反抗 と 正義
「っていう訳だから高く買い取って下さい」
「知らんそんな事」
相変わらずの仏頂面で買取作業をしながら答える店主。
先日のゴブリンダンジョンやそれまでに手に入れた素材を持ってハーデスへと買取にお願いをしていた。
簡略的ではあるが事情を説明した。
俗に言う愚痴ってやつだ。
「それと買取は関係ないだろう」
大変その通りです。
高額で買い取りしてくれるくらいしか、喜べることがない自分に虚しさを感じる。
「ほら、今日の金だ」
「どうも・・・んんんんっ」
銅貨8枚。
たったこれだけ・・・。あれから色々店を回って大体の値段を把握してきた。
8枚の銅貨じゃあ、当然これと言っていい物は買えそうにない。
「それとそいつだが、うちじゃあ扱えん」
モンスターの素材とは別にされて立て掛けるているあのゴブリンジャックの大剣を指差し買取拒否をされた。
扱えん、なんて言われてもなぁ。
別に俺もこれを使いたいとは思えないし・・・。金にならないならどうしたもんか。
「もちろん、金を払わないでこっちで引き取ることはできるが?」
「んんんんんっ」
店主には見えないだろうが、めちゃくちゃ俺渋い顔してる。
別にこれがあるから困るわけじゃないけど、金にならないって言われると渋い顔もする。
まあいいや、とりあえずこいつは手元に残しておくことにしよう。
渋々大剣に触れてストレージへと戻す。
成果は銅貨8枚か・・・前回の30枚と比べると確かに量は少なかったけど、素材の質は良さそうではあるけど・・・・。
「あの・・・」
「あん? まだなんか用か?」
「いえ・・・なんでもないです」
下手な事を言って今後の買い取りに響くと面倒だから余計な事は言わないでおこう。
それにしても当初の予定の情報が一切手に入らない。それどころか問題ばかりが増えてるような気がするが、あまり考えたくない。
「ちっ・・・物騒だな」
ん? 店主さんが舌打ちをして店の奥へと消えていった。
何か見ていたのか。カウンターの上に置いてあった回覧板と書かれた物を覗き見る。
何やら注意勧告みたい事が書いてあるな。
(何々・・・王国、反逆者多数がこのグインズに潜伏している可能性大、その為ふむふむ)
戸締りやら何やら気を付けろって奴か、それで物騒だとか言ったのか。
大変だねぇー。
反逆者って様は人間が人間に反逆って奴だろう? 滑稽だよなー。
今は神災で色々各地で大変だってのに、呑気に人間同士にいざこざしてるって中々どうして。
「ん?」
注意勧告のお知らせの下にもう一枚別の小さい紙が一枚顔を出した。
なんだこれ。
読めん。
ないやら魔力で書かれているのだけはわかるけど・・・いやこの用紙自体が魔力で出来てるっぽいな。
「どれどれ・・・」
少し自分の魔力を注入する。
すると読めなかった文字が形を変えるように動き俺でも読めるような字へと変化していく。
【集え同志、時刻は12時。場所は北門近くの水源】
なんだこれ。
同志ってなんの事だ? 新手の詐欺か何かかこれ。
昔のご主人もなんかこんなのを使って人を集めて金を巻き上げてったのを思い出す。
あれはなんだっけ、人が人に物を買わせて、その物を買わせて・・・マウスなんとかとか言ってたか。
それと似た何かがあるってことか。
金儲けの匂いがする!
でもまあ、胡散臭い物なのは事実。とはいえ少し気になるのもまた事実。
「おい、まだいるのかお前」
「あああ!! すみませんすみません!! またお願いしまーす!」
ついつい考えに耽ってしまった。逃げるようにハーデスを後にする。
そして改めて考えに耽った。
(んーー、やること無いしな)
正確に言えばやることがわからない。
だったらこの少し気になる感情を解消するのもありなのではないだろうか。
うむ。上手くいけば金が入るかもしれないし、更に上手くいけば情報も手に入るんじゃないのか?
金の流れが上手くいって、そのまま金を情報に・・・。
それだ!!!
情報は金になるし、金はきっと情報へと変えることができるはずだ!! 俺超冴えてる!!!
「よし、なら早速行動あるのみ」
時間まで少しあるからアイテムを買いに行こうかな。
確か一個銅貨5枚の小さいポーションが売ってる場所あったからそこにいこう。
それなら今日の成果で・・・今日の成果で・・・消えるな今日の成果。
最終成果・・・銅貨3枚と小ポーション1個・・・。
・ ・ ・
「よくぞ集まった!! 同志諸君よ!! 王国に異を唱える者がこれほど多くいることを嬉しく思う!!!」
(なんか違ぁぁぁああぁう!!!)
ヤバい奴はヤバい奴だけど、詐欺師とかのレベル以上のヤバい奴等だこれー!!!
あの注意勧告に書かれた奴等なのこいつ等? なんであのチラシの裏に集合場所なんて書いてるのこの人達!?
木を隠すなら森の中とか思ってそう!
「本日集まってもらったのは他でもない! みなも知っている通り今この世界には脅威が迫っている、そう!! 神災だ!!」
おぉっ?
最初はショックを受けたけど、案外的は外れてないかも。少し黙って男の話を聞いてよう。
「今もなお神災で苦しんでいる者が多くいる事はみな知っていることだろう、それは非常に悲しみ苦しみ、明日は我が身と恐怖する物だ」
いやーごめん、俺は全く真逆でここにいるのが申し訳なく思うようん。
「そんな神災を・・・この国は! 王族と上級貴族によって私利私欲に利用しようとしていることがわかったのだ!!」
やべ、ここにきて王族に取りいった方がいいかもなんて有力な情報を得たわ。で、王族ってどうやれば会えるの?誰か教えて。
「我々民を守る責務を放棄し、我々から財を毟り取ろうと言う画策しているのだ!!」
ふーん。
周囲は男の言葉に驚愕の事実、なんて驚いていた。
そこまで驚くことか? あの盗賊のボスでさえ重い腰を上げてとか皮肉を言っていたくらいにはわかってると思うのに。
少なくてもここにいる驚いてる人間達は盗賊のボス以下だってのがわかって複雑な気持ちを味わってるよ。
「その証拠に、この街グインズで非合法な実験が行われている。 許してはならない事だ! 我々は遂にその施設を突き止めた、だからこそ今君達の力を必要としていたのだ!!」
へー。そうなんだ。
思った以上にそんな感じなんだ。シンプルに普通の施設の中で研究しているもんだと思ったけど、意外に隠匿してるものなんだ。
非合法って言われてるくらいだからそら施設とか場所も選ぶか普通。
「ん?」
あれ、男の演説に気を取られて気が付かなかったけど・・・。
改めて周囲を見渡す。
違和感・・・というか、あれ明らかに・・・。
(イノシシ!!??)
いつぞやのイノシシだ。あのイノシシが俺と似たようなフード付きマント付けて参加してる。暇さそうになんか良くわからない草いじってる。
それだけじゃない、改めて見渡してもあの隊長さんすらいるような気がする。
更に俺達集団を取り囲むように目線を感じる。間違い無く包囲されてる。
あ、これヤバい。
あーあ、これは逃げた方が間違いなくいい奴だ。すぐさま退散しよう。
その施設とやらかなり気になるけど、騒動が起きる前に退散するのが吉。あまり回りに目立たないように背を向けゆっくりと歩き出す。
「施設の奴隷達は今も研究材料として、今彼の手で・・・」
ん? 奴隷を・・・何?
演説男の言葉に一瞬耳を傾け振り向き立ち止まってしまった。
「そこまでだ!! 反逆者!!」
あぁーちょっとだけ待ってよ頼むよ。
俺の願いなんて聞き入れる訳もなく、無事に騎士団のお方たちが自らのマントを剥ぎ正体を現しその場は一気に急変した。
当然聖天騎士団とかいうイノシシの所属してる騎士団達の顔も続々と姿を現してく。
「王国の犬共め!!」
「王国反逆未遂により身柄を拘束する! 全員掛かれ!!」
ついに号令が言い渡された。一斉に騎士団は反逆者達に襲いかかる。
もうめちゃくちゃな光景になっていた、逃げ纏う反逆に手を貸そうとした者達。応戦する反逆者達。そして自らの剣技をただ披露しているかのように蹂躙していく騎士団。
とにかく逃げる人々に扮して俺も足を動かす。
「愚王横暴の権化共が!!」
「反逆者共は死刑だ! 例外はない!!」
剣と剣がぶつかる金属音、そして悲鳴が入り混じる。
見なくても粗方わかる、悲鳴はほぼ反逆を企ててた者達の断末魔。
国に、王に、自分達に。
抗う人間だから殺されて当然の如く、騎士達は無慈悲に剣を振るっているのだろう。あのイノシシも同じ様に。
「おっと! 何処へ行く貴様達、まさか自分達は反逆者じゃないとでも思ってるのか?」
通行止めをするように逃げる人間達前に騎士達が陰から姿を現す。
当然っちゃ当然か。
この場所に来た者は全て反逆者、王国に反旗を翻す可能性のある反乱分子。
ならばここで一掃するってのがよくわかるし合理的だ。
って考えてても、どうした物か。変に目を付けられたくないのが一番の本音。
あのイノシシみたいなのが五万と居る可能性も考慮すると最悪だ。
そんな奴らに目を付けられた日には街は愚か外に外出すらままならなくなる。
「こっちです!」
「っ!?」
これからどうやって逃げようか考えた瞬間俺と同じ型のマントを着た誰かに裾を引っ張られて森の茂みの中へと引き込まれた。
そしてまるで前もって準備していたのかのような大きな木の根の中に隠れる。
「少し窮屈ではありますが、我慢して下さいね」
俺に声をかけながら入り込んだ場所に蓋をするように出入り口の形に似た木を立て掛けた。
この声まさか・・・。
だが、今は黙って指示に従った方が良さそうだ。いくら大きな木の値とはいえ二人入ってやっとだ、ここは大人しくしているのが一番だ。
「お前が助けに来るなんてな」
「当然です。 レーグ様の為ならなんでもする所存ですから」
フードを取り態々ご自慢の童顔を見せてきた。
俺が普通の一般男性なら確かにこの状況で発情してもおかしくないだろうが、こいつの人間性を鑑みると大きくなる物も萎むという物。生き延びたのに自分から死にに行くような物だ。
「そのマントはローズか?」
「はい、それよりよかったら状況のお話お聞きしてもよろしいですか?」
これ見逃しにずけずけと来るな。
まあ助けてもらった恩もあるし、コイツもある程度は戦える事も知ってるし一応話してみるか。当然詐欺どうこうの話はもちろんしないが。
「そうですか・・・あの方々が反逆者さん達ということだったのですね」
どうやらコイツも一部始終を見ていた訳ではないらしい。
ん? ならどうやってここまで来たんだこいつ?
まさか・・・コイツも匂いとか言うんじゃないだろうな。
「どうして私がここにいるのかって聞きたいみたいですね。強いて言うなら・・・愛ですかね?」
笑顔でとてつもなく怖いことをさらっと言う。
そんなで追跡されたら追跡される身は打つ手ないだろう。
あのイノシシと言いコイツと言い、なんでこう人の気配に敏感なんだ。自分もある程度出来ている物だと思っていたが悲しいぞ。
とりあえずはその愛とか言うわけのわからん要素に身を任せてこのまま潜伏するとしよう。
外もまだ慌ただしいし、このまま沈静を待つ。隣のビッチが意味も無く身体をもじもじし、少し身体が触れたら気持ち悪い声を上げているのは完全に無視しながら俺はじっと待った・・・。
・ ・ ・
「もう・・・大丈夫そうだな」
意外にも何事もなく反乱分子殲滅作戦?は終わったようだった。どうも何かと厄介事が多くある最近だと気が気じゃない自分がいるのが辛い。
立て掛けた蓋をゆっくりと動かし周囲を見渡す。
「ひとまずは大丈夫そうですね」
「油断は出来ないがな」
人安心というところか。
情報は特別手に入らなかったけど、くわばらくわばら。
何処まで行っても我が身大事、命あっての物種ってわけだ。
「ん?」
「レーグ様、これは・・・」
俺達は木の根から出ようとした時二人で妙な違和感に襲われた。
視線。
さっきまでは感じなかった物だ、人の気配はないはずなのに誰かから見られている。
周囲にいるのはモンスターくらいだが・・・。
「・・・・・・」
可能性は・・・これか。
一匹のモンスター。小型のネズミが俺達のことをじっと見つめていた。
これが正体。そう確信した。
「誰か見てるんだろ、俺・・・俺達に何か用か」
ネズミに話しかけると同時にネズミは俺達に背を向け歩きだした。
ある程度まで進むとまたこちらを振り返りその場で同じようにまたこちらをじっと見つめる。
どうやらついて来い。そう言ってるのだろうが、明らかに怪し過ぎる。
つい俺達はお互いの顔を見合った。そしてビッチはビッチらしく赤面した。
厄介事は無事、難を逃れた。
けれど我が身大事とは思ったがやはり情報という点では一切手に入れてない。
あの反逆者の演説をしていた男の言葉も気になる。
奴隷を研究材料として今も何かに利用されている・・・か。
もしかして逆神のスキルの研究でも始まってるのか。奴隷と神災の関係性をローズ以外誰も知らないとは考えにくいし。
「おい」
「行けません行けません! これ以上は私には目に毒いえ目に余ってしまいます!!」
自分の顔を両手で抑え悶えながらまた訳のわからんことを言ってる。
今かなり真面目な改めて確認しておきたいのに。
「お前は奴隷専用スキルの事を知ってるか?」
「え・・・専用ってつまり。奴隷しか使えないスキルですか?」
「あぁ、お前が・・・その」
これは言い渋る。
もし知らなかったとしたら下手に勘ぐられるのも面倒だしな。
しかも今の問答で大体察した気もする。
「そうですね・・・専用かはわかりませんが、奴隷になる前から使える物はいくつか」
そっか。そりゃそうか。俺がただ魔法すら使えずに奴隷になっただけなんだ。奴隷イコール何も出来ないってわけじゃないのか。
そうなるとこいつの力も魔法だけじゃないってことか。
つくづく自分の無能に嫌気がさすな。
「あの・・・そんなに見られると恥ずかしいと言いますか」
はぁ・・・ナーバスになるのは後だ。とにかく、今は。
ビッチな追跡者の後は自分がネズミの追跡者となり何が起こるのかわからないモノに身を投じた・・・。
・ ・ ・
ネズミを追って俺達は結局グインズに戻ってきていた。
北側の門から抜け、少しした場所に目的地であろう場所まで来た。
古びた屋敷だった。
付いてきたネズミが屋敷領土の入口の鉄格子を潜り中へと消えていった。
つまり入れってことか。
一体どんな奴がここまで俺達をおびき出したのか、今はそれだけが気なってしょうがない。
錆びついた鉄格子を抜け、屋敷の扉の押した。
「よくぞ来てくれた、同志よ」
扉を抜けたすぐに見える大きな中央階段から女が一人両手を広げ俺達を歓迎した。
ついさっき似たような言葉を聞いた気がしてならない。
つまりは・・・そうゆうことか。
「反逆者募集中って訳か?」
「いいや・・・我々は『正義者』だ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます