最初に水の流れる音が聞こえて、それからゆるやかに風の音や日の光や草木のそよぐ音が重なり合って朝の歌が始まるような気持ちになりました。自然描写が繊細でいきいきとしていて、うっとりしました。恋人と手を繋ぐシーンが優しくて好きです。懐かしい映画を観たようです。ありがとうございました。
作者からの返信
この書きだしのところ、実は別の作品の冒頭だったのですが、没にしてしまった部分で、自分で気に入っていたのでどこかで使いたいと思っていました。そこにコメントいただけたことが、とてもうれしく思います。日常のほんのひとコマを、水辺の風景の中に書こうとして、風景描写にも力を入れました。お読みくださり、ありがとうございました。
@sakamonoさんのこの傾向の作品は、もう何作も読んでいるような気がするのですが、読み慣れたという感覚が未だやってこないのはどうしたことでしょうか。達人の手にかかると、ありふれたモチーフの風景画でも、みずみずしい色彩が心をつかんで放さないように、どこにでもある平和な朝の風景が、なんだかとてもマジカルなことが起きている描写のように読めます。やはり魅力的な舞台選定が大きいのかなと思いつつ、@sakamonoさんならマンハッタンの真ん中に舞台を移しても、スペースコロニーであっても、同じような味わいのシーンを書いてしまうのではないかなと想像します w。
私には色んな意味で模倣できそうにはない文章ですが、作中のあちこちの光景で、懐かしさを伴うデジャヴに行き当たりました。具体的な記憶を徹底的に再現したら、たぶんどれもそれほど美しい場面ではなかったはずなのに、この作品の中だと、不思議に郷愁に溢れたイメージへ純化されているようなのはなぜなのか。面倒なんで、この頃では「そういう読書体験が起きる作品群なのだ」ということで割り切ってますが 笑。
ところで、多幸感を催す川べりの描写を読んでいて、ふと思い出したのが「ハチミツとクローバー」の一場面です。いい年をした大学生たちが、わいわいいいながら四つ葉のクローバーを探し回ってる有名なシーン。そういえばあの漫画家もやたら食べ物ネタに走ってましたね(というか、今も走ってますが)。人の幸せな形を的確に描いた作品同士ということで、何かしら通じるものが出くるものなのかな、などと考えたりもしました。
作者からの返信
ああ、何かとても過分なお言葉をいただいたように思います。こういう書き方が自分の個性、ということもできますが、こうしか書けないのか、という思いもあって、違う書き方を模索して暗礁に乗り上げたりしています(笑)。スペースコロニーみたいなところを舞台に、こんな雰囲気で書いたら……なるほど、おもしろいです。こんな文章と相容れないジャンルの小説を書いてみたら、ちょっと違った雰囲気のものが出来上がりそうです。昔、小説入門書を読んだ時、「風景を書くことが文体を作り上げる」といったことが書かれていて、それにならおうとして風景描写が多くなっているのだと思います。「ハチミツとクローバー」、タイトルは知っていますが未読でした。興味を惹かれたので読んでみようと思います。お読みいただき、ありがとうございました。