大塚くんと自己紹介

 男女間での友情は成立するのか?

 これは人類にとって永遠のテーマだ。

 個人的に答えは導きだせている。


 成立しない。


 男同士での友情はどこまでいこうと友人と言う関係に変わりない。

 しかし、男と女となると関係性が変わる可能性がある。

 それは友人から恋人になるのか、はたまた愛人になるのか。

 恋にも愛にも変わることが可能なのだ。

 もし仮に、本当に男女間で友情があるとするのならば、芸能人の浮気報道を見かけることなどないはずである。

 既婚者ならば、異性とは友情以上の感情を築いてはならない。

 結論を出してはみたが、女性と深く関わるつもりのない俺からしたらどうでもいいことだった。


「かいくん、入学式終わったよ」


 省エネモードで式を過ごしていた俺を起こす神崎の声。



❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎



 俺のクラスは1年9組だ。

 とても不本意だが、神崎と同じクラスである。

 俺は同級生ガチャでURを出してしまったらしい。

 リセマラができるのなら何度でもするが、現実は1回限りである。


「おーい。席着けよ」


 その声の主は黒髪ストレートのすらっとした美人だった。


「このクラスの担任になった、峰智代みねともよだ。私からお前らに言う事は、私や親より先に死ぬようなことだけはするな。自殺なんて以ての外だ。死との距離感を見誤るな。常に遠くあれ。人は簡単に死ぬ。死んだらそれでおしまいだ。それ以上もそれ以下もない」


 教室は静寂に包まれる。


「あと最後に一つ。過去に囚われて、今を楽しまないのは損だ。青春を謳歌しろ」


 かっこ良すぎるぜ峰先生。

 美人ってだけじゃなさそうだ。

 峰先生の言葉は間違いなく全員に届いただろうが、この後一人一人自己紹介するような空気じゃないぞ。


 ーーSHINE♪ーー


 静寂の中響く通知音。

 俺の近くで鳴ったな……。

 残念ながら俺のスマホであった。

 しかし不可解だ。

 神崎と家族くらいしか登録してないはずで、他にメッセージなど送ってくる奴なんて……あ、まさか大杉の野郎か。

 大杉の方を見ると目を逸らしやがった。

 今、メッセージを送る必要なんてないだろうが!

 あいつ実はサイコパスなのか。


「誰だ?私の有り難い話に水を差した奴は?その辺の奴だな?」


 大杉に報復するのは決定事項として、他のクラスメイトに迷惑かけるし男らしく謝るか。


「俺です。電源切り忘れてました。ごめんなさい」


 席を立つと同時に謝る。


「まぁ、初日だし寛大な私に免じて許してやる」


 寛大な()峰先生によって無罪判決が下された。

 実行犯の大杉を司法取引に出す必要は無かったみたいだ。

 事なきを得て座ろうとした瞬間。


「よしお前、前に来い。そのまま自己紹介して貰う」


 まぁ、どうせ全員するのだから最初も後も一緒だ。


「大塚海都です。1年間よろしくお願いします」


「ん?それだけか?」

「ダメですか?」

「ダメってことはないけど……味気ないな。」


 簡単に自己紹介を済ませて戻る。

 目立つ必要はないから、これで充分だ。


 他のクラスメイトが自己紹介を済ませていく。

 歌を歌いだす奴もいれば、モノマネをする奴もいた。

 中には、変顔をします!何て言う奴もいた。


「神崎明楓です。よろしくお願いします」


 男子達の視線が一気に集まる。

 神崎は正直可愛い。

 中学時代、何度もアプローチされていた。

 特定の人と交際することはなかったみたいだが。


「質問です!彼氏はいるんですか?」


 こんな質問をする奴は大概モテない。

 案の定、質問をしていたのは自己紹介で変顔をしていた伊藤だった。

 男子達の良くやった!と言わんばかりの視線を集める伊藤。

 脳内お花畑ばっかりだ。


「いないです……。でもそれくらい大切な人はいます!」


 照れながらこちらを見つめる神崎。

 嫌な予感がする。


「大塚海都くんです!」


 その一言により、男子内における俺の冷遇は決定したであろう。


 ガイアの試練は始まったばかりであった。

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