万国共通、トラブル、常識
どうやら俺は人を殺したようだ。何かトラブルに巻き込まれていたような気もするし、俺がトラブルを起こして周りを巻き込んでいた気もする。寝起きで頭は重く意識がはっきりとしない。ただ、目の前に血だらけの人が倒れており、俺の手が赤く染まっていることは確かなようだ。のどがカラカラに乾いている。俺はテーブルの上にあるペットボトルを手にとり、キャップを開けようとするが血で滑りうまく行かない。なんどやってもうまくいかず、イライラした俺はペットボトルを床に投げつける。水は諦めてソファに座った。今の時代人を殺すことは万国共通で良くないこととされている。俺にはなぜかわからないがそうらしい。皆がそう言っていた。やっぱり喉が乾いてどうしようもないことに気がつき水道に向かう。足元に転がる赤い人を踏みつける。何をこんな所に転がっているのだろうか。気色が悪い。イライラする。水道にたどり着いた俺は蛇口をひねり、出てきた水を手で掬い口へと運ぶ。血の味がする。まずい。腹がたつ。しかし喉が潤い頭もはっきりとしてきた。さて常識的にはこのような場合どうするだろうか。やっぱり警察に連絡すべきだろうか。何か困ったことがあったら警察に連絡しろと誰かに教えて貰った覚えがある。しかしこの状況をなんと説明しようか。気がついたら目の前に血塗れの人が倒れていたのだがどうすれば良いかと聞く感じだろうか。そしたら警察は助けてくれるだろうか。いやそもそも俺は今助けを求めているのだろうか。よく分からない。とりあえず疲れた。もう寝よう。寝室へと向かう。寝室のドアを開けるとそこには知らない子供が寝ていた。邪魔だなと思い、布団を剥ぎ取り退かそうとすると子供は目を見開きこちらを凝視してくる。不気味な雰囲気だ。こいつはなんだ。子供は音もなく立ち上がる。
「あなたは何をしているの?」
とても子供とは思えない低く冷たい声で話しかけてくる。
「何もしちゃいない。気がついたらここにいたんだ。俺はもう眠いんだ。どけてくれ。」
「そう。ふふふ。」
子供は不敵な笑みを浮かべながらゆっくりとベッドから離れて部屋から出ていった。意味がわからない。なんだったのだろうか。もういい、疲れた寝よう。ベットに横たわりゆっくりと目を閉じた。
再び目を覚ました時、目の前に見知らぬ子供がいた。
「あなたは人を殺したよ。」
落ち着いているが昨日とは雰囲気が違い子供らしい声だ。不思議と思考ははっきりとしている。
「そうか。人を殺したか。」
「あなたはこれからどうするの?」
「これからどうしたらいいと思う?」
「普通は警察に行くか、誰にも見つからない所に逃げるよ。」
「そうか。普通はそうするのか。」
「あなたは普通の人?」
その質問に答えが詰まる。俺は普通なのだろうか。いや、そんなことどうでもいい。
「とりあえずお腹空いたからご飯でも食べに行くよ。一緒に行くかい。」
「やめておくよ。僕は普通だから。」
そうかい。ゆっくりと立ち上がり玄関へと向かう。ドアを開けると陽射しが眩しく目が眩む。血にまみれていたあの子は普通らしい。逃げ出すのだろうか。それとも警察に行くのだろうか。まあどっちだっていい。今日はいい天気だ。早くご飯を食べに行こう。
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