超能力者高校生の俺は、悪の組織の構成員！

第23話.激闘決着

　右手でのパイロキネシスを使った攻撃は防がれた。

　まだまだ!

　さらにここで左手でも同じような攻撃!

　しかしヒーローはギリギリながらもこれに対応してくる。

　クソ、これも防いでくるか。

　でもそれも織り込み済みなんだよ!

　俺だってこの程度で倒せるなんて思っちゃいないさ。

　だが……。

　今はお互いにパイロキネシスを乱打したことで視界が非常に悪い。

　だからこの攻撃は防げない!

　俺の放つ渾身の攻撃とはまさにこの攻撃の事。

　これが通らなかったら……。

　いや、やめておこう。

　今は成功するビジョンだけを見据えて……。

　俺は全身全霊でサイコキネシスを発動する。

　直後にさらにカモフラージュの右ストレート。

　ヒーローは態勢を立て直そうとこれをバックステップで交わして反撃をしようとパイロキネシスを発動しながら向かってくる。

　その途中で……。

　ドッ……!

「ゴフッ……!　……!?」

　固いもの同士がぶつかる鈍い音。

　そして敵ヒーローの乾いたうめき声。

　攻勢に転じようとしたヒーローの体はたたらを踏むことになる。

「ッし!」

　俺の考えた策がぴったりとハマった。

　ヒーローの見せた、勝負を決定づける致命的な隙。

　戦闘の勝利が決定的になり、俺は顔をほころばせて歓喜の声を上げる。

　戦闘中に喜ぶなどありえないことだが、今回ばかりは仕方ないよね。

　もちろん、流石に途中で手は止めたりはしない。

　それでも、俺が喜んだことで一瞬の時間が生まれたようで、ヒーローが慌てたように顔を上げる。

　だが、それではもう間に合わない。

「遅ぇ!」

　パイロキネシスで敵の視界を妨害しつつ、頭をガシッと掴むと俺は情け容赦なく顔面に膝蹴りを決めた。

「ン゛ン゛ーーー……!」

　くぐもった僅かな呻き声。

　しかし、すぐに力を失って、地面にだらりと力なく横たわった。

　俺は数秒その場に立ち尽くし、初勝利の喜びを噛みしめるように拳を握った。

　勝負は――決した。

　－－－－－－－－－－

　その後俺は、倒したヒーローを引きずりながら半壊した雑居ビルを探索していた。

　何故こんな一刻も早く新田さんの方に行かなくてはならない時に、そんな悠長なことをやっているかというと、あるものを探すためだ。

　単純にヒーローを殺せるものを手に持っていなかっただけなのだが、今回は敵のヒーローを軽傷のまま気絶させることができた。

　なら、ゾディアックのために捕らえて持ち帰るのがいいだろう。

　……男の俺が男のヒーローを持ち帰るというこの言葉だけでは、なんだか腐っているお姉さまを喜ばせそうな感じだが、もちろんそんな気持ち悪い目的のためではなく、情報収集のためだ。

　しかし、ここで問題なのだが、気絶してるこのヒーローがもしも放置している間に目覚めてしまった場合だ。

　しかも厄介なのが、超能力者だから手足を拘束した程度ではダメな点だ。

　まずテレポートをさせないために視界をふさがなくてはならない。

　もちろん目隠しなどではだめだ。

　手を縛って手で外せないようにしてもダメだ。

　超能力者はサイコキネシスで体一つ動かさずにものを動かせるからだ。

　そこで俺が考えたのは、狭くて暗い場所に閉じ込めること。

　例えば掃除ロッカー。

　掃除ロッカーには人が1人入れる程度の空間があるし、扉の方を下にして横に倒しておけば超能力者といえども脱出は不可能なはずだ。

　ということで俺の言うあれというのは掃除ロッカーだ。

　雑居ビルなら掃除ロッカーの一つや二つがあると思うんだが……。

　そう思ってさらに下の階へと降りていく。

　すると……。

「お、あったあった。ようやくだ」

　しばらく歩き回ってようやく掃除ロッカーを見つけた俺は、引きずり回していたヒーローをその中に投げ捨てるように突っ込んで、ロッカーを下向きに倒す。

　ふぅ、これでひとまず脱出される心配はなくなった。

　となればさっさと新田さんの元に向かわないとな。

　俺はテレポートですぐに外に出る。

　その後すぐに新田さんの探そうと周囲をぐるりと見渡すと……。

「無事だったか。よく生き残った。敵はどこにいる?」

　すぐ近くにたまたま新田さんがいて話しかけられる。

　その数メートル後方には、脳天にナイフが突き刺さったヒーローの姿。

　新田さんも勝利していたか。

　まぁこの人が負けるビジョンが見えないもんな。

　本当にめちゃくちゃ頼もしい。

　でも……。

「いえ、敵はもう倒しました」

「な、なに……!?」

　いや、そんなあからさまに驚いたような反応しないでくれませんかね。

　確かにまさか自分でも勝てるとは思わなかったし、正直運もあった。

　でも俺が勝つことは不可能って程の実力差はなかったと思うけど……。

「い、いや、よくやった。信じていたぞ!」

　いや、そんな今更言われても……。

　まぁここは素直に……。

「ありがとうざいます!」

　喜んでおくべきだろう。

「しかし、浮かれてる暇はないぞ。俺たちが戦闘してる間に星川たちの戦場ははさらに向こうの方へと移動した。邪魔者は消えた。一刻も早く当初の目的を完遂するぞ!」

　そうだった。

　急がないとな……。

「はい!」

　俺は不安になる心を押さえつけるように、力強く返事をした。