2話「合格発表日」
ついに迎えた合格発表の日
「よっす継斗。待った?」
「いや、そこまで待ってないよ。行くか。」
「おうよ。」
一緒に行こうと約束していた智久とコンビニで落ち合い、学校へ向かう。
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校内はすでに合格発表を見に来ている生徒達でいっぱいだった。
体育館前の駐車場には、同じ学校の生徒や隣の中学校の生徒、見たこともない制服の他校生が大勢いる。ざっと見て300人といったところか。
「この中のほとんどの奴と同級生になるんだよな...」
智久はすでに合格発表とは別のことに興味が向いているらしい。
「もう受かってる気満々だな。よほど入試の出来が良かったのか?」
「いや、もしかしたらやってるかも...」
「おい...」
「意識を他に向けないと緊張で倒れそうなんだよ!」
そうこうしているうちに、2人の教員が体育館の入り口にある両開き扉に大きな板を立てかけている。
一斉に生徒たちが群がり、少し出遅れた俺たちも人混みをかき分けて進んでいく。
いろんなところから喜びの声が上がる中
「お願いします!お願いします!お願いします!」
「うるせぇよ」
「あ、あった!あったぞ継斗!!」
「おっ、俺もあったぞ智久。」
「よかった~... これで安心して帰れるぜ!」
「ははっ、そうだな。」
念願の合格。ひとまずは泣きながら帰らずに済んだようだ。
今日することはもう済んだので、俺たちは帰路に就くことにした。
「すまん継斗、緊張解けたら急に尿意が...」
「おう、校門前で待ってるぞ。」
緊張症な智久は速足で校内のトイレへと向かった。
…そういえばあいつトイレの場所知ってるのか?
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-校門前-
校門前で落ち合うために一足先に校門を出ると、隣の中学の制服を着た女子生徒とすれ違う。
瞬間、頭の中に電気のような衝撃が走ったような気がした。
反射的に振り返ると、そこには少し青みがかったボブヘアの女の子がいる。
身長は175㎝の継斗よりも一回り小さいが女子にしては少し高め。165cmくらいか。
こちらに背中を向けているので顔は分からない。でもなんだろう、やけに心臓がうるさい。
気づいた時には、体育館に向かうその背中に声をかけていた。
「あのっ.....あの!」
「...?はい、私ですか?」
やっぱりそうだ。長い睫毛に大きな青紫色の瞳、きれいに整った眉毛と柔らかそうな唇。
髪の色やヘアスタイルは変わったが、見間違えるはずがない。
「イヴェール」だと、直感でそう確信した。
嬉しさが爆発しそうになったが、少し怖くなって恐る恐る聞いてみる
「あのっ!! あの...俺のこと覚えてませんか?」
だが現実は残酷で
「...いえ、すみませんがどなた様でしょうか?」
どうやら君は覚えてないみたい。
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