第16話 雁坂美代の「光」
14.
「おい! こら結江!」
結江は白昼の下、緑の芝生の上で堂々と睡眠をとっていた、応援をすっぽかして。
別に応援は義務ではないし、競技中に校舎に戻ることは禁止されてはいない。
――ただ、話をする"きっかけ"がほしかった。
アタシ、
幼稚園、小学校、中学校、そして高校。全部同じ学校の幼馴染。
光はもともと大人しい性格だった。もしかしたらアタシがわんぱくな女の子だったからそうなったのかもしれない。
いつもアタシの後をついてくる、「ひよこみたいな弟」だった。
たまにそれも鬱陶しくなる日もあって、光が登れないような高い木に登ってみたり、かくれんぼしようとか言って光を鬼に仕立て上げてそのまま帰ってみたり。
なんかアタシが苛めているみたいだけど、光が同級生とかに絡まれていたときはアタシが「姉」として追っ払ったし、転ば…光が転んで怪我したときも、泣きじゃくる光をおぶって帰ったこともあったっけ。
こうやっていつまでも付いてきてくれる「弟」がいたこと、こうやっていつでも守れる「弟」がいたこと、これだけで嬉しくって、嬉しくって。
でもそんな「姉弟」という関係は永遠には続かなくて。
光は中学に入ってバスケ部に入部した。光はインドア派だけど身長は当時から高かった。
だからアタシがふざけ半分であいつの入部届にバスケ部って勝手に書いたら、あいつ、そのまま出しちゃって、未だに当時の本心は聞けていないけど似合わないバスケ部に突っ込んでいった。
それからだ、彼が―そしてアタシが変わったのは。
中1の夏前まではよく今まで通り一緒に登下校していたけど、夏明けから光は毎日朝練、夜も居残り練で、「姉弟」は一緒に登下校しなくなった。
アタシも部活に入っていたけどそんなにストイックではなくて。
そのくせ昼練も始めたからあいつとは本当に接点がなくなっていって、そこにはもう昔のおとなしい、弱い「弟」の光はいなくなってた。
アタシも多少の寂寞を感じてはいたけれど、それと同時に嬉しさも募って遠くから見守るようにした。
だから光の異変にも気がつけなかった。
中学2年生。アタシ達は別のクラスになってとうとう互いに見る機会さえなくなっていった。アタシには少し不安があったけど、あの「光」なら大丈夫だろうと、アタシも「姉」ではなくなっていた―はずだった。
その年の夏の大会、バスケ部はインターハイ目前まで勝ち進んだと聞いた。もともとうちの中学は運動部文化部問わず全般で弱小校だったから、それは相当な快進撃だった。
アタシも光を褒めに行こうと思ったけど、会うタイミングもないなと思ってメールで祝福の辞(仮)を送った。
出場していたのかは知らないけど、あの練習ぶりからして流石にベンチ入りはしているでしょうと。
でも1日経っても、1週間経っても、1ヶ月…は待ってないけど返信を寄越さない。せめて「ありがとう」の一言でも送れバカ、と思ってアタシの部活が無い日に体育館を訪れた。
本当に光とはずっと話していないし、見てもいなかったから、すごくワクワクしていた。どのくらい大きくなったのだろう、バスケの腕前は? 声変わりはしたのかな? それよりも話したい気持ちが大きかった。体育館に近づくにつれてバッシュが床をこする音が大きくなって、アタシの鼓動も大きく、速くなっていった。
―でも。
『え?』
そこには「光」がいた。いや、「光」
男バスは練習のはずなのに光以外の部員の姿が見当たらない。
その時、たまたま体育館で自主練していた女バスの部員で知り合いを見つけた。
『…あかね。なんで男バスいないの?』
『ああ、ちょっとねぇ。男子揉めちゃってるみたいで…』
あかねは「聞いた話だから」と部外者のアタシにも丁寧に説明をしてくれた。
まず、光はキャプテンになっていた。そもそも光は1年生の頃からバスケの才能を開花させていたらしく、1年の秋からすでにスタメン出場を果たしていたらしい。
その実力から先輩同輩後輩問わず満場一致で光がキャプテンに抜擢された。
しかし、光はそれには向いていなかった。
光は所謂「完璧主義者」になっていた。しかもその度合が過剰すぎるらしい。確かに1年のときからのストイックさは異常ではあったけど。
だから彼の決める練習内容は過酷で、勿論、光は難なくこなしているらしいが他の部員は全くついていけない状態であったらしい。
インターハイ目前まで行ったこともあって、男バスは今までとは打って変わって部員もすごいやる気を出していた……それでも、という。
週2で女バスと男バスが体育館を半分ずつ使うらしいが、あかね曰く、その練習風景は地獄だという。
『ひかるっ! 一緒に帰らない?』
アタシはその夜、光を待ち伏せした。話さなきゃという使命感がアタシを待たせた。
『んあ? 美代か』
その男の子はかつての小さい「弟」ではなく、大きくて屈強な男子だった。
背はアタシよりずっと高く、見上げなきゃ顔は見えない。
声も昔の怯えた、無駄に高い声ではない。声帯が脱皮でもしたのだろうか、芯のある、強く低い声になっていた。
『あんた、キャプテンになったんだってね!』
歩いていても歩幅が全く違って、アタシは少し速歩きだ。
『ああ、だからなんだ』
話し方もぶっきらぼうで新鮮だ。中学2年生男子って感じ。
『いつも一人で帰っているの?』
光はこれには答えなかった。というより、聞いてもいない感じだった。
でも、アタシには無視された癇癪より久しぶりに話せる喜びの方が大きかった。
『あかねに聞いたわよ。男バスうまくいってないって』
『…あかね? あかね、あかね…。ああ、波山か……』
なのに…。なんで光の方は話を続けようとしてくれないの?
『なにか困ってるならアタシに相談しなさいよ?』
『なんでお前に? 部外者だろう』
『えっ……』
酷い言い方だった。聞き慣れない声はただの冷徹で、アタシを遠く夜の闇へ突き放そうとする。
『俺はもう美代の「弟」じゃない。男バスのことは男バスで処理する』
『え、いやそういうことじゃなくて……』
『お前たちのままごととは違う。俺は本気でバスケと向き合っている』
『な、なによ! その言い方!』
『じゃあ、お前たちは結果を残しているのか?』
『――――ッ!』
――「結果」
黙るしか無い。部活は怠けているわけじゃなかったけど、光ほどストイックでもない。
『もう一度言う。俺はお前の「弟」じゃない。これは俺とバスケ部の問題だ』
アタシはその場で立ち止まった。立ち止まろうと思ったわけではない。吹雪のせいで足が凍ってしまったのだ。
それでも光の速い歩みは止まることを知らない。
一人、弟のいない姉を置いてぐんぐん夜の闇の中を進んでいく。
視界はぼやけ始めて、もう、光の背中を認めなくなってしまった。
久しぶりに話せて嬉しいと思ったのはアタシだけだ。光は昔を1ミリも心の隅に残さないほど、「今」を必死に生きていた。
そこに昔の「姉」の入る余地なんてあるはずないんだ。
証拠にずっと見上げて話しかけていたのに、あいつは……あいつは……。
視界が、世界が潤いながら揺れて落ちて、アタシはその場でしゃがみ込んでしまった。
「バカ!」という心からの叫びはかすれ声になって、まともに音にならなかった。
それから中学の間は二人の間に音のやり取りはなかった。
中学3年生。
部活は引退し、とうとう本格的な受験期になった。アタシの第一志望は公立の中堅校で、6月の段階で合格圏内にある高校だった。少し離れているけど都会の方にあって……都会にあるから選んだ。
アタシの親と光の親は相変わらず仲が良かった。だから知ってしまった。
光の第一志望は守ノ峰高等学校。ここ周辺では群を抜く進学校。志望するだけで「頭いいね!」と褒められるレベル。
より田舎の方にあるのだが、校舎は綺麗で自由度も高い高校。偏差値も高く倍率も勿論高い。
少し前までは厳しい高校であったと聞いているが、いつかの生徒会長が相当な辣腕だったらしく校則を撤廃したとかしていないとか。
さらに光は全国模試で上位、1位を取ったこともあるらしく、かつての「弟」はアタシの知らない「光」になっていた。
その時には薄々気がついていた。
――只管後を追ってきた「弟」は、アタシが追いかける「存在」になっていた。
楽に受験を乗り越えようと思っていたけど、知った日から猛勉強を始めて最終的に偏差値は10上がった。それでもA判定なんて取れるはずもなく、崖っぷちの状態で試験に臨んだ。もともと勉強は得意な方じゃなかったから、あんなに勉強しても不安しかなかった。
その時知った。光の凄さを。光は相当な努力をして成果を綺麗に実らせた。
しかしアタシはどうだ。他人に感化されただけの虚構の努力を現実に重ねて、結果的に合格はしたけれども咲いた花は、実った実は美しかっただろうか?
分不相応な制服に身を包まれることに、罪悪感や焦燥感や何やらがその制服のあらゆるポケットに入っていた。
アタシは守ノ峰高等学校に入学した。
勿論光も入学していて、中学3年生の頃に同じクラスになって仲が更に良くなったあかねも入学していた。
1年生のクラスわけではその二人のどちらとも同じクラスにはなれなかった。
それより勉強の方が不安だったアタシにとってちょうど良かったのかも知れないけど。
そしてあの高校1年生の一学期中間考査だ。
アタシの返却された結果は中の上で、入試の結果の割には高くて一人で満足していた。
たまたま廊下に出ると、壁を見つめて呆然としている光を見つけた。
あれ以来まともに話していないけれど、とりあえず話したかったからさりげなく近づいていった。
『ど…どうなって……。え……。お、俺は…ど、どうして…』
彼は悲壮に蝕まれていた。青ざめた顔。冷や汗もかいている。明らかにおかしい。
『ちょ、ちょっと光。大丈夫?』
『だ、だいじょうぶな、わけがない……』
『え?』
光は急にバランスを崩し、壁の方へ倒れかけるが、自前の体幹のおかげか立ち直して、そのまま千鳥足で廊下を歩いていった。
その背中はあの闇夜にみた大きな背中ではなくて、今にもどろどろに溶け崩れてしまいそうな「欠落」だった。
彼が見ていたものは中間考査の順位表だった。
光の名前が載っていて、総合872点。
『さすが全国トップだなぁ』
アタシは544点だったから300点以上も差があることになる。殆ど同じ幼少期を送ったはずなのにこんなに差がつくものなのね。
が、上に二人いた。
『なみとみ…って読むのかしら。929点……。むすえ? 読み方がわからないけど……圧倒的ね……。984点。十教科もあって16点しか落としてないって、もはやホラーよね…。殆ど100点じゃない』
逆になにを間違えたのか聞いてみたい……。
『あっ……』
この時気がついた。光は「重度の完璧主義者」だ。自分のチームをバラバラにしてしまうほどの。
その次の日から光は学校に来なくなったと聞いた。
仕方なく何日か見舞い(?)にも行ったが反応は帰ってこない。そんな日々。
ここで初めて過剰な完璧主義は己の首を締めるのだとアタシは知った。
だから、高2に上がった時、同じクラスに嘗ての弟とそれを苦しめた元凶がいてかなり戸惑った。
光とは出席番号が近かったから比較的話すようにはなったけど、結江とは話す機会が、"きっかけ"がなかった。
といっても最初はそんなに話す"きっかけ"は求めていなかったけど、光と結江が揉めた話を光本人から聞いた時に心が変わった。
どうやら光はその後独りで立ち直って再び挑戦したらしい。「奈御富」はいつもどおり1位に君臨し続けたけど、結江は光を打ちのめしたっきり出てこないと。
確かにここ最近の順位表で結江の名前は見なかった。
『俺はヤツを今でも憎んでいる』
そして言葉を聞いた。
光の中で黒い炎が猛々しく燃え上がっていた。
『憎む』という感情は長い時をその人の中で生き続ける。長い時間その人を蝕む。
どうだ、アタシは。光にアタシは見えているか?
見えていないだろう。もうアタシは姉じゃない。光がアタシを追う理由はない。
―だから羨ましかった。
―だから恨めしかった。
―嗚呼、これは嫉妬だ。女の嫉妬だ。
アタシは昔から男っ気が強かったから、生物学的には女でも中身は本当は男なのだろうと思っていた。でも、成長する光を見たら……そうじゃなかった。
心に悲痛を覚えた。
―たった一回で、たった一回のテストだけで。
―アタシのほうが光とずっとずーっと、永くいたのに。いたはずなのに。姉で弟だったはずのに。
―なのにたった一回で光の永くて強い感情を結江は独り占めにした。
光に「ヤツ」と呼んでもらえるあいつのせいで気がついてしまった。
負の感情であっても、光に何か向けられているだけで本当に本当に……。
どうしてアタシを見てくれないの。どうして関わったこともないあいつなの。
ねぇ、どうして、よ…。
ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるいよ。
これを「嫉妬」と呼ぶんだ。
それを「恋」と呼ぶのかはまだアタシにはわからない。
けど、
嗚呼、アタシが「光」を追っているんだ。
それからアタシはなにか結江と接点を持ちたかった。話すきっかけを。
たまに結江と話しているから、あかねを通して話す作戦もあったけど、あかねにあらぬ誤解をされたくなくて却下。というかあかねと結江も別に親しくて話しているわけではないと思うし。
アタシは体育祭実行委員、彼は全員リレーのアンカー。この理由も弱かった。そもそもアタシの走順は24番でアンカーとは離れすぎている。
アタシは平田くんとは違ってわざわざ声をかけにいくタイプでもなかったし。
そもそも結江はあまり同じクラスの人と話さない。休み時間だって自分の席から殆ど動いていない。
席も教室の端の列だし、存在感も薄すぎる。
でもよく観察すると見た目は悪くはないんだ。一度、あいつの笑顔を見てみたいとも思ったほど。まあ、光には負けるけどね!
背も高いほうだし、あと少しの愛嬌と存在感があれば人気者になってもおかしくない。それに隠されたポテンシャルも高い。
実際、アンカーに選ばれた後、クラスの何人かの女子は結江の噂を一瞬だけしていた。ほんと一瞬だけだけど。
なのにあいつは常に黙っている。意味分かんない。
観察すればするほどイライラしてくる。アレルギーになりそう。
光が全力で勝負を挑んで完敗した相手。そして自覚はないだろうが光に残酷な仕打ちをした結江。
50m走も結江は本当は7秒6であったらしい。しかし計測した光が不正を働いてクラスのアンカーに仕立て上げ、実際、練習では抜かされたけど普通に速かった。
しかも不正事実を知ったのがこの練習の後だったからバイアスもかかっていない。
だからあいつはおそらく、理由なんて知れないけど、あらゆるところで実力を隠しているんだ。
――あいつは常に不誠実で、常に周りを欺いている。
そして今日、いい"きっかけ"を得た。
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