大塚くんと入学式

 友人は多いけど、親友がいない。

 友人は少ないけど、親友がいる。

 この両者でより幸せなのは圧倒的に後者だ。

 何故なら、本当に辛いことや嬉しいことは関係が深くなければ決して理解し合えない、と友人も親友もいない俺が思う。


「隣失礼するな」


 友人について考えていた俺に誰かが話しかけてきた。


大杉蓮おおすぎれんや。よろしゅう」


 短髪でとても爽やかな、絵に描いたような好青年がそこに立っていた。

 一目でこいつはいい奴ってのが伝わってきた。


「おう。俺は大塚海都、よろしく」


 何の捻りもない返事をした。

 しかし、ファーストコンタクトにおいてこれがベストだ。

 無難そこ正義である。


「式までまだ時間あるし、SHINE交換しよーや」

「了解」


 SHINEとは、近年爆発的に利用されるソーシャル・ネットワーキング・サービスである。

 日本で生きていくなら、このアプリとツウィッターがあれば問題ない。


「あれ?海都、どこから追加するんやっけ?」

「貸してみろ。ホーム画面にいってここをタップするんだ」

「それやそれや!忘れてた、サンキュー」


 いきなり名前で呼ばれたことや、そこはおおきにやろが!とツッコミたいのも山々だったが、そんなことがどうでもよくなる程のことに気付いてしまった。

 気付きたくないこと程、気付いてしまう。

 悲しき人間の性。

 俺が大杉のスマホを操作する際にとんでもないものを目にしてしまった。


 ーー妹研究会ーー


 SHINEのグループ欄最上部にそう表記されていた。

 妹研究会。

 こんな見るからに怪しいグループにこんな爽やかボーイが所属しているだと……。

 ここでもし俺が、妹研究会だと!俺も入れてくれ!何て言えば、一気に10年来の仲になるだろう。

 しかし、その代償が妹研究会に入会と言う大罪。

 非等価交換過ぎる。

 あのグループは見なかったことにしよう。

 人生は選択の連続。

 間違いなく、良い選択だ。


「部活、何かやるんか?」

「いや、帰宅部だ」

「運動できそうやけどな?」

「まぁ、人並みにな」

「俺、実は同好会作ろうかなと思ってんねん!」


 やめろ!皆まで言うな!

 どうせ、妹同好会だろ。

 あぁ、ガイアよ。

 どうしてそう試練を課すのですか?妹道を歩めと言うのですか?


「そろそろ静かにした方がいいよ?」


 聞き馴染みのある声がガイアからの試練を回避させてくれた。

 隣に座る神崎に今ばかりは感謝しよう。

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