第12話でででででで

そして俺は壊れ物を扱うかの様にリーシャの両の手を優しく取り、幻なんかじゃないと示す為に俺の身体へ触れさせる。


最初リーシャは、触ったら消えるのではないかとでも思っているのか恐る恐ると言った感じで俺の身体をペタペタと触れてくる。


「おい、そうも力強く握られてしまっては動くに動けないのだが?」

「す、すみません………」


そしてリーシャは俺が幻では無いという事をようやっと理解すると、今度はまるで逃がさないと言った感じで俺の服の袖を力強く握りしめはじめた。


これでは流石に当初考えていた俺のやりたい事も出来ない為手を離す様に催促するのだが、リーシャは口では謝りつつもその手を決して離そうとはしなかった。


「ったく」

「す、すみませーーーあぅっ!?」


俺は仕方ないかと一つため息を吐くとリーシャの頭を優しく撫でてやる。


いいだろう。


こうなればリーシャが満足するまで待ってやるか。









と、思っていたのだがリーシャは流石に今日一日で様々の事が起きてよほど疲れていたのであろう。


気が付いたら俺の胸で静かに寝息を立てながら眠っていた。


ふむ、寝顔のリーシャが見れるとは役得だな。





「ひゃぁぁああああああああっ!!!?で、でででででっ!?」

「どうした?急に大声を出して」


あれから俺はリーシャを抱きつつ眠っていた様である。


悲しいのは抱くや眠ると言った文字のルビが卑猥なものへと変換される訳もなく、只々言葉通りリーシャを抱きしめながら眠っていただけである。


まぁ、たとえ出来たとしても今のリーシャは流石に幼過ぎる為そういう気分にはならないのだが。


それに、リーシャに触れるだけで幸せである為コレはコレでかなり満足していたりするのだが、そんな俺の幸せの沼にハマりまどろんでいる時間はリーシャの甲高い悲鳴で一気の現実へと引っ張り出された訳だが。


「で、でででででで、クロード殿下っ!?」

「ああ、君の婚約者であるクロード殿下とは私の事であるな」

「も、申し訳御座いませんっ!!!!この罰は如何様にも受けますので家族だけは、家族だけは何卒っ!!」


そしてリーシャは一気に顔を赤らめた後物凄い勢いで土下座をしながらそんな事を叫び出す。


それと同時にハラリといつの間にか俺ら二人にかけられた毛布が床へ落ち、それをニーナが拾い素早く畳むとスーと気配を消す。


全く、出来た家臣である。


しかし気配を消されると覗かれている様なので出来れば消さないで欲しいと胸の中で呟く。


しかし、あんな事をされてまだ家族の安否を第一に考えられるとは、お人好し過ぎて今から悪い大人に騙されやしないかと心配してしまうのだが、しかしコレは俺の計画を実行するチャンスであると即座に考えを切り替える。

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