世界と比較した場合の日本の教育養成と教育システムの特徴についての一考

 日本の教育事情の特徴は、一律化・標準化の傾向が強いことである。

 例えばアメリカ合衆国では、その歴史ゆえに各州ごとの自治力が強いという事情も絡み、学校教育のシステムは多様である。日本の義務教育にあたる教育も、日本のように必ずしも6・3・3制ではなく、別の学年制度を取っている場合も少なくない。教員養成も、州などで一応の基準は設けられておりその達成を目指すが、日本と比較するとその基準の解釈の幅が大きいといえる。また他の例として、イングランドも、教育改革として様々なタイプの学校が作られている。教員養成も大学だけではなく、外部機関で養成する等複数の道がある。

 日本の場合は、教員養成は原則短大および大学や大学院で教職課程を修了して教員免許を取るという道が教員になるほぼ唯一の道であり(例外は特別免許状)、また学校教育も北海道から沖縄まで全国一律に6・3・3制となっており、日本全国どこに住んでいても同等で同水準の教育が受けられる。確かに地域差を生かす教育も行われるが、それにより教育の質や学習内容が大きく左右されるということはない。教科書も文部科学省の認可を受けたもののみを用い、学習指導要領に沿って教育を行っている。

 アメリカ合衆国やイングランド等の教育事情を見ると、自由や挑戦の気風が多様性や他者理解、コミュニケーションに強い社会人を育てていくという特徴がある。その一方で、地域差が激しく、教育の質の水準が一定ではないこと、教育基準の解釈がややもすると自分勝手なものとなってしまうような印象もある。

 それに対して日本の教育事情は、悪い言い方をすれば融通が利かず、必ず指定された教科書を用いて指定された学習内容を実施しなければならない。近年のネット文化の普及や相互コミュニケーションの欠如の時代において、ますます多様化してくる生徒ひとりひとりの教育的ニーズに応えられるかというと、疑問の余地が残る。しかしその分、全国どこの地域でも、どのような環境で生まれ育っても、全国水準で少なくとも最低限の質が保証された教育を受けることができるという長所も無視はできない。

 結論として、世界の中で比較して、日本の教員養成や学校教育には多様性に対応するという課題が目立つが、一方で、いかなる事情にも関わらず日本に暮らしている以上は、一定水準の教育を子ども全員が受けられるという長所も際立っていると考える。

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