第3話:特定の何かとは関係ありませんよ?

「ふぅ……」


 俺は演出案をPCで書きながら一仕事終えた気分だった。


 OSのアップデートが走った、それはいい……いいのだが……


「なんで画面はこんなに青いんだろうなあ……」


 現在ダウンロード時間コミで一時間かけた大物アップデートのインストールに失敗してロールバックしているところだ。

 ちなみに現在二回目、BIOSアップデートもしたし、怪しげなアプリも入っていない。


「不味いな……このままでは演出がままならない……神(どくしゃ)に見捨てられてしまう」


 見捨てられた世界は崩壊することこそ少ないものの時間が徐々に緩やかになっていき、最終的には時間が停止するのだ。


「こんな時は……検索検索っと」


 俺は独り言をつぶやきながらスマホで青い画面に出ている無機質な英語を入力して検索する。

 残念ながらヒットしたのはメモリの領域外アクセス等で違反があった場合にそのエラーが出るということだ。


 たいていの場合メモリの汚染は画面が変わる前にOSがプロセスを抹消する、だからこのエラーコードが出るということはOSに近い層、おそらくサードパーティーのドライバだろう、あたりの起こしたエラーだと推測できる。


 とは言ってもなあ……


「ドライバ」と書けばわずか四文字であるがPCには大量の数が入っている。

 キーボードからグラフィックボード、マウス、イーサネット、Wi-Fi、全てそれぞれのドライバがOSとよしなにやってくれるおかげで普段は意識しない領域だ。


「容疑者はPCに入っている全ソフト……かぁ……」


 一つ一つ処理していくと気が遠くなるようなデバイスとそれに対応したドライバが入っている。


 とりあえず全部PCに標準でついているデバイス以外を取り払ってアップデートをかけてみる。


 そうしてまたまた数十分をかけて目の前には青い画面が表示されている。


 これはいよいよ本格的にやばいかもしれない、PCが使えないとイベントを起こせない、ひいいては支持率の低下に繋がる。


 そうして途方に暮れていると一つのSNSへの投稿が検索に引っかかった。

 期待もせずに見てみるととあるソフトのライセンス認証モジュールが最新でないとOSが致命的なエラーを吐くとのことだった。


 ライセンス認証……俺は一つのソフトのガチガチのライセンス管理体制に気が付いた。


「このソフト、使えるようにするまでにオンラインアクティベーション必須だったな……」


 俺は縋るように認証ドライバの配布ページを開く。


 あまり期待せずにドライバのダウンロードをクリックする、クソ長い英文のライセンスが表示された。

 どうせダメで元々なのだ、サイトも正規のモノだし問題は無いだろう。

 何にせよ、PCの使用不能状態より悪くなることはあるまい。


 ライセンス文に目を滑らせてI agreeをクリックしてダウンロードする。


「何だよこのクソでかいファイル……」


 ソフト本体でもないクセに認証モジュールだけで数十MBのダウンロードが始まった。


「普通最低限OSを巻き込まない範囲でライセンス違反には対処すると思うがなあ……」


 いくらなんでも不正の疑いがあればOSごとクラッシュさせろ、というのは疑わしきは罰せよにもほどがあるってもんだろう。


 大きなファイルのダウンロードが終わる、zipファイルを展開し、入っていたインストーラを起動する。

 どのみちマルウェアだったとしても再インストールするハメになるだけだしな……

 現在が底ならそれ以上落ちる状態はないのだからインストールくらい構わないだろう。


 インストールが終わり、再起動を要求される、予想通りだ。ここまではいい。

 念のためLANへのアクセスはファイル展開時から切り離している、最悪の場合でもこのPCのOSを再インストールする以上の事態にはならないはずだ。


 そして再起動後、本命のOSの大型アップデートをインストールする。

 再起動するとクルクルとマークが回る、いつもなら九十パーセントあたりでクラッシュするな……


 なんと予想を裏切り完全にインストールに成功した……いや、安心するな、クールになれ……再起動して画面が真っ青になる可能性も十分にある。


 ところが嬉しいことに予想を裏切りログイン画面に起動シーケンスは到達した。

 俺がポカンとしながらパスワードを入力するとあっけなくログインに成功した。


 何だったんだこの今日という日は……

 俺はあまりにもあんまりな原因に怒りを通り越して呆れながらワードプロセッサを起動するのだった。


 なお、今日の演出がろくに無かったことをお詫びします。それと、別に今日の演目はリアルに存在するOSやソフトウェアに基づいたものでないことを断っておきます。

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