あのお姉さんは相葉さん
班の4人で食べ終わった後も時間がかなり余ったので話し込んでいた。ちなみに、他の班は近くにあるアスレチックで遊んだりしている。楽しそうなんだけど……
それから時間が経って帰校する時間となった。誠也たちの班は結局その間話していただけで終わった。
「う~ん。じゃあ片付け始めようかな~」
その三坂さんの言葉で誠也たちの班は片付けを始めた。周りの班も同じようにしている。
誠也の班では三坂さんが支持を出してテキパキと終わらせることができた。それから、バッグを確認して忘れ物が無いかを確認していた時の事だった。
「あれ? 鍵をどこかに落としたのでしょうか……?」
「夏海ちゃん、どうしたの~?」
「鍵をどこかに落としまったようで…… また、やってしまいました……」
「またなのね~ それなら、みんなで探そっか。 2人もそれで大丈夫なの~?」
三坂さんの一言で相葉さんの鍵を探すことになった。それにしても、どこに置いたのかも分からないとなると大変だよな。
「相葉さん、最後に鍵を見たのってどこ?」
「えっ えっと、最後に見たのはご飯を食べ始める前だったと思います。あ、あの本当にすみません! また鍵を探すのを手伝ってもらって!」
(……? 「また」ってどういうことだ? まぁいまはそんなことよりも鍵を探すことが先か……)
「それくらい大丈夫だけど。それよりも鍵に何か特徴とかあったりしない?」
「え、えっと。これくらいのイルカのキーホルダーが付いているくらいです。青くて、少しだけラメが入っているように」
相葉さんはそう言いながら手で握りこぶし大の輪を作りながらそう言った。
「分かった。教えてくれてありがとうね」
(なんか、似たようなものを見たことがあるような気がするな……)
それから、班の4人で相葉さんの鍵を探して数分経った後の事。大きめのキーホルダーが付いていることから、すぐに見つかると思っていた4人だったが、芝が生えていることもあって、思いのほか時間をとられた。
(多分、これかな)
芝から探したイルカのキーホルダー付きの鍵。それはあのお姉さんがもっていた鍵とまったく同じもののように見えた。
「あれ? 高見君見つけたの~!? ナイスなの~!」
「え!? 本当ですか!? ありがとうございます。玲奈さんも山口くんもありが阿東ございます!」
そう言いながら相葉さんが誠也の持つ鍵に手を伸ばした。しかし、誠也は鍵を渡すことなく、相葉さんの事を見つめていた。
「え、えっと…… 相葉さんってもしかしてだけど、あのおね……」
「本当にありがとうございます! 助かりました! アハハ」
相葉さんは誠也の手から奪い取るように鍵を受け取った。
誠也が詳しく聞くかどうかを迷っていた時。
「学校戻るから、集合しろー!」
担任の良く響く声で誠也含めたクラスメートは集まることになった。
それからクラスの面々は、最終確認やゴミを地面に捨てたままにしていないか等の確認をしてからバスに乗り込むことになった。
(結局、何も聞けないまま有耶無耶になって終わりそうだな…… でも、おなじキーホルダーを持っているのは、大しておかしいことでもないか……)
しかし、その考えはすぐに裏切られることになった。
バス移動にて学校に到着した後、そのまま簡易的なHRをして解散となった。
帰ろうとしたときに、いつも一緒に遊んだりしている人たちが誠也に話しかけて寄り道しないかと誘ったが、誠也はその誘いすべてを断った。
それから、地下道を通り、改札を抜け、地下鉄に乗る。幸い、この時間帯はかなり空いているようで、席にも余裕がある。
電車に乗りすぐ横にある隅のほうに座る。
(ここって、無性に座りたくなるよな……)
しかし、それは他の人にも同じこと言えることらしい。
「「あ……」」
意図しなくその声は被ってしまった。何故なら、誠也の前に相葉さんが座ったからだ。
BBQで最後に起こったこともあって、2人は話すにはやや雰囲気が悪いと言えるような感じだ。しかし、そこにはつい先日まであったように、相葉さんが誠也の事を睨むなどということはない。それに電車内で、しかも対面上の席で話すのはマナー上でもあまりよくない。
結局2人は話せるわけもなく、ただただ俯いているだけか、スマホを手にしているだけであった。
それから、2人は豊洲駅にて同時に降りて、同じ新交通と謳うモノレールの駅に向かった。
「「……」」
それは2人の雰囲気をさらに微妙にするものであった。ここまで来ると2人とも察するものがあったのか、隣同士と言っても差し支えない距離感で歩き、同じ電車に乗った。5分ほど車窓からの景色を2人で眺めながら同じ駅で降りた。もちろん(?)駅から歩く方向も同じだ。ここまで一緒に歩いているというのに、2人の間には会話が一つもない。
「ねぇ、相葉さんってこの辺に住んでいたりする」
「ここまで来ておいて、他の地域に住んでいるわけないじゃないですか」
「ですよね。後さ、図書館で転んだり、この辺りで鍵を亡くしたことある? 丁度、相葉さんが今日落とした鍵みたいにイルカのキーホルダーつけてあるやつね」
「さすがに気づかれたらしいですね」
「ここまで偶然が重なってたまるか。それに目は取り敢えず、髪の色は完全に一致しているし。それに身長とかも考えたらさすがにね」
「いつもそこまで見ているんですか? さすがに引きますよ」
(いつも見ているのが惚れているからなんて言えないよなぁ……)
「それにしても、こんな近くに住んでいたんだな。さすがにマンションは別みたいだけど」
ここまでで分かるとは思うが、図書館であったお姉さんと相葉さんは同一人物である。
「そういえば、高見君は玲奈さんと連絡先を交換しました?」
相葉さんが急に上擦った声でそう聞いてくる。
「いや、していないけど」
「そ、それなら、私と交換しないでしょうか!?」
「い、いいけど」
(やばい、僕もかなり緊張しているな……)
それから、2人はRAINで連絡先を交換した。それから、誠也はBBQの班のグループに招待されたので入った。
誠也と夏海が家に帰ってから、新しいグループを見ながら笑っていたのは言うまでもないだろう。
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