第57話.一ノ瀬龍雅2(※視点変更注意)
俺はそのころから変わってしまった。
それでも超能力の訓練だけは怠らなかったので、超能力の技術だけは益々上がっていった。
それが中学3年生にもなると、俺はヤンキーと同じようなことをやるようになった。
気の弱そうなやつを超能力の力で脅して、金をむしり取る。
これを毎日続けていた。
そんな時だった。
いつも通り眼鏡をかけた高校生を脅して諭吉を1枚ほど手に入れ、ほくほく顔で路地裏を抜けたその時だった。
「お前、そんなことやってて楽しいか?」
「!?」
ドキッとして、声の聞こえた方向に顔を向ける。
「いや、そんな焦ったような顔するなって。別に通報しようとかは思ってねぇよ」
はぁ?
なんだこいつ……。
でもなんかムカつくな。
そんなことを思った。
「説教とかうぜぇんだよ。帰れやクソ偽善者!」
俺は殴り掛かる。
しかし……。
「――⁉」
俺の攻撃はひらりと引いて躱され、逆に両腕を掴まれた。
「落ち着けって。俺にそんなつもりはねぇ。ただ、そんな面白くないこといつまでもやってても時間の無駄だってことを教えたかったんだ!」
「やっぱり説教じゃねぇか!」
俺はテレポートで拘束から逃れて背後を取った。
しかし……。
「あー、言われてみるとそうだな」
そんなことを言いながら、まるで後ろに目が付いているかのように回避する。
クソ、手を抜いているつもりはないのに、なんでこんな鮮やかに……。
圧倒的な力量差に心が折れて、俺は動きを止める。
「えーっと、その、なんだ。要は俺が言いたいことは、俺の下に着かないかってことだ」
「はぁ!?」
俺が人の下に着くなんて、当時は考えられなかった。
そしてそれ以上に意味が分からない。
説教したかと思えば、下に着かないかって、脈絡がなさすぎる。
「ふざけるな! 誰がてめぇみたいなのに従うかってんだ!」
当然俺はそれをはねのける。
力量差は分かってる。
それでも、俺は3度目の攻撃を仕掛けた。
しかし、今度は今までのようにのらりくらりと攻撃を避けるだけではなく、反撃してきた。
目にも見えないような速さ。
俺はそれにあっさりと捕まり拘束された。
「ぐっ……! 超能力者だったのかよ……!」
初めて感じるような圧倒的屈辱。
ギリギリと歯を食いしばる。
「分かるよ。超能力者だと、周りのやつを見下したくなるよな。でも、それじゃあすぐに孤独になってしまう。それは、辛い」
……!
俺は怒った。
あまりに図星過ぎたからだ。
しかし、怒りの言葉は口から吐き出せなくて……。
「っ……」
俺は物心ついて以来、初めて涙を流した。
「こんなこと言う俺もただのチンピラでよ。下に着けってのは言い方が悪かったな。そうだな……」
その人は、随分と長い時間頭を悩ませて……。
「俺たちの仲間に、ならないか? どうせ悪いことをするなら、もっとデッカイことをするんだ。その方が」
――楽しい。
その言葉に、俺は何故だか初めて心を動かされたような気がして……。
「分かりましたよ」
こう、答えた。
これが、
----------
雄吾さんに言われるがまま、俺はその仲間と言うのになった。
雄吾さんが仲間と言った人たちこそ、ゾディアックの初代隊長たちだった。
そのころのゾディアックは、結成したばかりだったし、何というか秘密結社と言うよりは、本当にチンピラ集団の延長線上にあるようなものだった。
だからやることも、せいぜい小さなスーパーからモノを盗む程度のことだった。
何がデッカイことだよ! と俺は突っ込みたくなったが、でも一人ぼっちの頃よりは、「楽しい」というのは確かだと思った。
ゾディアックに入ってからは、学校に行きながら、暇なときにゾディアックの仲間の元に集まる。
という生活になった。
こんな生活を続けて……。
俺は中学を卒業した。
それまでに、ゾディアックは急成長し、どんどん大きな犯罪を犯すようになっていった。
この組織の代表? のような存在である「
ゾディアックを今、三大秘密結社に数えられるような規模に成長させたのは、誰でもないこの人にしかできなかっただろう。
と、同時に、今同じく三大秘密結社に数えられているハーラル、レイスといった組織も顔を出し始める。
それによって、超能力者の犯罪数が激増したことにより、今のヒーローの元となる組織である、超能力警察隊が結成された。
1990年ごろに世界に生まれ始めた超能力者が、年を重ねていき、世に出るようになったのである。
この時期から、ゾディアックは他の秘密結社やヒーローと小競り合いをするようになった。
ある日、俺もパトロール中のヒーローを襲撃する作戦に参加することになった。
そのころ俺は、雄吾さんの右腕的な存在になっていたから、雄吾さんと一緒にヒーロー狩りに向かった。
初めての、超能力者との戦闘を前提とした任務であったが、俺に緊張感は全くなかった。
それもひとえに自分が今まで積み上げてきた技術のお陰だろう。
失敗する未来など微塵も想像しなかった俺は、他愛ない話を省吾さんと交わしながら、街を歩きまわってヒーローを探していた。
当時はヒーローの人数がそこまで多くなかったので、見つけるのは中々骨が折れた。
半日ほど歩き回って、もう帰りたいと思い始めたころ、ヒーローをついに発見したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます