第5話 しゅうぉん

「……分かるかも。」

意外にも『しゅうぉん』は私の胸のすっと入ってきた。

「炭酸みたいで、すっと立ち込めるけど、香った瞬間なくなっちゃって、凄く清々しい。」

今はこいつがこんなにびっくりしているか分かる。

私だってなんでこんなにするすると言葉が出てくるのか分からないから。

……もしかしたら私って語彙力豊富?

「すげぇ……。じゃ、じゃあぺトリコールは?!」

興奮気味のこいつに気圧されたせいか、またも私の口から言葉が漏れてくる。

「ゲオスミンよりはもったりしてる。今から雨だなーって憂鬱だけど、ちょっと楽しみになる匂い。」

「違ぇよ!その……しゅうぉん、みたいな、、」

もごもごと言葉がちっちゃくなっていく。その姿にちょっとだけイラッとした。

私が感動した『しゅうぉん』を創り出したくせに、なんで弱気なんだよ。って。

「知らない。桐生が考えて」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る