復活、備長炭、墓場

 備長炭を使うのがコツなんですよ。とある職人がカメラに向かって話している。

「他の炭ではダメなんです。備長炭は扱いずらいですがやっぱりこの炭でないと我々の仕事は上手くいかんのです。」

「備長炭をうまく使いこなせるようになるまでどのくらい掛かりましたか?」

 職人の話を聞いているアナウンサーが質問をする。

「そーですね、やっぱり十年以上は掛かりますよ。」

「十年も掛かるのですね!」

 とアナウンサーは相槌を打ち話を盛り上げようとする。

「時間は掛かりますが他の炭を使ってる同業者の仕事には負けない自信がありますよ。」

 職人は自信満々な様子で話を続ける。

「他の炭とは温度が違うのですよ温度が。やっぱり我々の仕事は温度が大事ですので。」

「そーなんですね!」

 とアナウンサーは少し大袈裟なリアクションを取る。

「ところで皆さんは墓場でお仕事をすると聞きましたが何故墓場なのですか?」

「難しい質問ですな。我々の中でもその理由は意見が分かれるのですよ。ただ間違いなく墓場でないと上手くいきません。」

「不思議ですね。」

 とアナウンサーは相槌を打っている。

「まあ私の考えでは墓場にある人間の怨念のような物が効いているのだと思います。」

「なるほど、なるほど。それでは皆さんが仕事している映像がありますので流させて頂いてもよろしいでしょうか?」

「構いませんよ。むしろ我々の仕事を世の中に知って貰えるチャンスだと思ってます。誤解を受けやすい仕事ですからね。我々も世のため人のために頑張っていることが少しでも伝わればと思います。」

 職人は笑顔でそう話す。

「ありがとうございます。それではVTRどうぞ。」

 アナウンサーが合図をすると画面が切り替わる。その映像には職人とそのお供が映っている。職人たちは墓場で焚き火を囲み不思議な踊りを踊りながら悪魔よ復活したまえーと叫び続けている。

「うんうん、いい仕事だ。やっばり悪魔がいないと世の中ダメですよ。そして我々の悪魔が一番だ。」

 映像を見ながら職人はとても満足そうにカメラに向かってそう話している。


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