拳銃、落下、愛してる

「早くその銃を私に向けて!」

 女は男に向かって必死に叫ぶ。


 男は無言で立ち尽くし決して銃を向けたりしない。


「なんで、どうしてよ! 私のことを愛しているならその銃をこっちに向けて!」

「それはできない。」

 男はそう応える。


「はやく! はやくしてよ!」

 もう女は冷静さを失いその表情には狂気を感じる。


「あ、やばい、はやく! 銃をはやく!」

 バキッ枝の折れる音がした。


「さようなら。」

 男は冷たい目でそう呟いた。


「死んでも恨んでやる!」

 そう言い残し女は崖の底へ落下していった。


 男が銃を向ければ女はそれに掴まり助かることができた。しかし男は決してそうはしなかった。


 不倫した女のことがどうしても許せなかったからだ。




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