サキュバスを狩る者達
エッタは、王都にいた。
しかし、王都のマーケットで買い物をしていたところ、冒険者ギルド長の使者に出くわした。むげに断ることもできないので、ギルドへ向かうことにした。
ギルドの会議室に通されると、二十名以上の上位ランク冒険者がいた。
あまり良い予感はしなかった。
エッタが部屋に入った後、3名ほど追加で入室するのを持ってから、ギルド長は話を始めた。
「忙しい中、集まってもらい感謝する。
早速だが、王国は、今、深刻な状況にある。
主要都市がサキュバスの勢力下にあることが判明した。
早急に街を取り戻さねばならない。
諸君らには期待している。
是非とも協力願いたい」
そういうと、皆に資料を配布した。
ギルド長は続ける。
「テミス、エルベ、クォーダ、レイデンの奪還は急務だ。
街を統括しているアーク・サキュバスを退治してほしい。
だが可能な限り住人に危害は加えないでもらいたい。
報酬は通常より高めに設定してある。
よろしくたのむ」
いずれも難攻不落の要塞都市だ。
皆、渋い顔をしていた。
とはいえ、ここで断れば、冒険者等級が下げられるか、最悪、剥奪されるかもしれない。テミスで冒険者登録したエッタの場合は特に切実だ。
依頼を断るものはいなかった。
チーム分けをして、作戦会議に入り、解散した。
エッタは、テミスの攻略チームに入った。
今夜出発することになっていた。
……
王都の冒険者ギルドの会議室。
ミスリル等級の冒険者シリウスは、他の冒険者を値踏みしていた。
だが、王国の主力である勇者達に比べるとかなりの粗悪品ばかりだった。
無駄足だと思い、帰ろうとしたとき、気が変わった。
遅れて部屋に入ってきた女ローグが別格だったからだ。
この娘は使える。
シリウスは狙いを定めた。
女と同じ、テミスの攻略チームに入ると、仕事の準備を始めた。
……
テミスを治めるネームド・アーク・サキュバス『エカテリーナ』は、内通者の報告により、王都の動きを察知していた。
もはやSランク祓魔師であっても、脅威にはならない。
また、新開発された
エカテリーナは、テミスの領主に守りを固めさせた。
敵対するヒューマンが多ければ多いほど、攻略は飛躍的に難しくなるのだ。
……
サキュバス・クイーン『アダーラ』は
即戦力を手に入れられ、資質の高い人材の獲得や育成時間の短縮になる夢の様な魔術なのだが、これには問題があった。魔術の施行には、膨大な量の宝石を必要とするのだ。しかも勇者はヒューマンが多く、寿命が短い。50年もすればすぐに役に立たなくなるのだ。
さらに
すでに使い古してしまった勇者達は、ネクロマンシーを利用してデスナイトやリッチとして再利用されているが、生前ほどの能力は発揮できず、とうの昔に主力から退いている状況だ。
アダーラは焦っていた。
ヒューマンよりも長命で資質が高く、
……
テミスの街は大混乱になっていた。
状況が変わり、冒険者だけで穏便に済ませることが難しくなったため、王都から軍が動いたのだ。
エッタ達冒険者は、混乱に乗じて、王都のワイバーン部隊に紛れて領主の居城に侵入し、エカテリーナを倒す手筈になっていた。
エッタ達はワイバーンから城の屋根に飛び降りると、外壁をロープでおりながら、各階の様子を伺った。ワイバーン部隊は中庭に突撃し、周囲を焼き払い、場内を混乱させてくれていた。
程なく、シリウスが口笛を鳴らし、ハンドサインで、エカテリーナの居場所を指し示した。玉座の間だ。
重武装した衛兵と、アーク・サキュバスが、エカテリーナの周囲を固めていた。
ワイバーン部隊が、先に突入して、近衛兵とアーク・サキュバス達にファイヤ・ブレスを放つと同時に、相乗りしていた兵士たちが飛び降り、玉座の間は揉み合いの戦場と化した。
シリウスの合図で、エッタ達も侵入し、玉座のエカテリーナを目指す。
冒険者の一人が、玉座の間全体に高濃度の祓魔結界を展開した。
重装備のアーク・サキュバス達は怯むことなく、立ち向かってくる。
エッタは、気配を最大限に消して、アーク・サキュバスの一人の背後に回り込むと、鎧の隙間にナイフを刺し、祓魔術を流し込んだ。
その瞬間、アーク・サキュバスは、黒焦げになり、倒れ込んだ。
「ヒュー、やるねぇ」
シリウスがエッタを称賛する。
シリウスも負けじと、別のアーク・サキュバスの鎧の隙間に、ナイフを突き立て、祓魔術を流し込み、始末する。
冒険者の一人が、さらに高濃度の祓魔結界を展開すると、アーク・サキュバス達は流石に耐えられなくなったのか、呻き声を上げ、膝をついた。
エカテリーナが玉座の間を覆う様に、重力魔法を発動する。
敵味方関係なく、地にふした。
冒険者は、祓魔結界を維持しきれず、解除する。
アーク・サキュバス達は、冒険者達に狙いを定めた。
エッタとシリウスにはアーク・サキュバスが2名ずつ張り付いた。
「俺が引きつける、お前はエカテリーナを始末しろ」
シリウスはそういうと、ナイフを床に突き刺し、魔法陣を生成した。
周囲のアーク・サキュバスは身動きが取れなくなった、
エッタは縮地のスキルで、エカテリーナの背後に飛ぶ。
エカテリーナは瞬間移動して、再び、重力魔法を発動させた。
が、エッタの姿は消えてしまった。デコイだ。
そして、エカテリーナの背後に、二振りのナイフを突き立て、最大限の祓魔術を流し込んだ。
と同時に、テミスの兵士達は気を失って倒れ込んだ。
のこりは、サキュバス達の殲滅だった。
後は、あっという間に方が付いた。
残務処理は王国兵に任せ、エッタ達冒険者は、シリウスから渡された王都行きのテレポートスクロールで帰還した。
……
王国は、テミスとレイデンの奪還に成功した。
しかし、エルベとクォーダでは睨み合いが続いていた。
冒険者達がサキュバスの魅了の魔術にやられ、寝返ったらしい。
ギルド長は、テミスとレイデンから帰還した冒険者達にエルベの攻略を追加依頼した。万全を期して、テミス組とレイデン組で合流し、まずはエルベを陥落させることになったそうだ。ギルド長は、クォーダ攻略には別にあてがあるような
冒険者達は、小一時間ほど怪我の治療と休憩時間を挟み、エルベ近郊に仮設された転送ポイントへ、シリウスから渡されたテレポートスクロールで転移した。
王国兵と合流すると作戦会議に入った。
エルベは軍事都市で、対空魔法の武装が整備されているため、空からの侵入は困難だった。
敵の手に落ちた冒険者達は、古い地下水路を使って侵入したのだが、待ち構えていたサキュバス達に返り討ちになったしまったらしい。狭い暗闇の中ではサキュバスに利があった。
そこで魔王軍と国王軍が睨み合っている最前線の本陣から、一人の勇者を召喚することになった。
彼の名は、フォールクヴェール=アスターク。
フォールクヴェールが極大魔法をエルベに打ち込んだ隙に、要塞内部に侵入する作戦だ。甚大な被害が予想されるが、それでも、その方法が一番被害が少ないと上層部は判断したのだった。
しかし、予定時間を過ぎてもフォールクヴェイルが来る気配がなかった。
どうやら、前線で動きがあったらしい。
ひと段落するまで、待機となった。
程なく、兵士たちは慌ただしくしなった。
一人の冒険者がクォーダを陥落させたらしい。
エッタは、心が躍った。
任務を放棄してすぐにでも帰投したかった。
いまなら王都にいるはずだ。
などと思っていたら、エルベで大爆発が起こった。
フォールクヴェールは、転移魔法で到着すると、打ち合わせ通り、極大魔法はなち、すぐに転移魔法で帰投してしまったらしい。
兵士と冒険者達は、
エッタも仕方なく突入を開始した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます