公民科を想定した一時間の学習指導案の具体的な作成方法
本レポートでは一時間の授業を公民科の倫理分野と想定し、古代ギリシア哲学について教えると仮定する。
まず授業のねらいを確認する。今回の一時間の授業のねらいは「アリストテレスについて理解させる」こととする。これは全体のカリキュラムで見たときには「思想史を俯瞰的に把握する」という意味があり、ここでそれを学ぶことには「アリストテレスという西洋思想の源流のひとつを学ぶことにより、ここからの思想史の展開を理解するベースをつくる」という意味がある。
次に実際の学習指導案に記入していく。
まずは指導教諭の先生のお名前、自分の大学名、自分の名前を記入する。そして「教科」「日時」「場所」「学級」と記入していく。今回は例として、「公民科 学習指導案」「令和×年×月×日(×)」「5校時(13:00~13:50)」「3年1組教室」「3年1組(在籍:男子12名 女子16名)」とする。
その次には「単元」と「単元の指導目標」について記入していく。今回は「古代ギリシア哲学の流れとその影響について説明できるようになる」とする。その次に、指導計画を書く。今回は全四節の内の第四節にあたるとする。「(1)ソクラテス以前の哲学者たち(フォアゾクラティカ―) (2)ソフィストとソクラテス (3)プラトン (4)アリストテレス(本時)」と記入する。
次は「生徒の実態」を書く。今回の3年1組は「静かに授業を受け、言われた指示はこなすが、学習に積極的ではなく義務感でやっている者が多い」とする。それ故に、教師側からの指名しての発問や小テストを多めに取り入れ、理解度を確認し深めていく必要がある。
その次には「本時の目標」と定める。今回は「アリストテレスについて説明できるようになる。プラトンと比較した際の特徴をつかめるようになる」ということとする。
ここまで記入が終わったら「本時の展開」を構成しながら記入していく。今回の授業は五十分とする。
導入には五分間を用い「前時の復習」「本時の学習確認」を行う。前時にやった「プラトン」について自己確認の小テストを行う。この小テストは事前に準備しておく。課題は「プラトンについてあなたの知っていることをできる限り書きなさい(箇条書き可)」として、二分間取る。生徒はここでポイントを自ら書き出す作業をする。次の一分間でポイント(ソクラテスの弟子、『ソクラテスの弁明』を書いた、アカデメイアを開いた等)について解説していき、例えば「ソクラテスの弟子というポイントを書けた人」等と発問して挙手させる。更に残りの一分間で思想史を把握する上では暗記ではなく事実の相互関係で捉えるとよいというアドバイスをする。最後の一分間で本日の授業の説明をする。プラトンまでの繋がりも踏まえた上で「本日はアリストテレスというプラトンとは違ったタイプの哲学者について学ぶ」という前提を共有する。
授業の展開には三十五分を用いる。最初の五分間では、教科書を用いて、生徒たちに声を出して輪読させていく。次の十分間では黒板を使ってアリストテレスの伝記的知識(プラトンの弟子だった等)や業績(形而上学を展開した等)を解説していく。生徒には板書をノートに取ってもらう。この際に授業から脱落してしまう者が出ないよう、キーワードを書く際には適宜色を変える、「ここはポイント!」などとメリハリのある声かけなどを取り入れていく。その後五分間、パワーポイントを用いてアリストテレスの資料を見せる(著作の表紙や、アリストテレスの描かれた絵画等)。アリストテレスについて知識を習得してもらった後は、残りの十分で、プラトンと比較させる。まずは「プラトンとアリストテレス、どっちが好き?」といった問いかけから始め、プラトン派とアリストテレス派に分かれてもらってお互い「なぜそちらの哲学者のほうが好きなのか」と簡単に発表してもらう。「どっちが好き?」という日常的な表現から始めることによって、抵抗感なく哲学者や価値判断の比較検討の方法論を身につけさせる。この際、好きである理由が単純な印象や誤魔化し(プラトンの方が純粋そうとか、どっちも難しそうだからどっちでもよかった)等にならないよう注意する。適宜声かけをして議論が脱線しないようにする。
最後の十分間はまとめとする。クラスの特徴に合わせてまとめの時間を多く確保している。三分間で振り返りのペーパーにアリストテレスのポイントを記入してもらい、その後は質疑応答の時間を多めに設ける。質問が出てこない場合はこちらから指名して発問する。この際に教師側が喋り過ぎてしまわないようにする等、受動的な学びに終始しないよう配慮する。
授業の後は「本時の評価」について記入する。「アリストテレスについて説明できるようになったか」「プラトンと比較した際の特徴をつかめるようになったか」とする。
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