第2話 転生

——翌日

 チュンチュン、と雀の鳴き声が聞こえ目を覚ます。木から漏れる太陽の光が頬を暖かく撫でる。

「ん〜……」

 背伸びをしながら起き上がり、欠伸混じりに辺りを見渡す。そこにはいつもの景色があった。深い緑の壁、綺麗な彩りの香る花、右では大きな湖で子供が水浴びをしている。

(…………ん?)

 目に入ってきたのはいつもの景色ではなかった。殺風景の部屋、ではなく自然に溢れた景色だった。

(待て待て待て待て……俺は昨日自分の部屋で寝たはずだろ……え……?ここ……どこだ……?)

 突然の事態に混乱し、状況を掴めずにいると後ろに気配を感じた。振り向くとそこには、一人の男性が立っていた。スマートな体型で顔立ちは整っている。美少年のオーラを、どこか感じずにはいれなかった。

「あ……よかった……あの……道に迷っちゃって……ここどこですか?どうやったら帰れますか?」

 立ち上がり目の前に行き男性に問いかける。男性は背が高く見上げている。

「迷い人か……それは災難だな。俺の村で休んでいくがいい。ついてこい」

 その男性は偉そうな口振りでそう言うと背中を向け、案内を始めた。

(なんだ偉そうな態度だな……まあいいか、良い人そうだし……)

 なんて考えながらついていく。

 しばらく歩くと、村の入り口が目に入ってくる。入り口には立派な門があり看板がついていた。看板には、“ようこそ人外者の森へ‼︎”と書いてある。

(人外者……?どういうことだ……)

 見慣れない言葉に戸惑いつつも後を追い、足を踏み入れる。しばらく進んだ後、道案内していた男性が振り返り話し始める。

「……ようこそ……人外者の森へ……俺は環、ここの長だ……よろしくな」

 環、と名乗る男性は手を差し出し握手を求める。

「ああ、よろしくお願いします。私は…………」

 後の言葉が出てこなかった。男性は自分の名前を忘れていたのだ。

「………おじさん……と呼んでください……」

「おじさん、か……もしかしておまえ記憶喪失か?」

 何かを察した環が問う。一瞬考えるも思い出せず、環の問いかけに頷く。どうやって来たのか、自分の名前、仕事、趣味に至るまで忘れていたのだ。

「まあ、思い出すまでここでゆっくりしていきな」

「ありがとうございます……ではお言葉に甘えて」

 こうして、おじさんの村への滞在が決まった。

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