大塚くんと嘘告白後3日

 嘘告白をしてしまった次の日の朝、私はかいくんにちゃんと謝ろうと思い、いつもより1時間早く大塚家に向かう。

 かいくんが私を避けて、普段より早く家を出る可能性が高いと思ったからだ。


 1時間後、玄関の扉が開く。

 しかしかいくんではなく、かいくんのお母さんだ。


「明楓ちゃんごめんね。かいと、今日は休むみたい」

「そうですか……」


 私のせいだ。

 きっとそうだ。

 明日こそは謝ろう。



 次の日も家を1時間早く出る。

 しかし、かいくんは学校をまた休んだ。

 明日はきっと出てくるはず。



 その次の日も家を1時間早く出る。


 30分後、玄関の扉が開く。

 かいくんだ。


「おはよう、かいくん!」

「どちら様でしたか?」


 真顔のかいくん。


 昔にもこんなくだりをしたことはあった。

 でも、これはそうじゃないとわかった。

 悲しいけど、こんな風になるのは自業自得。

 失ってしまった信頼はこれからまた築いていこう。


「嘘の告白なんてしてごめんなさい! すごい後悔してる。許して欲しいなんて言わない。ここからまた、かいくんに信頼してもらえるように頑張るから!」


 本当は好きだってことを伝えることもできた。

 しかし、私にそれは許されない。

 臆病な私は汚い手段で、かいくんも私が好きだと知った。

 私はカンニングをしてしまった。

 恋をする誰もが欲しい答えを手に入れてしまったのだ。

 そんな私がもう一度告白するのは卑怯だ。

 私とかいくんが恋人になるには、かいくんから告白してもらうしかない。

 今はもう私のことを好きじゃないだろうけど、必ずまた私を好きになってもらう。

 そして、本当はずっと好きだって伝えよう。


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 俺は明楓に嘘告白をされた次の日、学校を休んだ。

 身体は健康だが、心の方は重症だ。

 初恋の失恋に効く薬など無い。

 自然治癒任せだ。

 時間を置き、経過観察をするしかない。


 あの時、「何だ、ドッキリかよ!」と笑えていれば良かったのか?

 もっと上手く立ち回れたかもしれない。

 大人だったらそうするだろう。

 でも俺は、自分の気持ちに嘘をつける程大人ではないし、そうはなりたくない。

 それに、明楓やクラスメイトがしたことは到底許せなかった。

 俺は昔から人を不幸にするドッキリや笑いが嫌いだ。

 あんなもの、誰も幸せにならない。



 次の日も学校を休んだ。

 1日休むと、更に学校に行きづらくなる。

 クラスで明楓の嘘告白が広まってるかもしれない。

 それに、明楓と会ったらどんな顔をすればいい。

 俺は明楓の告白に「喜んで!」と言った。

 でもあの告白はドッキリで、明楓は俺を別に好きじゃないらしい。

 俺は幼馴染と言う距離感に騙されていたのか?

 そうだ……きっとそうに違いない。



 次の日の朝、いつもより30分早く家を出る。


「おはよう、かいくん!」


 エスパーかよ。

 神崎を避けようと30分早く出たが、読まれていたらしい。


「どちら様ですか?」

「ひどいなぁ!神崎明楓です。2日休んだら忘れちゃったの?」


 神崎は嘘告白前と何ら変わりない。

 やはり俺は弄ばれていたのか。


「神崎さんでしたか。おはようございます」


 自分で呼んでいて、凄い呼びにくい。

 苗字でなど、今まで1度も呼んだことがない。

 苗字で呼ばれたからか、他人行儀な態度だったからか、神崎は困った顔をしている。


「嘘の告白なんてしてごめんなさい! すごい後悔してる。許して欲しいなんて言わない。ここからまた、かいくんに信頼してもらえるように頑張るから!」


 騙されるな、大塚海都。

 きっとまだ俺で遊び足りないんだ。

「優しいかいくんならきっと許してくれる」そんな風に思ってるに違いない。

「女という生き物は平気で嘘をつく」これは、あながち間違いじゃないらしい。

 俺は何度も騙されない。

 そうだ、女性とは深く関わらないで生きよう。

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