聖天騎士 と 思考錯誤
ガオォオォオオオオッ!!!
ライオン型のモンスターが一匹牙を剥き突進してくる。
牙には魔力が付与されているのか白く輝いていた。
「ソード」
右手を魔力剣へと形成させる。
高速で近付いてくるモンスターに対して構える。タイミングを見計らう。
俺よりも巨大な体をした奴だ、一撃でも攻撃を食らえばひとたまりもないのはわかるのは当然。
「っ!!」
体を捻ると同時にソードを振るう。
突進を避け斬り付けた。モンスターの胴体をえぐり取る。
意外にしぶとい。モンスターはダメージの悲鳴を上げるもすぐに体勢を立て直し再度こちらへ同じ様に突進を仕掛けてくる。
「シールド」
左手を魔力盾へと形成させる。
そして突進攻撃を受け止める。
ガァアアアンッ!!!
大きな衝突音が鳴り響く。
モンスターは必死に俺を押し倒そうとしているが、踏ん張る必要も無く軽々と攻撃を止めることが出来た。
このライオン型モンスターの力がどれだけの力を持っているのかわからないが、この程度なら難なく倒すことが出来るようだ。
俺は今も頑張って魔力盾を突破しようとするモンスター払い飛ばした。
疲弊したのか、飛ばされたモンスターはそのまま受身を取ることなく地面へと叩きつけられる。
「アロー」
左手の魔力盾を今度は弓へと変形成させる。
右手の剣を弓へとセットする。
すると右手の剣が螺旋状の矢へと変形成された。
「シュート」
魔力で作られた螺旋矢を放つ。
渦を巻くように回転しモンスターへと一直線に飛んでいった。
グルルルルゥ・・!
モンスターは叩き付けられた身体をすぐに起き上がらせて俺の放った矢を避けた。
再びこちらへと飛び掛かろうと重心を低くした瞬間。
グチャグチャと肉がえぐれ音が鳴った。
俺の放った矢が軌道を変えモンスターへと直撃した。
体内へ突き刺さり回転して内部を破壊し続けている。
苦しむモンスターの声が続く。徐々にその声は小さくなり、やがてはバタリと体を倒し、静寂が訪れた。
「・・・こんな物か」
自分の力をまずは理解する必要がある。
とにかく俺には情報の欠落があまりにも多すぎる。
せっかく手に入れた力も理解をしなくては意味がない。
早速俺は理解した力を使う事にする。
奴隷紋を触れてメニューを開いた。ローズから教えてもらった文字が大量に出るやつだ。
あの後これをしっかりと見たら大きく左上にメニューと書かれていたので恐らくこれの名前なのだろうと勝手に解釈した。
そして俺は今倒したライオン型のモンスターに触れる。
「ストレージ」
触れたモンスターの残骸が白く光り魔力の粒子へとなり奴隷紋へと吸収されていく。
- 獅子の死体 ×1 収納 -
メニューに情報が流れた。
これが奴隷紋の力の一つだった。ローズに説明された時は奴隷紋にあるアイテムの取り出しだった。
取り出すことが出来るならと、俺はエレウンドを出た後に試した。
最初はそこら辺に落ちている何の変哲もないただの石ころを触れた。
すると思う通りに魔力の粒子へと変わり奴隷紋へと収納された。
それからも今のようにモンスターを狩り、同じように奴隷紋へと収納でき、当然取り出すことも出来た。
メニューのストレージの空きを見るにまだまだ余裕はありそうだった、目新しいそうな物があればとりあえず奴隷紋に吸収させて収納していった。
「さて・・・このまま東でいいのかな」
俺は奴隷紋から地図を取り出す。これは『アルトリス大陸』の地図だ。
どうやら俺が今立っている大陸はアルトリスというらしい、この地図を見て初めて知った。
ローズも粋な計らいをした物だった。
今俺が来ているマントの内ポケットにこの地図が忍ばせてあった。
いつマントとこれを用意していたのか全くもって謎だが、今はそれを利用するに越したことはない。それにこれがなかったら路頭に迷っていた物だったし。
そして俺はあの町、エレウンドから東に位置する『イーガル』という村へと一先ず向かうことにした。
今の俺には情報を収集する必要があるという点を考えると小さな村がいいのかとも思った。
最初から大きな町や都市に向かって騒ぎになれば奴隷生活に戻るはめになりかねない。
慎重に慎重を重ねて損はないだろう。
そう・・・だからあえて無視をしていたが。
「そろそろ出てきたら・・・どうだっ」
右手に魔力の光弾を形成し投げる。
ライオン型のモンスターと戦っていた時から感じていた。誰かに見られていると。
光弾は隠れている者の近くで爆発した。もちろん外した牽制だ。
直接狙うと逆神の代償でこっちが痛手を負うから。
「うわぁーっ!!!?」
悲鳴?
何やら幼い高い悲鳴が聞こえた気がするが。
ソードを右手に形成しゆっくりと近付く。
するとそこには、身なりが整った小さな少年が目を回していた。
・ ・ ・
ひょんなことから少年を拾った。
「僕はクロディスと言います!父は・・・」
「知らん、聞きたくない・・・さっさとどっか行け」
俺とモンスターの戦いを見ていたのはクロディスという少年だった。
良心が生まれたのだろうか、それともあの子と重なったのか、目が覚めるまで見届けたが起きて早々なれなれしく迫ってきた。
もう一気に厄介事だと判断した。
「あの! 僕を助けて頂けませんか!」
「嫌だ」
また目覚めた時に言われたセリフを吐く少年。
どうゆう考えでそんな言葉が出るのか疑問が疑問を呼ぶから変に考えないようにした。
ここでわかりましたなんて言って付き纏われるのが一番の問題だ。
これ以上、彼と一緒に居ては・・・。
「やっと見つけたぜ!! このガキがー!!」
想像通りだ。
この少年は、誰かに追われている最中、もしくは逃げてきたのだろう。
俺と少年の前には3人組の男が武器を持ち立ちはだかる。服装は少年とは真逆の身形がバラバラで薄汚い格好。
盗賊か何かと言ったところだろう。
それを見た少年はすぐに俺の背後に回った。
が。
「ほら、連れてけ」
「えっ!? え!ちょっと!!?」
俺は背後に回った少年を片手で持ち上げ盗賊っぽい奴らへと差し出す。
その光景に一瞬盗賊達もキョトンとした顔を見せる。
俺の対応にどうすればいいのかのように仲間同士顔を見合わせていた。
どれだけ優柔不断なんだ。俺は少年を盗賊達の下に投げて寄越した。
少年は地面にお尻をぶつけ痛いと言ったが俺の知った事じゃない。
用は済んだなと、俺はその場を立ち去ろうと、再び足を進めようとするが。
「待てやぁ!! 金目の物置いて行かんかぁーい!!」
やはりそうなるのか。
金目の物なんて奴隷であって旅を初めて数時間しか経っていない俺に要求されても本当に何も無いのだが。
仕方なく俺は奴隷紋からアイテムを一つ取り出した。
ドォオンッ!!!
大きな塊が一つ姿を現した。
その現象に驚いているのか、盗賊っぽい奴らは口を広げ驚いていた。
「森の・・・ぬ、主・・・!!?」
「て、てめぇがこれをやったのか・・・!?」
森の主?
このライオン型のモンスターを?
俺が取り出したのはついさっき倒したモンスターの死骸だ。金目の物は無いし俺が今出せる物と言ったらこれくらいだ。
いつだかのご主人がモンスター素材の商人をやっていた。
つまりモンスターの素材は金になる。
だから俺の金目になる物というのはモンスターの素材ということくらいになるのでそれを提供する。
改めてそれじゃあ、と俺は歩みを続けようとした時だった。
「あれ!!? ガキは何処行った!?」
「はぁ!? お前がちゃんと見てたんじゃねぇーのか!?」
「あぁあーん!?お前が見てるんじゃなかったのかよ!!?」
「ふざけんな!! 今日の人参食ってやっただろうが!!」
チラっと背後を見た。
何やら隙を見計らって逃げ出したようだ。
あの2人組みのやり取りを見ていると子供が逃げだすなんて容易いのだろうと苦笑いを浮かべた。
一先ず俺は厄介事を避ける事が出来たようで何よりだった。
空を見上げると夕暮れになりかかっていた。まだ目的地のイーガルまでは遠い。野宿をする必要がある。
エレウンドを出て半日が過ぎるという事だ。
朝一にローズと会いすぐに町を出て今に至る。
不思議な気持ちだった。
まるで求めていたような感覚。
旅。
冒険。
自分が奴隷として売られる前に抱いた感情だったのかわからない。
だが少なくても悪い気はしないし、鉄の檻に閉じ込められている日々を考えると真逆なのだと思った。
自由の無い日々と自由の有る日々。
一先ず俺は今の自由に笑みを浮かべる事にしたのだった・・・。
・ ・ ・
日が落ち暗い闇が訪れる。
俺は森の中で少し開けた所で焚き火をしていた。
ただ焚き火を眺め続けていた。
疲れているわけではない、自分には疲労感がわからない事もある。
心と体が離れているからか。自分の身体の事が良くわかっていない。
疲れているのか、何処か痛いのか、腹が減っているのか。
焚き火を眺め続ける。
俺もあの子と同じように火を灯すことが出来た。
あの仕事の時いつも彼女に任せていたことが今は俺にも出来る。
もし・・・。
もしもなんて考えてしまっていた。
あの時に、あの時に、あの時に・・・。
目を閉じそう考えるのはやめた。
もう戻る事も取り返す事も出来ないんだ。
だから今出来ることは、あの子の・・・彼女の最後の言葉を胸に秘めることしか出来ないと、何度も何度も、体と心に言い聞かせるしかなかった。
「あのー・・・」
「っ!!?」
目を見開き、すぐにソードを形成し戦闘態勢を取った。
迂闊。
思いに耽過ぎて全く気が付かなかった。
「まままままま、待って下さいお願いします!!!」
両手を振るいながら静止を呼びかける。
たしかこいつはクロディスとか言う子供か。
あれから本当に逃げだしてきたのか。俺が奴らにその身を差し出したというのに何でまた俺の前に姿を現したんだ。
「あのその・・・ごめんなさい! ちゃんと説明もしないで!」
説明も何も、俺は君を助ける義理も何もないのだが。
一体何を考えているのか困るばかりだ。
一先ず俺はソードをしまう事にした。
夜はモンスターが活発に活動する可能性が非常に高い、ここで変に騒ぎを起こして変に身体を疲弊していざという時に倒れることなんてあったら困る。
「・・・・・・」
何も言わず俺は少年の言葉を続けさせた。
少年の話す内容は単純な物だった。
少年は俺が目的地とするイーガルの出身らしく、あの盗賊達に誘拐されたようだ。
何とか隙を見てアジトに連れていかれる前に逃げたようだ。
そして逃げている最中に俺を見つけ助けを求めてきた。そう話した。
「あの・・・冒険者・・・さんですよね?」
冒険者?
あぁ、この少年からしたらそう見えるのか。基本的にモンスター討伐の仕事を請け負う専門家。
それが冒険者と、俺は認識している。
依頼を受ければ金次第であっちのダンジョンこっちのダンジョンと幅を広がせる集団。
モンスターを討伐したり鉱山の鉱石を取ってきたり、安い依頼ではそこら辺の薬草を取ってきたり。
ある意味で金の奴隷、俺と何ら変わらないだろうなんて思った日もあったり無かったり。
「・・・違うんですか?」
「・・・・・・」
俺は特に返答しなかった。
返答して変になれなれしくされても困るし、ここで自分がそうだと嘘で答えてもボロが出てややこしくなっても困る。
とりあえず俺はだんまりを決め込んだ。
グゥウー・・・!
なんだ今の音。
少年から聞こえたように見えた。
少年はお腹を抑えていた。
グゥウー・・・!
俺から目線を外す少年。
そうか、あれが空腹を知らせる腹の音というやつか。
俺もあの子も見せなかった芸当を見せられた。
グゥウー・・・!
グゥウー・・・!
グゥウー・・・!
わかった事がある。
この芸当は自分でコントロールする事ができない。
そして何より耳障りだ。
- 赤兎の肉 ×8 -
- 取り出しますか? はい・いいえ -
俺はここへ来るまでの間に手に入れた肉を一つ奴隷紋から一つ取り出した。
モンスターの肉、焼けば普通に食える物だ。
それを俺は少年に投げる。
「自分でどうにかしろ」
それだけを言い俺は、少年を背に体を横にし目を閉じた。
背後では感謝の言葉を述べながらもどうすればいいのか思考錯誤している声が聞こえるがこれ以上何も言うつもりは毛頭無い。
むしろ奴隷として過ごしていた俺も知る訳がない。
少ない蘇った過去の記憶を辿っても料理をした記憶なんて全く無いんだから。
こうして俺の旅最初の夜は幕を閉じた。
巨大な月の光と焚火の明かりに照らされながら俺は日を跨いだのだった。
・ ・ ・
そこはレーグが目的としたイーガル。
農業を中心に盛んな村。
エレウンドよりも圧倒的に小さいその村に、とある集団が訪問していた。
「ユリス!!」
「はい、なんですかフォルト隊長」
金髪の女騎士が呼び掛けに足を止めて同じ騎士で髪の短い短髪の女性に応えた。
サラリと肩に掛かる程の金髪を揺らし振り向いた。無表情で何故自分が呼び止められたのかわからないという顔をしていた。
「いい!!? 村長と会ってもくれぐれも変な気を起こさないようにね!」
「変な気って・・・何ですか?」
ユリスは首を傾げて自分よりも背が少し高いフォルトを見上げる。
その仕草に渋い顔をするフォルト。自分のかけた言葉が間違ったのかと後悔しながらも続けた。
「はぁ・・・あんたは、黙って私の後ろに付いてきてくれればいいや」
「・・・? わかりました」
言葉の意味を理解せずにユリスはフォルトの言葉通りに後ろに付いた。
それを見たフォルトは複雑な表情をしていた。
歩幅もきっちりと同じで、お互いの距離を一寸の狂い無く常に保っている。
フォルトが少し意地悪く歩幅を変えてもしっかりとユリスは同じように変えていた。
何処まで一緒に出来るのかと躍起になろうとしていた時には、目的地である村長が見えた。
だが、家の前には大勢の人間が。
「何かあったのか?」
フォルトは呟く、ユリスはフォルトの指示通り何も喋らずに黙ってうなずいた。
二人は村長の家の前まで近付く。
祭り事、何か喜ばしいことではないとすぐ感付いた。
何かよからぬ事が起きたのは誰の目からも明らかだった。
「おぉ! 聖天騎士団の方ですね?」
ユリスとフォルトに気が付いたのか、人を掻き分けて村長が姿を現した。
「お久しぶりです、村長。 何か、あったのですか?」
「・・・それが」
渋々とフォルトから目を逸らす村長。特別やましいことはない様子だった
のでフォルトは村長の言葉を待つことにした。
すると村長はゆっくりと口を開いた。
「息子が・・・誘拐されてしまいまして・・・」
村長の言葉にフォルトとユリスは、すぐに表情を変えたのだった・・・。
・ ・ ・
日が昇り、夜を無事に過ごした俺は再び歩き始めた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
後ろから少年が勝手に付いてくる。
当然俺は何も言っていないし、俺よりも先に起きていた少年は何も言わなかった。
これが少年の考えた方法ということなのだろうか。
何も言わずに勝手に付いてくる。もちろん俺がイーガルへ行くことなんて言ってもいない。
俺が向かう方角で察したのか、このまま俺について行けばイーガルへいけると踏んだのか。
時間を無駄にしないようにと、ただ俺は足を進めた。
さっさとイーガルについて情報収集に挑んだ方がいい、それが先決だと考えた。
ただただ何事もなく終えればいい、そう思っていたが・・・。
「・・・っ」
前方から何かがこちらに近づいてくる。
速度は速い。
人の速度じゃない、モンスターか。
俺はすぐに意識を集中した。
一匹の馬が目に入ったその時だった。
「見つけた」
一人の人間が俺目掛けて飛んできた。
剣を構え飛ぶようにして剣を振り被っていた。
ガキンッ!
咄嗟に俺はソード形成し振り被った剣を受け止めた。
突然の事で頭が回らない。
剣を振りかざしてきたのは、鎧を着込んだ金髪で青い目をした女。
一目見てこいつは騎士か何かだと判断した。
一度剣をソードで弾き距離を取る。
「逃がさない」
こちらに間を与えないかのように物凄い速度で突撃してくる。
ギリギリ目で追う音が出来るが、体が追い付くか。
「シールド!」
左手でシールドを形成し突撃攻撃を凌ごうとするが、軽快なステップで俺のシールドの脇から剣を斬り上げられた。
俺は、攻撃を食らった。
「ぐぅ・・・」
食らった・・・はずだが。
痛みはほぼ無い、痛覚が壊れているからかわからないがダメージは無い。
斬られた場所を見る。少し汚れた程度の物だった。
これはもしや、逆神のスキルの恩恵か?
だとしたらありがたいが、今はそれを確認している余裕はない。
「・・・?」
女騎士に目をやると首を傾げ俺を見て自分の持っている剣を見た。
確かに斬った、そんな様子だった。
実際俺も斬られたと思ったんだ似たような感想を抱いたのだろう。
だが咄嗟の事だったが、わかった事が一つある。
ソードと剣がぶつかった。つまりはこちらの防衛程度ならスキルの代償は発動しない。
自分の身を守ることはできる。
とは言う物の、こっちは奴隷、あっちは人間。
モンスターやディザスター相手じゃあないのなら・・・俺に勝ち目が無い。
「もっと・・・か」
何かを呟いた途端に構え再び高速で接近してくる。
さっき同じだ。目でギリギリ追えても。
「くっ・・!」
体の反応しきれない。
何発かの討ち込みをシールドで防いでも攻撃を受ける。
ダメージが無くても攻撃を食らった衝撃のような物は襲ってくる。
「そこ」
俺のシールドを弾き飛ばした瞬間、女騎士の剣が光り輝く。
そして俺の胸部に貫くように突き刺し吹き飛ばした。
吹き飛ばされ俺は森の中の木々に何度も激突していく。
激突した木はそのまま破壊していきようやく止まった頃にはかなりの距離を吹き飛ばされていた。
ダメージは・・・無いと思う。
だが折れ倒れた木を見るにとんでもないほどの力だとすぐに理解した。
仮にスキルのおかげで無傷であるの仮定しても、あの女騎士と戦い続けるのはまず無理だ。
このダメージ無効が魔力を消費しているものだとしたら確実にヤバい。
ふざけんな、これがこの世界の人間の水準とでも言うのか。
騎士っぽい身なりでしかも女だぞ。
それがこんなめちゃくちゃな力を振るってくるなんてこの先が思いやられる。
スキルの会得で予想以上に思い上がっていた事を認識する。
「っ!?」
遠くから何かが来るのがわかった。
何かなんてわかりきっている。
あの女騎士だ。
俺がまだ死んでないってわかって追撃しに来ているのか。
くそっ、これ以上は、やらせてたまるか!
両手を広げ魔力を回りの木々に集中させる。
全ての木を抜き進行方向投げるつける。
「このぉ!」
直接的な攻撃じゃなければきっと大丈夫だと思ったが予想通りだ。
これが駄目だったら本当に俺はこの先やっていく自信が一気に消え失せるところだ。
ジャキンッ!! ジャキンッ!! ジャキンッ!!
まるで俺の自信を全力で削りに来ているかのように投げた木々は次々と斬り落とされていった。
「当然にように速度も落ちないってか」
木々での遠距離攻撃が駄目なら別の手段を取るしかない。
両手を地面へと付け魔力を注入し地面を盛り上げ、俺の場所までの道筋に大量の分厚い壁を形成していく。
これで時間稼ぎくらいは出来るはずだ。
それでも女騎士の速度は止まることを知らない。
剣を光らせ俺が作り上げた壁を意図も容易く両断、風穴とあらゆる手段で突破してくる。
何処までしつこいんだこいつ。
「もう・・・おしまい」
「くっ!」
両手で持った剣を大きく振り被られる。
一閃。
目にも止まらない一撃が俺を襲う・・・。
「あれ・・・?」
女騎士は、俺を縦に両断した。
正確には・・・俺の幻影だ。
(はぁ、はぁはぁ・・・何とか逃げきれたか)
魔力で作り上げた幻影『イリュージョン』。
こんな芸当も出来るのは奴隷である俺にとってはありがたい。
地形形成で時間を多少でも稼げてよかった。正確には稼げていたかは疑問は残るが、今はとにかく逃げることを考えた方が・・・。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
マジかよ。
なんだこの音確実に俺の背後から聞こえる音だぞ。
大型のゴリラモンスターが走ってるような音がどうして俺の背後、俺が逃げてきた方角から聞こえてくるんだ。
ガァァアンッッ!!!!
金属音が森中に響き渡った。
そして俺は・・・また吹き飛ばされていた。
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