第9話 芳夏ワールド

そんなことを考えていたら、携帯を見るのを忘れていた。

手元に目線を落とすと、LINEの通知がバカみたいに溜まっている。

イライラMAXで携帯を開くと、目に入ったのは連打されたスタンプ。

『それ、やめて。うざい。』

送った瞬間に既読が着いた。

『だって芳夏がなんも返事くれねぇんだもん!』

『ちょっと考え事してたの』

そう送ったら、既読は着くくせに返事がない。

もう諦めたのかなと思って携帯をしまった瞬間にピコン!と機械音が夏の街に響く。

「あーー!もう!!」

一人でキレながら携帯を開いた。

『芳夏ってさ』

『なに?』

妙に続きが気になる終わり方をする。

バラエティ番組じゃないんだから、続きはCMの後!みたいな雰囲気は醸し出さないでほしい。

『なんか、世界持ってるよな。』

『芳夏ワールドっての?お前だけの世界。』

携帯を落としそうになった。

まさか、こんな真反対のことを感じているのに同じことを考えていたなんて。

自分でも、今の私が気持ち悪いくらいにやけているのが分かる。けど、笑いが込み上げてきてたまらなかった。

『ねぇ、』

既読が着いたのを確認して、敢えてそのままにしてみた。

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