第3話
あたりはもう暗くなる準備を始めていた。
もと来た道を戻る。平らな石の場所についた頃にはもう空は紫色だった。しかし迷うことはないし、恐怖などは微塵も感じなかった。
五年前、なぜ僕は恐怖を抱いていたのだろう。もう僕はヤマの恐怖を克服していた。それなのに胸の澱みは消えていない。畑道を歩きながら考える。何が胸に引っかかっているのだろうか。僕は何をすべきなのだろうか。
家の前にはばあちゃんがいた。僕の姿を見つけると奇声を上げて僕の手を握りしめた。
『どこにいってたの、こんなに遅くまで、また迷子になったと思ってじいさん探しにいっちゃったのよ、本当に心配したんだから、じいさんに早く伝えないと、じいさん足悪いし。』
『ばあちゃん落ち着いて!』
ばあちゃんの手は熱い。
『今から探しに行くからばあちゃんはここで待っといて。』
ばあちゃんはまだ気が動転していたがしっかりとうなずいた。
懐中電灯を受け取り畑道を走り出す。僕も気が動転していた。頭の中がぐるぐるしている。じいちゃんは足が悪い。もし転んでしまったら、もし死んでしまったら、嫌なことばかり思い浮かんで泣きそうになる。唯一の救いはじいちゃんの行き先がわかることだった。
僕が五年前にじいちゃんに見つけてもらった場所。
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