第4話.一つの終わり

 木崎さんと会うため東京に1人で行ったその翌日、俺は夏休み初日だというのに学校に来ていた。


 そして昨日同様担任と向かい合っている。


 だが、今日の俺は昨日の俺とは違った。


「の、能見……。い、今なんて……」


「だから俺、超明学園を受験したいんです。退で」


 超明学園というのは、木崎が教えてくれたゾディアックが運営している私立高校の事である。


「い、いやいや、確かに超明学園はそこまでレベルが高い訳では無いが特待は……」


 言葉を濁してはいるが、つまり無理だからやめておけと言いたいんだな。


 まぁ本来なら特待生というのは、成績オール5に近いとか入学試験で全教科満点に近いような点数とかじゃなきゃ無理らしいしな。


 先生の気持ちも分かる。


 だがこれだけは絶対に譲れない。


 俺はもう昨日で決心したんだ。


 親だろうと担任だろうと絶対に説得する……!


「お願いします! 例え落ちても公立がある。どうしてもチャレンジしたいんです!」


 こう言えば先生も頷くしかないはず。


 多分先生は俺が特待に拘るのは家庭が貧乏だから一般の学費は払えないのだろうと考えているはずだ。


 実際は俺の家は金持ちとは言えないが、決して貧乏でもない。


 だが、家庭の事情となれば、先生も深くは尋ねられないはずだ。


「う……! わ、分かった。まぁそこまで本気なら」


 よし、成功だ。




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 その後、夕食の時に親も似たような感じで説得できた。


 親は、金のことは気にするなと言ってくれたが、こちとら別に遠慮している訳じゃない。


 必死の形相で勉強を頑張ると言い続けたら普通に分かってくれた。


 まぁここで落ちても普通に公立を受ければいいからな。


 親も、落ちてもそこまで大変なことになる訳じゃないし、やりたいようにやればいいとでも思っているのだろう。


 ま、本当は既に俺の道は決まってるんだけどね。


 さて、俺は勉強なんかより超能力の練習でもしますかね。


 そうして俺は、親が部屋に入ってきた時のために机に勉強道具を出しながら、今までより一層超能力の練習に励むようになった。


 幼少期の頃と比べると、伸びのスピードはかなり落ちたものの、それでも頑張って練習すればまだまだ伸びる。


 俺はこの半年、そんな生活を続けながら超能力も更なる成長を見せ、入試の時を迎えた。


 入試は全教科100点にしてくれるとは言われたが、それでも実際に会場に来てテストは受けなければならないようで、面倒だがわざわざ東京まで足を運んだ。


 ちなみにテスト結果はボロボロ。


 どの教科も選択問題や、基礎的な問題しかできず、赤点ギリギリくらいの点数だ。


 まぁノー勉だし仕方ないだろう。


 それでも、当然結果は合格。


 親も担任も非常に驚いていた。


 あの反応は酷いだろと思う。


 こうして受験は終わり、卒業式を迎え、俺の中学校生活は幕を閉じた。


 クラスメイトは、友達と別れるのが寂しいとかで涙を流していたが、俺はかなり晴れやかな気分だった。


 決してボッチだったからとかではない。


 決してボッチだったからとかではない。


 そして迎える在校生よりも少しばかり早い春休み。


 寮生活をするからと言って、必要な物は別に大してないから、のんびりできた。


 それに超明学園は俺みたいな人間をゾディアックに引き入れるために設立された学校なので、外出などもかなり自由に許される。


 普段の外出が許されなかったらゾディアックとしての活動が出来ないからな。


 何か忘れてしまったら現地で買えばいいということだ。


 そんなこんなで3月が終わりを迎え……。

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