3. 選抜試験−3
◇第3クラス四組
朝学校にレイが着くと、カインはいつもの席に座っていた。
レイもいつもどおりその隣の席に着席する。
「レイどうだったよ?」
「ああ、
「やったな!俺も通過できたぜ!」
いえーいと二人はハイタッチをする。
通過とか、合格というのは勿論、選抜試験のことである。
「ほらー席につけー」
立っていた生徒はそれぞれ席に着き、海部内は教壇に立つ。
「昨日選抜試験に参加したものはお疲れであった。通過出来なかったとしても、参加したこと、そのこと自体に意義があると私は思う。」
「いいこと言えるのなあの先生。もっと罵るのかなとか思ってたわ」
カインがぽろっと溢す。
「どうした七里。なにか文句でもあるか?」
「毎度毎度、ありませんって〜」
クラスに笑い声が興る。カインは人当たりがよくクラス内外で人気があるのだ。
「それで選抜の結果だが、四組からは3人が今回の校内戦に出場することになった」
――え?3人も?
教室は驚きの感情一色になる。第3クラスなら1クラスに一人いれば良い方なのだ。
それもそのはず。上位クラスは家や、準備校である程度の心得があるが、第3クラスは庶民が中心。
庶民は準備校や、家で武術を教えることは困難なのである。
そもそも庶民が学校に通えるのは当たり前ではない。第3クラスは庶民中心ではあるが、士族に近かったり、庶民の中で言ったら裕福な家庭の子供しか通えていない。(通う必要がない)
「まず体術。
――おおー
――伊那さんはまだしも七里はなんかの間違いだろ〜
――伊那ちゃん頑張ってぇ〜
などの応援(?)と拍手が生まれる。
「おめでとう。二人とも。校内戦での活躍を期待している」
海部内からも激励の言葉が送られる。
「ありがとうございます!」
「次に剣術部門で
しかし体術の時とは異なり、微妙な雰囲気になる。
―やっぱさすがと言うかねぇ
―本当に第3クラスなのかよぉ〜
称賛のようなものは冗談に近い口調ではあったが、そこにあった感情は諦念に近いものであった。
やはりレイには勝つことはできない。
やはりレイは別世界の人間だ。
そして遅れた拍手が時間を追尾する。
海部内は一度咳払いをする。
「第3クラスで同じ組から3人も出場者が出たのは滅多にない快挙だ。3人とも本番でも頑張ってくれ」
はいっ!と声が揃った。
しかしレイはもうこの時から、気付かずに校内戦について薄っすら悩み始めていたのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
「お前なら通過すると思ってたぜ!」
カインは腕をレインの肩に回す。
「カインもな」
「このまま一緒に魔法校戦出ちまうか!」
「ははは。そうだね」
無邪気に戯れ合うレイに先程からずっと様子を見ていた少女が話しかける。
「あんたって思ってたより友好的というか、幼いというか、明るいというか…。学術首席だからもっと堅いやつだっと思ってたわ」
「あはは。幼くはないよ!あ、伊那さんもおめでとう。これからよろしくね」
レイは右手を差し出す。
「伊那って呼び捨てでいいわ。私も潤女って呼ばせてもらうから」
「いいねぇ。青春だね〜」
「あんたもよ。三下の七里」
「なんだよ、その枕詞は」
伊那槭樹。背丈はレイより少し高く、カインと同じくらいで、茶髪の短髪で細身の少女。
世界東部の士族、伊那家の娘である。伊那家は魔法武術を得意とし
「じゃあまた後で!」
「またな!」
レイはカイン、槭樹と別れ第2特別魔法講義室に入る。
◇第2特別魔法講義室
「では1学年武技競戦、部門:剣術の説明会を始める。一同礼!!」
司会は
そして壇上に一人の教諭が登場する。軽く咳払いをし、
「今年の校内戦、武技競戦の代表担当教諭を務めることになった、1学年S1クラス担任ダルド=ラインロードである。よろしく頼む、諸君」
そういうとダルドは軽く全体を見る。レイも目が合った事が分かった。
「では大まかなルールを説明する」
ルールは以下のようであった。
一.使用武具について
武具は短剣から槍まで長さは自由であるが、1本であること。
使用武具は学校側で用意される、殺傷性のないものを使用すること。また、短剣や槍は事前に申請すること。
二.競技中は必ず
三.勝敗について
武具の有効範囲がセルソンの有効部位にあたり、セルソンの防御魔法が発動した時。
どちらか一方が降参した時。
武具を場外に飛ばされた時。場内であれば拾えば試合は続行される。
他、剣を相手に突き立てるなど、審判が勝敗があった判断する状況を作り上げた時。
以上の場合で勝敗が決定される。
四.反則
相手の体勢を崩す程度の体術の行使は構わないが、強打であると判断された場合は失格とする。
魔法またはそれに準するもの(魔法陣や魔道具など)を使用したと確認されれば失格とする。
五.競技は負け抜けで行われる。ただし3位決定戦は行われる。
「以上である。何か質問のあるものはいるかね?」
一人の生徒が質問する。
「対戦相手はもう決まってますか?」
「いや、まだであるよ。当日に抽選で決定することになっている。この答えでいいかな?」
「はい。ありがとうございます!」
この生徒それが本当に気になった言うより、単にダルドと話したかったのだろう。
「ほかに質問のあるものはいないかね?……まぁ、後で個別に来てくれてもいい。本番は1週間後だ。体調管理などを怠らずに、最高の状態で試合に臨むように。これで私からの話を終わろう。素晴らしい試合を期待している!」
拍手と共に壇上から退場する。
「それではこれにて説明会を終わる。解散して構わない」
レイが立ち上がろうとすると一人の生徒が話しかけてきた。
「よぉ。お前本当に通過していたのな」
「ああ、
「お、名前憶えてくれたのか?学術首席に憶えてもらえるなんて光栄だね」
「お互い頑張ろうね」
「あ、ああ。そうだな。せいぜい
と言い残しレイの向かおうとした方向と逆方向に廊下を進んでいった。
(―いじめられるってなんのことだろう?)
レイもその後に講義室を退室した。
「お!レイ!そっちも終わったのか?寮に帰ろうぜ!」
カインが隣の教室から出てきた。
「あ、うん!」
二人は寮に向かった。
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