見つめ、そしてその表情は悦に浸っていた。
立場が上の者が堕ちる。
他人の不幸は蜜の味とも言うし、これ程甘味な事も無いだろう。
そして、全ての書類に目を通したロードデル国王は明らかに不快な表情でため息を吐き、書類を証拠として厳重に保管する様に家臣に告げながら渡す。
「アルビンよ、今までご苦労であった」
「ははッ!全てはロードデル国王の為をひいてはグラデアス王国の未来を思えばこそっ!苦労などとは一つも思っておりませぬっ!」
そして書類を家臣に渡したロードデル国王はアルビンへと労いの言葉をかけ、その言葉にアルビンは胸に手を当て頭を下げながら苦労ではなかったと答える。
この部分だけを見れば家臣を労う国王と、国王に仕える忠誠心の高い家臣の姿に見えるだろう。
「そうであろうな。自分の欲望の為に動くのは未来の甘い汁の味を思えばこそ、苦労などとは思いもしまい」
「そうでございま……………は?」
ロードデル国王が一体何を言っているのか分からない、理解できない、そんな表情をアルビンはしていたので優しい俺はアルビンに教えてやる事にする。
「アルビン、ニーナはダブルスパイを今までしていたのだ。そしてその主人は我である。けしてアルビン、お主ではない」
「………は?………あ、…………裏切りやがったなこの糞アマぁぁぁぁあああああああっ!!!」
そしてアルビンは何が起こったのか全てを理解したのか鬼の形相でニーナへと走り出すのだが、アルビンは近衛騎士により取り押さえられニーナの元へたどり着く前に床へ身体を押し付けられる。
「放せっ!放しやがれっ!近衛騎士の平民如きがこの俺に触るなっ!不敬であるぞっ!
俺は未来の国王となる男であるぞっ!」
「近衛騎士よっ!この者をそのまま捕らえておけっ!国家反逆罪の大罪の犯罪者であるっ!けして逃すで無いぞっ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます