第22話.激闘! 対ヒーロー

 新田さんと星川がそれぞれヒーローたちと相対する中、俺も自分の相手を見据え戦闘を開始した。


 まずは遠距離での打ち合いから。


 とは言ってもこっちから打つのは最低限。


 基本は被弾しないようにすることと、敵のテレポートを見逃さないこと。


 余裕があれば打ち返す程度で、生き残ることを優先する。


 実際、俺がこいつを倒す必要性はないのだ。


 新田さんが勝利してカバーに来れる状況まで俺がこいつを足止めすることさえできればこちらの勝利は決定的。


 倒しても問題はないが、それ以上に今俺に求められているのはこいつを足止めすること。


 倒して自分の力を証明したい、という気持ちが逸るが、それは理性で何とか押さえつけて冷静に。


 しばらく打ち合いを続けていると、敵がテレポートを発動する。


 横移動のためのテレポートか、はたまた詰めてくるためのかテレポートか。


 大丈夫、視線で判断したところ移動先は……。


「ここ!」


 打ち合いの最中にこっそりと集めていた瓦礫をサイコキネシスで予測したヒーローの移動先に飛ばす。


 俺の読みは俺の後ろ20m辺り。


「ぐっ……!」


 よっしゃ命中!


 バカめ、しびれを切らしたな。


 数発ばらけさせる様に放った瓦礫の一発が敵の肩に命中する。


 初めて超能力者相手に攻撃を当てることができた。


 しかしやはりあの程度の小さな瓦礫では致命傷には程遠い。


 せいぜい軽い痛みで気を散らせることぐらいが関の山だろう。


 敵も冷静にパイロキネシスで視線を読ませないようにしてからのテレポート。


 今度は読めない。


 とはいえ、パイロキネシスによる妨害はこちらだけでなくヒーロー自身にも影響してしまう。


 そのため炎を放った方向には移動できない。


 移動する方向は後ろ以外ないだろう。


 序盤、敵の軽率なテレポートを読んで主導権を握ることに成功した。


 できれば一気に片をつけたいところ。


 やられないことが優先だが、敵のヒーローには今まで戦ってきた敵ほどの強さは感じない。


 もちろん自分より格下などとは思っちゃいないが、が起きる程度の差しかない。


 だったら、攻撃は最大の防御の法則が通用する。


 よってここは詰める!


 俺はテレポートを使い、敵のヒーローが転移したと思われる場所に移動する。


 一応転移した瞬間に居場所を特定されて、一方的に攻撃を受けるなんてことにならないように、遮蔽物なんかにすぐ隠れることができる場所を選ぶ。


 さて、ヒーローは何処だ?


 できる限り早く敵の姿を捉えなくてはと周囲を見渡す。


 いた……!


 しかし、ヒーローの姿を視認したと思った瞬間、ばっちりと目が合ってしまう。


 やば……。


 俺は慌てて都内の雑居ビルの屋上へテレポートする。


 戦いは大体高いところが有利だ。


 理由は色々あるが、辺りを一望できるという事が一番大きい。


 超能力者同士の戦闘では、普通の戦闘以上に敵の位置を把握することが重要になってくる。


 このメリットは計り知れないほど大きい。


 しかし、こんなことは俺も知っているくらいだから、ヒーローもよくわかっている。


 少し離れた雑居ビルの屋上にて再び交錯する視線。


 だが今度はすぐにテレポートを使うことは無い。


 お互い迂闊に近寄るのはリスクが大きすぎると分かっているからだ。


 さて、どうしたものか。


 今のところは多分互角の戦闘を演じることができていると思う。


 超能力の技術は恐らくほぼ互角。


 となれば、勝敗を決するのは使い方と集中力。


 一瞬の油断もできない。


 そしてその上で相手の意識の外からの攻めをする。


 ……っと!?


 しかし、そんな落ち着いて考える時間など与えてはもらえない。


 敵がパイロキネシスを発動。


 テレポートか?


 だがここでのテレポートは愚策だぜ。


 俺の視線を遮るようにパイロキネシスを使ったから、こちらに詰めてくることは無い。


 ならば俺は左右を警戒すればいいだけ。


 しかし投げ物がない。


 ここは左を決め打ちして距離を詰める……いや!?


 自分の中にわずかな気の迷いが発生してテレポートの発動が遅れたのが逆に功を奏した。


「フェイント!?」


 あの場面でのパイロキネシスはテレポートのための布石だと勝手に思い込んでしまったが、ここでまさかのフェイントかよ。


 俺にここで隙ができる。


 その一瞬の隙をヒーローは逃さなかった。


 こんどこそ正真正銘のテレポートで俺の背後を取る。


 パイロキネシスで当てる余裕がない。


 しかし、俺も何とかテレポートで逃げずに踏みとどまる。


 逃げのテレポートは基本的に自分が先に打つと敵に移動先を読まれて一生追いかけられる。


 そのためここでテレポートを使うと戦況が一気に劣勢になってしまう。


 だからここは敢えてテレポートを使わずにテレポートしてきた敵と近接戦闘で決着をつける!


 まずは転移してすぐに繰り出してきたスタンガンを避ける!


 そのまま流れるように繰り出されるパイロキネシスも飛び退いて避ける!


 ここで俺も反撃だ!


 まずは前に飛び出すようなフェイントを一瞬入れる。


 正面からの攻撃、と勝手に体が判断してしまっただろう敵のヒーロー。


 身構えるような仕草を見せて、攻撃の手が緩む。


 そこで一気に側面へ回り込む。


 そのままパイロキネシスの炎を纏わせた右腕を薙ぐように振るう。


 慌ててパイロキネシスを纏わせた左手で受けるように応戦するヒーロー。


 今だ!


 ここしかない、と踏んだ俺はさらに渾身の攻撃を繰り出した。

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