とある森の、とある村の、とある物語。
岸辺海夢
第1話 プロローグ
——人間達が暮らしているビルが立ち並ぶコンクリートのジャングルから遠く離れた場所。そこにそれはあった。人の目から隠すかのように、ひっそりと存在している。深い緑に覆われ、中は薄暗い。不穏な空気が、森全体を覆っている。中に何があるのか、それは誰にも分からなかった。どこにあるのか、どうやって入るのか、存在自体が知られていない森。だがそこに森はあった。
そんなある日、一人の男性がその森に迷い込んだ。
「はぁ〜……やっと仕事終わったよ……ほんと部長は人使いが荒いんだから………」
一人の男性が、会社の入り口でため息混じりに不満を吐き、背伸びをする。
辺りは既に暗闇になっていた。人の気配が一切しない。それもそのはずだ。現在の時刻は、午後11時59分。もうすぐ子の刻だ。
(そういえば……もう少しで十二時だな……)
スマホの時計を見て驚き、“早く帰ろう”と呟きながら帰路を急ぐ。
(十二時と言えば……人ならざるものが現れ、摩訶不思議な体験をするってテレビで言ってたな……)
ビール片手に見た、胡散臭い番組を思い出し一考する。
(そんなことが実際に起きればな……)
実際には起こらないことを知りつつも、半ば期待し辺りを見渡す。しかし無情にも何も起こらない。
「ふっ……だよな……そんなこと起こるわけないか……」
わかってはいたものの、現実を突き付けられるとため息を吐きながら落ち込み再び帰路を辿り始める。
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