第15話連写機能
そして校門前付近まで行くと、俺の愛してやまない声が耳に届く。
その声は出会った当初と比べると最早別人では無いかと思える程に表情豊かな声音であった。
その声を聴くだけで俺の胸は幸せで溢れてしまいそうである。
むしろ大洪水である。
そして声がする方向、校門前へと視線を移すと声の主であるリーシャが眉を若干吊り上げながら此方を睨んでいる姿があった。
しかし、俺はリーシャの『わたくし怒ってますのよっ!』という表情と先程の怒っている様な呼びかけが、単なる照れ隠しであり嘘である事を見抜いている。
と、いうか
怪我の功名というか、雨降って地固まるというのか、クヴィスト夫妻はあの日の翌日には姉妹と面と向かって自分の考えや思いの丈を語り、話し合い、そして以降姉妹に対して良い意味で平等に接する様になった事がこうして目に見えて現れているのは嬉しい限りである。
そして、今のリーシャを見るに、本来は明るい性格であったのであろう。
今まで過ごした環境が関係しているのか定かではないが、少しツンデレ感が強くなってしまっている様にも思えるがそれも許容範囲内である。
むしろ、こうして何にも怯えることなく自分の思うままに感情を出せるようになったのだ。
頑張った甲斐があるというものであろう。
そして面白い事に姉であるリーシャは地が出て来たのかおてんば娘っぽくなり、妹のリリアナは自らの過ちを少しずつではあるものの理解して来ている様で今では昔のリリアナとは思えない程大人しくなった。
元々対照的な姉妹であった為に現れた効果も対照的であったのだろうか?
「お待たせしてすみません。我が愛しきリーシャ」
「あぅっ………」
そんな事を思いながら俺はリーシャへと近づくとその美しい金髪をすくい軽くキスを一つ落とすとそのまま耳元で謝罪と共に軽く愛を囁く。
前世の俺が今の俺を見たらもんどり打って口から砂糖を吐き出しているだろう。
本当『但しイケメンに限る』という意味を今まさに体現しており、少なからず俺自身も精神的なダメージは負っているのだが、目の前で瞬間湯沸器の如く顔を真っ赤にしながら固まってしまっているリーシャの姿を見ると、このくらいの辱めくらい痛くも痒くもない、むしろもっとしたいと思うのは致し方ない事であろう。
「ではクロード殿下とリーシャ様っ!お写真を撮りますので背筋を伸ばしてくださいぃーっ!」
そんな俺たちをニーナは暖かく見つめた後写真を───
カシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャっ!!
───連写機能で撮っていた。
うむ、今日も王国は平和である。
しかし、現実とは残酷なものでリーシャはこの学園で孤立してしまう事を俺はまだ知らない。
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