第19話 ライバル
【――勝者、リート!】
またしても、リートの勝利を告げる言葉が競技場に響いた。
一回戦で聖騎士カイトを撃破したリートは、その後も次々にライバルを打ち破り、ついに決勝戦へと駒を進めた。
「あいつ、無職のくせにすげぇな!」
「てか、聖騎士より強いってなんだよ、バケモンかよ!」
初めはリートに無関心だった観客たちも、徐々にその力を認めていき、決勝戦進出を決めた頃には、多くの者がその圧倒的な強さに魅了されていた。
「あと一回だな」
イリスが控え室に戻ってきたリートに語りかける。
「ええ……」
しかし、リートには自分の勝利よりも気になっていたことがあった。
次の試合。同じく準決勝。
それを戦うのがサラだったのだ。
幼馴染の大一番が気になり、早々に試合が観れる場所に移動するリート。
「相手は、ウィリアム・アーガイルか」
「強敵、ですよね」
それまでの戦いを見ていたリートは、思わずそう漏らす。
「ああ。アーガイルは、私からすると血が繋がっていない従兄弟だが、小さい頃から天才と言われていたな」
――あまり王室に事情に詳しくないリートだったが、それでも最低限の知識は持っていた。
現国王リチャード3世には二人の子供がいる。
長女が、今リートの目の前にいる少女イリス。
しかし彼女は、王妃の子供ではない。
彼女は庶子、つまり愛人の娘なのだ。
一方、次女はアーガイル家からやってきた王妃の子供である。
名前はカミラ・ローレンス。
そのカミラの従兄弟。それが、これからサラが戦うことになるウィリアム・アーガイルだ。
【東側! ウィリアム・アーガイル! クラスは賢者!!】
と、闘技場にその名前がコールされる。
賢者。
それは聖騎士と並ぶレアクラスだ。
聖騎士が剣士系のレアクラスであるのに対し、賢者は魔法使い系のレアクラス。
つまりスキル的には弱いはずがない。
【西側! サラ・スコット! クラスは聖騎士!!】
続いて闘技場に入ってくるサラ。
彼女も聖騎士の圧倒的なスキルと、今までの稽古の成果を存分に発揮してここまで駒を進めていたが、果たしてその力が、アーガイルに通用するか。
「賢者vs聖騎士か。近年稀に見る好カードだな」
イリスが頷きながら言った。
【それでは――試合、開始!】
戦いの火蓋が切られた。
「“神聖剣”!!」
開幕速攻をかけたのはサラだった。
いきなり聖騎士のスキル、神聖剣を発動し、地面を蹴った。
手加減や様子見はなし。
全てを込めて、一撃で仕留めにいった。
最速最強、彼女の全てがこもった一撃だった。
あっという間にウィリアムとの距離を詰めにいく。
魔法使いvs剣士の戦いの場合、間合いに入れば剣士が勝つ。
――だが、もちろんそう簡単にはいかなかった。
「“ドラゴン・ブレス”!!」
ウィリアムが上級魔法を放つ。
魔法使いクラスでも会得可能なスキルだが、しかし賢者のステータスを持ってすれば威力は倍増する。
――聖なる刄と、灼熱の魔法が交錯する。
力と力が反発し、次の瞬間爆発を引きおこす。
粉塵が舞い上がり、観客の視界を遮った。
爆発の余響が徐々に引き、やがて視界が開ける。
――闘技場の中央に立っていたのは――ウィリアム・アーガイルだった。
【勝者、ウィリアム・アーガイル!!】
サラは、加護の結界もろとも後方に吹き飛ばされていた。
「サラッ!!」
リートは思わず叫ぶが、よく見ると幸い大きな怪我はなさそうだった。
少しすると、自分の力で立ち上がる。
――ウィリアムは手加減したな。
リートの目にはそう映った。
「神聖剣を返り討ちにするとは。やはり相当やるな」
イリスが感心する。
リートは下唇を噛んだ。
これでサラが第七位階に登るチャンスは消えた。これまでずっと一緒に稽古をしてきた幼馴染が敗北したのは、あまりにも悔しい。
「仇を取れよ、リート」
イリスがリートの背中を叩いてそう言った。
「ええ、わかりました――」
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