第51話.戦線復帰
え!?
言われた言葉の意味を理解するのに、非常に時間を要した。
そして数秒かかってようやく……。
もしかして俺、今告白されてる?
理解する。
正直めちゃくちゃ嬉しい。
俺は自慢じゃないが、彼女ない歴イコール年齢の童貞だからな。
なのに急にこんな星川みたいなかわいい子に告白されるって……。
いや、落ち着け、あまり舞い上がってもしも告白の意味の好きじゃなかったら、喜んだ分ダメージもデカい。
「えーっと……」
結局俺は反応に困って、こんな何の答えにもなっていない曖昧な言葉を返す。
「最初の頃からさ、蓮君は優しかったよね。覚えてる? 最初の任務の時、ヒーローと出会って、私の事を逃がしてくれたよね」
あー、あの時か。
あの頃は星川が実力を隠していることを知らなかったんだよな。
今はそれを知っているから、星川より弱い自分が星川を守ろうとしたのが非常に滑稽で恥ずかしい。
思い出したくない過去だな。
「その時は、ただヒーローの強さを知らずに正義感を振りかざしているだけだと思った」
あー、俺がヒーローに勝てると思ってタイマンに臨んだと思ったのか。
確かにヒーローの正確な力量ってのは分かってなかったけど、自分の実力で勝てるほど甘いとは思ってないぞ?
そこは少し心外だ。
そんなにアホなやつと見られていたのだろうか。
「でも、一緒に過ごしているうちにそうじゃないことが分かったの。蓮君は現実がちゃんと分かってる。でもいつも分かったうえで無謀なことをしようとする」
無謀ってのは酷いな。
まあ傍から見ればそう見えるか。
俺としてはいつも勝算があって動いているつもりだ。
ただ、それがいつも低いだけだ。
「だからさ、ただ優しいんだなって思ったの。それから、蓮君のことを好きになっていった」
それは……。
「ちょっと違うよ。俺はただ自分のためにやってるだけだ。自分のせいで誰かの身に危険が起こるのが怖いんだ」
言わなければいいのに、つい口をついて真実を口にしてしまった。
褒められると、自分にとって都合の悪いことを吐いてしまう。
俺の癖だ。
「それでも凄いよ。普通は自分の身に危険が起こるのと、咎を背負う事、どちらかを選ばなくちゃならないなら後者を選ぶ」
そんなもんなんだろうか。
自分と違う考えはよくわからない。
「だから蓮君が私を守ろうとしてくれるのは嬉しいけど、理由は違えど私も同じなんだよ。蓮君が好きだから……守りたい。そのためなら危険は冒すよ」
それを聞いて、俺は息が詰まるような感覚を覚えた。
ヒーローとゾディアックの大規模な戦いが現在進行形で行われてる中、俺は星川に告白されて、こんなドキドキするようなことを言われて……。
頭が真っ白になる。
色々言うべきことはあるはずなんだけど、結局頭が真っ白な中でも最後に残った漠然とした焦燥感に、俺はこう言った。
「じゃあ一緒に戦おう」
「うん」
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俺はこうして再び戦場に舞い戻った。
今度は星川と一緒だ。
お互いにカバーし合って死なないことを第一に戦う。
あと一歩で敵を倒せそう! などという場面も、深入りしないようにするつもりだ。
そもそも、俺たちが真ん中でがっつり戦闘に加わっていては、中央の方で大立ち回りを演じている新田さんや一ノ瀬隊長、そして桐原さんの迷惑がかかる可能性がある。
だから、俺たちは敵を数人引き付ける程度の立ち回りがちょうどいいはずだ。
星川を殺させるわけには行かないし、俺も星川のあんな話を聞いた後じゃ死ぬわけには行かないしな。
そんなことを考えると、さっきの会話が頭によみがえる。
ダメだ、今はそんな浮ついたことを考えている場合じゃない。
「右から来るよ!」
頭をリセットしよう。
そう思った瞬間だった。
突如星川から声がかかり、人影が右側からいきなり現れる。
マジかよ……!
俺は星川の警告のお陰で間一髪回避することに成功する。
そのヒーローは追撃してこようとするが、ここは星川がカバーに入ってくれてなんとか危機を脱する。
一息ついて、パニックになりかけた脳を平常に戻すと、俺も星川と戦っているヒーローへ攻撃を仕掛けようとする。
しかし……。
「――新手⁉」
突如背後から微かな足音が聞こえてきて、それを聞き逃さなかった俺は、身を屈めながら背後に向かって回し蹴りを繰り出す。
俺の頭の上には突き出された腕と、そこに掴まれていたスタンガンが映る。
と同時に足に確かな衝撃がやってくる。
――やったか!?
だが、そう思って敵のヒーローを視認すると……。
「くっ……」
俺の攻撃は足で止められていた。
さらに同時に飛んでくるパイロキネシスによる攻撃。
流石にそれくらいは回避できる。
しかし、どこからか何か物体が俺の頭目掛けて飛んでくる。
反応は出来ていなかったが、動き回っていたのが功を奏して、激突は避けることができた。
流れ弾か?
いや……!
「パイロキネシス!」
2人目!
2人目の存在を僅かながらも予感していたことと、自分でも驚くような反応ができたおかげで、何とか攻撃を回避。
クソ、流石に本部ヒーロー2人を相手にするのは俺には荷が重い。
とても10秒と持つ気がしない。
「
俺はたまらず大声でそう叫びながら、テレポートを使った。
星川の方の状況は確認する余裕が全く無かったので分からないが、きっと星川なら上手く合流してくれると信じている。
あまりに他力本願過ぎて情けないが、残念なことにこれが俺の実力だ。
ゾディアックに入ってから、あり得ないようなスピードで成長してきたと思う。
しかしそれでも0.2人前が、せいぜい0.7人前くらいになった程度だと自分では分析している。
俺の読みでは、敵ヒーローは俺(たち)を追ってくるはずだ。
敵は出来る限りこちらの戦力を削りたいだろうからな。
だから俺たちは、上手く逃げて、こいつらを撒ければ大成功という訳だ。
逃げ切れるか、捕まるか。
そこが勝負になりそうだ。
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