折り鶴、登下校、のど飴
のど飴あげる。学校の登下校中にいつものど飴をくれるマミちゃんがいなくなって一週間が過ぎた。別に死んだわけでもないし、ケンカしたわけでもない。なぜか突然一緒に登下校してくれなくなったのだ。毎日朝は遅刻ギリギリに登校するし、授業が終わると急いで帰っていく。休み時間に話していてもどこか上の空で全然話を聞いてくれていない感じがする。何か嫌われるようなことをしてしまっただろうか。理由がわからないのはとても不安だ。
それからまた一週間がたったが状況は変わらない。このままでは何も変わらないと思った私は意を決してマミちゃんの家に行くことにした。玄関の前に立つと緊張したが思いきってチャイムを鳴らすとインターホン越しに女性の優しい声がした。
「どちら様ですか?」
「ごめんくださいー、マミちゃんと同じクラスの鈴木咲と言います。マミちゃんはいますか?」
「あらマミのお友達。今開けるからちょっと待っててね。」
そう声が聞こえてから少しするとドアが開き先程の声の主が優しく微笑みかけてくれる。マミちゃんのお母さんだろう。目元が似ている気がする。
「いらっしゃい、マミは二階にいるから上がってあげて。」
「はい、ありがとうございます。」
「マミー、友達が来たよー!上がって貰うねー!」
そうマミちゃんのお母さんが二階に声をかけると、
「誰が来たの?ちょっと待って!」
とマミちゃんの声が返ってきた。
マミちゃんのお母さんはそんな声は気にせず、さあどうぞと私を部屋まで招き入れてくれた。部屋に入るといつものマミちゃんと大量の折り鶴が見えた。
「すごいね、折り鶴。どうしたのこれ?」
私は突然家に来たことを謝るよりも前に大量の折り鶴について聞いてしまった。その質問に対して返事に困るマミちゃんを見て私は慌てて突然に家に来たことを謝り、その理由を伝えた。
「突然ごめんね。けど最近避けられてる気がしてさ。嫌われちゃったのかなって思って。何か気に触ることをしたなら謝るよ。仲直りがしたくて来たの。」
つい早口になってしまい話し終わると息が切れた。マミちゃんは突然のことに驚いた顔をしている。突然友達があらわれ色々と捲し立てるように話すのだから驚いて当たり前だ。やってしまったと思って恥ずかしくなり下を向く。
「避けてなんかないよ。ただ最近これを作るのに忙しくてさ。」
顔をあげるとマミちゃんが困ったような顔をしている。
「実はおばあちゃんが入院しちゃったの。あんまり良くないみたいだから、何か出来ないかなと思って千羽鶴を作ってたの。」
誤解させちゃってごめんね。そうマミちゃんは申し訳なさそうに私に話してくれた。そうだったのかと思い、早とちりしてしまったと私はまた恥ずかしくなり顔が熱くなった。顔を赤くし下を向く私に気を遣ってかマミちゃんは話を続けてくれる。
「実はね、毎日サキちゃんにあげていたのど飴はおばあちゃんがくれていたの。サキちゃんが歌手になりたいってこと話したら、嬉そうにしてさ、じゃあ喉が大事だねって。優しい人なの私のおばあちゃん。」
マミちゃんも優しい人だと思った。私に気を遣って色々と話してくれる。辛いのはマミちゃんのはずなのに。
「じゃあさ、私も折り鶴作るよ。のど飴のお礼!」
「ありがとう。じゃあ学校帰りに一緒に作ろうよ。」
こんな私をマミちゃんは快く受け入れてくれた。
あれから3ヶ月が過ぎた。また最近は一緒に登下校している。のど飴あげる。マミちゃんは嬉しそうにポケットからのど飴を出し私に渡してくれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます