奴隷 と 奴隷


 新たなご主人の新たな屋敷、奴隷である俺の新たな住む場所。

 そこには先客がいた。


 エルフだ。


 俺はそのエルフの受け止められたのか、固い床石に頭をぶつけることはなかった。


「あ、あのご主人様、こ、この方は?」

「あん? 貴様と同じ奴隷だ。何か問題か?」

「えっと・・・あの・・・」


 エルフの少女が困った表情を浮かべ今自分がいる部屋を見る。

 特別広い訳では無い牢屋、寝床も一つしか無くそれ以外には少女の備品はほぼ無い。

 今後は自分のみならずもう一人が加わるということは容易に想像できたのだろう、エルフの少女は言葉を発することもなくご主人にその事を訴えるが。


「こいつを教育しておくように、手を煩わせるなよ」

「かしこまりました・・・ご主人様」


 エルフの無言の訴えも虚しくご主人は牢を施錠させ地下から消えていった。

 地下へと続く扉が閉まる音が響き完全にこの場には俺とエルフの子以外が居なくなったことを告げた。

 牢屋の中のロウソクの火だけが部屋を明るくしている。

 

「えっと・・・私はルキーと申しますあなたは?」


 ルキーと彼女は名乗る。

 それに対して俺は何も言葉を返さなかった。


「あの、言葉わかりますか?」


 恐る恐る聞く彼女、一切反応の無い事に不思議に感じ俺に手を触れゆっくりと俺の身体起こそうとするも力が弱いのか踏ん張ってもビクともしない。

 それでもうつ伏せに倒れている俺を頑張って引っくり返し、初めて目が合った。


「・・・・・・」


 目が点になっているのがよくわかった。当然だ。口角が上がりきった俺の表情を見て不審に思ったのだ。

 こういったパターンは初めてじゃない、売られた先に奴隷が居るパターン。そんな時でも俺の表情は変えることはなくただ笑みを浮かべ続けている。


「喋れない・・・のですね」


 察したのか、ルキーという子は静かに目を閉じどうしたものか悩んでいた。

 うつ伏せから仰向けに変えられ初めて俺は今の状況を理解した。


 膝枕。


 俺はルキーの小さな太ももに頭を乗せているようだった。

 ルキーはそんな状況で眉間に手をやりずっと悩んでいた。ご主人から俺にこの屋敷の事をどうやって伝えた物かと思考錯誤していた。


「それじゃあ、聞いている物だと思いお話ししますね」


 反応が一切見られない俺に対してルキーは一人喋り出した。


 主にこの屋敷の奴隷としての仕事に関してだ。

 内容は至って簡単な物だった。

 朝一番にここの牢屋が開く、そして地上へと続く扉とは反対側にある扉へと向かう。そこは当然地上に出る為の通路では無くその真逆である地下に続いている物だ。

 その地下はこの屋敷から出る排泄物が溜まる場所だそうだ。


 俺達奴隷の仕事はその場所の掃除だ。


 掃除の為の道具などは地下へ続く途中にあるという、壊さないようにと念を押された。


「おわかり頂けたでしょうか?」


 首を傾げ俺の顔を覗き込む。近くで見て初めて違和感を感じたがすぐに理解した。

 汚れきった白い髪、長い耳、だが彼女の耳が長いのは右側のみ。

 左の耳は何かに食いちぎられたのか不自然に小さくなっていた。エルフの象徴的な耳の片方が失っていたのだった。


 そんなルキーは俺の頬にゆっくりと触れた。


「これから、宜しくお願いしますね」


 笑みを浮かべ冷たい手で俺の頬に触れるルキー。

 不思議な感覚を覚えた。

 弱々しい小さな手、俺の左の頬を触れた。撫でるように触った。

 だが彼女の顔笑みを浮かべつつも複雑な表情だった。


 何故そんな顔をするのか理解できなかったが、ルキーの顔見ていて奴隷の俺に有り奴隷の彼女に無い物を見つけた。

 それは奴隷紋様。

 俺の左頬、今彼女が触れているであろう紋様が彼女には無かった。


 それがわかった瞬間にその不思議に思っていた感覚が消えていったのがよくわかった。


 そうだ、俺は一体何をしているのだ。

 

 ここへ来る途中に考えていた事を実行しなくては。

 笑みも捨て、己を殺す。

 それを目的に掲げたことを。


「あっ・・・」


 何も言わずに俺は起き上がった。彼女から逃げるように部屋の隅へ移動し壁へと寄りかかり。

 そしてそっと静かに目を閉じた。


「・・・おやすみなさい」


 俺の動作を見てルキーは牢屋のロウソクの火を消した。

 これが俺とルキーの初めての出会いだった。


 言葉を交わすことなかった。


 だが関係は無い、俺は俺の目的の為に時間を費やすと決めたのだから。

 本当に終わりにしたい。


 それだけが、俺が奴隷としても最後に出来ることだと思うから・・・。




・ ・ ・




 目が覚めた。正確には目を開けただけだ。

 ルキーの言葉で目を開けた。何を言ったのかはわからない。

 

ガシャンッ。


 牢屋の鍵が開かれた音がした。

 顔を上げて出入り口を見ると一人の侍女がルキーを睨みつけていた。


「おはようございます」


 ルキーは律儀に頭を下げ挨拶をしていた。

 侍女はそれをゴミを見るような顔で見ているとふと部屋の奥の隅にいる俺にようやく気が付き目が合った。

 一瞬目を見開き驚いた素振りを見せるもすぐにルキーに目線を戻した。


「ほら、今日の分だ、さっさと食べたら仕事に入りな。ただでさえ最近は匂いがするって旦那様がおっしゃってるんだ」


 小さなパンを一つルキーへと放り投げた。

 それを受け取るとルキーはすぐに顔を上げて侍女に訪ねた。


「あの・・・昨日の夜にもう一人・・・」

「そんな事私の知った事じゃないよ」


 意味もなく叩きつけるかのように扉を閉め侍女はその場を去っていった。

 そして再び地下は静寂に包まれた。


「・・・・・・」


 パンを片手に再び悩むルキー。

 チラっとこちらを見て意を決したのかパンを持ちこちらに寄ってきた。


「どうぞ、お食事です。ですがこれが今日一日の物ですのでお気を付け下さい」


 今日一日の食事。パン一つか。一つも出るのかと良待遇に思えてしまった。

 俺はそのパンを受け取らずに立ち上がり、昨日彼女が言っていた事をしようとする。


「え、あっ・・・!」


 俺を追うようにルキーも立ち上がる。

 後ろから何も口にし無くて大丈夫かと心配の声を上げている。良待遇なんて思ったが俺には何一つ必要だと思わなかった。

 だから俺は立ち上がり昨日説明された仕事という物をやろうと体が動いた。


「えっと・・・部屋に残しておきましたので、食べたい時に食べて下さいね!」


 背後から何やら声が聞こえるが反応をする事も無く歩き続けた。

 一歩一歩は遅く、ゆらりゆらりと幽霊のように俺は歩く。後ろから付いてきたルキーは当然俺を追い抜き地下へと続く扉の前で待っていた。


「階段になっているので気を付けてください、私もたまによく転んでしまいますので」


 あははと笑うルキー。

 携帯用のロウソクに火をやる、点火用の器具などを使わずに手を添えるだけで火を付けた。

 その光景をふと眺めていた。

 

 魔法だ。

 

 この世界には魔法がある。ルキーが今見せたのは魔力を使って火を付けただけの物。特別なことでは無い。

 だが何も出来ない俺にとっては特別な物だ。そんな芸当の一つや二つ出来れば多少は変わっていたのかも知れない。


 そんな事を考えながら先導するルキーと共に屋敷の地下へと進んでいく。

 

「あの、匂い大丈夫ですか?」


 鼻の上から布を巻き付けて喋るルキー。

 何もつけずに何も反応をしない俺が心配になったのか、自分が巻いている物と似たような物を渡されたがそれを受け取ることなく俺は進む。


 受け取らないとわかり手を引っ込め俺の顔をまじまじと見るルキー。

 目を点にして驚いていた。

 こんな事で驚き尊敬の眼差しのような視線を送られても困る、それこそ今彼女がやったような魔法が使えた方が何千倍も良いに決まってる。

 

「では、こちらをどうぞ」


 一本の棒を手渡された。何の変哲もないただの木の棒だ。

 これを使って掃除をしろということらしい。

 基本的には自分の手を使って排出物を取り除くようだが、稀に手だけじゃどうにも出来ない時にこれを使うようにと指導を受ける。


 そんな仕事をルキーと共にしていたら時間はあっという間に過ぎ去っていった。

 地下からはわからないがルキーが仕事の終了を知らせてきた。

 時間、日が落ちきる前に撤収するそうだ。

 仕事の作業と同じようにルキーの指示に従いながら後ろを歩く。


「最後はここで泥をしっかり落として出来るだけ匂いを屋敷へ持ち出さないようにこの魔石を使います」


 ルキーは手に持っている魔石を実際に使って見せた。

 魔石を両手で包むようにして持ち念じるように使った。

 魔石から光りが出る。ゆっくりとルキーを取り囲むように包んでいった。


 これも魔法の一種か。


「はい、ではどうぞ」


 だが、俺にはこれを・・・。


「・・・あれ?」


 ルキーが見せたように俺も両手で魔石を持つも光は現れない。

 最初からわかっていたことだった、俺には魔法が使えない。ヒューマンでも多少なりとも使う事が出来るのだが、稀に存在する分類される者が俺だ。

 これが奴隷として主人の下で長く居られない理由の一つでもあった。最悪それの為だけに奴隷を使う者も多くはない。


「えっと・・・ちょっと失礼します」


 ルキーは俺にくっ付き腰に手を回し魔石を再び光らせた。

 すると光りは俺とルキー二人を一緒に包み込んだ。

 徐々に俺の頭から足先までしっかりと光が包む。


 その光景と匂いを確認するルキー。


 もう問題ないと思ったのか、魔石の光が消え始めた。


「・・・・・・」


 だがルキーは腰に手を回したまま離れようとしなかった。

 ルキーの頭部を眺めているとその視線に気が付いたのか、すぐにルキーは俺から離れていった。


「す、すみませ・・・あれ?」


 不思議そうな顔で俺の顔を見るルキー。


「顔・・・口角・・・」


 彼女の言葉で俺は自分の顔を触れた。久しぶりに感じた。


 驚いた、と。


 俺の口角が・・・落ちている。

 だが、すぐに徐々に口角がまた上がり出したのが触れていてわかった。そうか、俺の目的は少しだけ前進したのかも知れない。


 再びルキーへと目線を向けると目が合った。

 ふふふ、と笑って俺の手を取る。


「さぁ、戻りましょう!」


 今日なんど向けられたかわからない笑顔をまた向けられた。

 それに対して特別な反応は当然無かった。


 だが、彼女は何かを決心したのか出会ってから一番の清々しい気持ちの笑顔を俺に向けたとそんな事を思っていた。




・ ・ ・




 

「おらぁ!! どうだ!」


 奴隷の仕事は、何も地下掃除のみではない。むしろこれが本業。

 新しい屋敷へと連れて来られ数日後の事。

 いつものように仕事を終えた夜、俺はご主人に呼び出された。ご主人の部屋へと連れ出された。


「その笑み!! どれだけ耐えられるか!! 見物!だな!!」


 両手を枷で繋ぎ鎖で天井にぶら下げられる。こんな事をしなくても抵抗なんてしないのに。


 そして鞭を豪快に振り下ろし何度も何度も打ち込んでくる。

 バチンっと音のみが部屋中に響き渡る。


「こいつも試してみたかったんだ!」


 何やら小さな小石を手に笑顔を浮かべていた。

 黄色い宝石のような石、魔石だ。


 その魔石右手に持ち、左手に持っている鞭へと合わせた。


「ほう! これがエンチャントという奴か!」


 鞭が雷の魔法を帯びた。

 ご主人が使ったのは『付与石』、一種の魔石だ。

 主に武器などに属性を付与する石。ご主人は雷属性を鞭に付与したようだ。


「おーら!」


 再びバチンっと鞭打ちが開始される。

 付与された雷も当然発揮され目で見えるほどに俺の身体に電流が流れている。


「あははは・・・ははははははっははっはっは!!!」


 その光景が楽しいのか最初よりも鞭打ちが激しくなっていった。

 新しいおもちゃを手にした子供のようにはしゃいでいる。そんな感想しか浮かばなかった。

 高笑いを続けながら何度も何度も思う存分に鞭を振るうご主人。


 きっと凄く楽しいのだろう。

 どうゆう事を思っているのかなんて奴隷の俺にわかるはずもなかった。


 それでも俺の口角は落ちる事も無く、呼吸をする以外に声を上げることはなかった。


 主人はそれを見て諦めたのか、それともエンチャントの効果時間が終わったからか息を荒げながら満足していたようだった。


「はぁ・・はぁ・・・楽しませてくれるじゃねぇの、次はどんな物を使おうか。楽しみで仕方がないぞ? 貴様もそう思うだろう??」


 俺がこういったのが好きなのだと勝手に解釈されているのだろうか。

 当然これもいつもの事だった。


 最初はこの笑みが喜んでるように見える。それが変わらない事に徐々に気付き楽しみを忘れ、最終的に不気味に思う。

 これがいつものパターンだ。


「連れて行け」

「かしこまりました」


 ご主人が部屋を出ていく。

 それを見送った執事は天井にくくり付けた鎖を取り、まだ全身に痺れが残っている俺を引っ張る。

 勢いが強くバタンと転びながらも執事は躊躇無く引きずり俺を地下へと戻す。


ガシャンッ。


 暗闇の牢屋へと雑に放り投げられた。牢屋の出入り口前で倒れ動かない。電流は消えてもまだ体に力が入らないのだろうか、動くことが出来ない。

 だが、待っていたかのように俺をゆっくりと引きづり寝床へと動かそうとする者がいる。ルキーは小さい声で呟いた。


「御勤めご苦労様です」


 俺の身体を気使い丁寧に移動させてくれた。

 部屋の中は暗く、ロウソクの火を付けることもなく、彼女は俺を藁で作られた布団の上へと移動させてくれた。


 ここへ来てから数日こういった事が多くあった。

 一番最初の御勤めではフラフラになっていた戻ってきた俺をルキーは心配して自分の寝床を俺に提供してくれた。そのおかげかはわからないが次の日の朝は目が冴えていたようにも感じた。


 俺が来た当初は俺ばかりが呼ばれる事が多かったが、当然ルキーも呼ばれる事もある。

 鞭打ちのみならず彼女には性処理もされているのだろう、日によってはご主人の尿塗れで戻ってくることもあった。

 そんな時は逆に俺の来ている布で身動き一つ出来ないルキー拭いて上げることもあった。


 その度に感謝される。

 

 その度に口角が下がり、無表情へとなる自分がわかった。


 感謝されたいからやっているのではない、この口角が下がる方法を俺は模索していただけなのだ。

 今はただそれが彼女の笑みを浮かべる表情を見ると下がる事がわかったのがつい最近だった。これを続ければきっと、と俺はそれを続けていたのだった。



 彼女はどんな想いなのかなんて考えることもなく・・・




 そんな日々を送っていると早朝からルキーはご主人に呼ばれ御勤めをしていた。

 俺はいつものように彼女の戻りを待ち、いつもよりも早く戻ってきた。


「見てください、これ!」


 地下の続く扉が閉まった瞬間にルキーは手に持っている本を俺に見せた。

 フラフラの身体を受け止め彼女を見る。

 股から液体が垂れているところを見るに朝の性処理で呼ばれたのだろう。

 透明の液体のみならず、白みかかった液体も垂れていたことで判断出来た。


 だがそんな事はお構いなしにルキーは手に持つ本を俺に見せる。


「これ、ご主人様より頂いた物なんです。最近の私達の働きが良かったようで、頂けました」


 年相応に喜ぶルキーを見て俺は無表情で答えた。

 そしてそれを見てルキーも喜んだ。


 今日はご主人が家を開けるらしく仕事を休みを頂いたようだった。


「一緒に見ましょう・・・あぁ、字読めないんですよね。・・・なら私が読みます!」


 そんな提案を受けながらも俺はいつものように彼女を股から垂れる液体を拭いて上げた。

 少し今日は恥ずかしがっているのか躊躇している風にも見えたがお互い様ということで俺が言葉を発することが出来ない為か暗黙の了解のようになっていた。

  

 だが、今日はいつものように完全に拭き取る前にルキーは俺の手を取った。


 それよりもと、本を両手で持ち見せた。

 つまり彼女が言いたいことは早くこれを読もうということだ。久しぶりの休みと与えられた本が余程に嬉しいのだろう。


 俺は何も言わずに彼女の前に座り、聞く体勢になった。


「では、いきます。 昔、昔、この世界『フェインズ』には大きなモンスターが蔓延っていました・・・」


 こうしてルキーの読書会が始まった。

 内容は実話なのか創作物かはわからない。少なくても題材はこの世界と同じ名前のフェインズが舞台のようだった。

 世界の総称すら俺は忘れていたようだった。その名前を聞いて自分がいる世界がどんな物なのか思い出してきた。


 ルキーの言葉は詰まること無く続いた。


 その昔に巨大なモンスター達があちこちで暴れ回っていたようだった。それを食い止める為に各国で『勇者』を選抜したようだ。


 勇者は小さな村から大きな街まで行く先々の凶暴化したモンスターを倒して回ったようだ。

 この本の視点は小さな小国の一人の勇者の話だ。多くの出会いと戦い、時には葛藤なども細かく描かれている。

 次第にその勇者の名は世界中に轟き、世界中の人々がその勇者に力を貸し、そしてそれは人々のみならず神々も勇者に力を貸したそうだ。


「神々は自らの『眷属神』を使い勇者達や人々へ力を貸し共に凶暴化したモンスター達を討伐していいったのだった・・・そして、そし・・て」

 

 急にルキーの言葉が止まった。俺は顔を上げてルキーを見た。

 するとルキーは壁によっかかったまま眠っていた。

 それもそうか、ルキーはいつもよりも早い時間にご主人に呼び出されたのだし、今日の為にたくさん頑張ってきたのはずっと一緒にいた俺がよくわかる。


 ゆっくりと起こさないようにルキーの身体を動かし彼女の寝床へと運び薄い布団を掛けてあげた。

 起きる事も無く安らかに眠っていた。

 ふとその場からルキーを運んだ時に落とした本を見る、ルキーの最後の言葉と本の厚みからしてまだ先があるように思えた。

 久しぶりの好奇心からか少し先が気になってしまった。


 本へ手を伸ばそうと体を動かしたら、伸ばした右手とは逆の手が何かに掴まれている事に気が付いた。


「また・・・明日も・・・一緒・・に」


 寝言を言うルキーが俺の左手を両手に抱えて寝ていた。

 つまりはここから俺は離れることは出来ない。そうゆう事だ。

 本の内容は彼女の為にもこの先の為に取っておくのが一番だ。そうと決めたら俺もその場で手を動かさないように少し目を瞑って仮眠を取った。



 ルキーに覆いかぶさるような形で俺も眠りについたのだった・・・。



 静寂に身を投げた。

 本当に久しぶりに睡眠という物を味わったようにも感じた。



 だがそれは突然に破られた。



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