第12話 いい気になんてなってません!!
「ころなちゃん?ちょっといーい?ちょっと気になってることがあってぇー」
うっっ
出たぁ……まぁ、予測していなかったといえばうそになるけど……
「な、なぁに?天野川さん」
放課後。三人で日中日学校から帰ろうと廊下をでたところで、超・ぶりっ子モードの天野川さんに呼び止められる。
嫌な予感しかしないってぇ。
「やっだぁー!天野川さんってなによぉー!いつもみたいに乃華ちゃんってよんでよぉ!私たち、友達でしょう?」
い、いや、友達になった覚えも乃華ちゃんってよんだ覚えもないのですが……
「ころな、私たちにかまわずいってくれていいわよ?」
「そうだな。最近おれたちとばっかりいるもんな。元からの友達も大事にするのは大事だぞ」
いや美零さん!萩澤くん!ちがうから!ちがうって!
自分でいうのもなんだけど、元からの友達なんていないからっ!
「そうじゃない」っていいたいけど、天野川さんの笑みが怖すぎていえないよぉ…
「蓮斗くんと美零ちゃんって優しいね!ありがとー!ばいばーい!」
あぁ、取り巻きの一人が二人を追っ払ってしまったぁ………
「さて。夏野さん?要件は何か、わかってるでしょうね?」
くるっと振り向いた天野川さんの顔は恐ろしさそのもの。
ぶりっ子口調も直って、完全に怒りをあらわにしてる……
「あ、あの二人のコト……?」
「わかってるならっっ!!」
「「「「「「「「「「さっさと離れなさいよぉぉぉお!!!」」」」」」」」」」
「ひぃぃぃ!!」
一斉に怒鳴られ、すっかり小さくなる。
だって、仕方、なくない?
そらぞら関係の「仲間」だし、カンペキ不可抗力!
なんて、口にできないし。どうしたらいいんだろ……。
「だいたい、あんたと蓮斗くんと美零ちゃん、不釣り合いよ!一緒にいないほうがいいにきまってるわ!」
「それは……十分承知してますが………」
「わかってるならさっさと離れろってんの!私が仲良くしたいのに……あんたがいるから近づきにくいの!」
うぅぅぅ……なにいってもだめだぁ………
怖い。どうしよう。
涙がでそうになった、その時。
「一緒にいるかどうか決めるのは、私たちでしょ」
「不釣り合いとか、そんなのおれたちからみたら何でもねーし。お前らには関係ねーじゃん」
「えっ」
萩澤くんと美零さんが、背後に立っていた。
「なんでここに……帰ったんじゃなかったの…?」
「いや、なんか怒鳴り声が聞こえて、何事かと来てみたらこうなってたってわけ。つーか、あれだけでっかい声だして、ばれないとでも思ってんのか?」
はぁ、とため息をついて、こんなくだらないこと、とつぶやいた美零さん。
「ころな、いくわよ。こんな人たちに付き合ってる暇はないわ」
「あっ、えっ」
手をとられて、走らされる。
天野川さんと、その取り巻きたちが、何事もなかったみたいに、ささっと逃げていったのが見えた。
「びっくりした……こわ、かった……」
校門を出て、一番初めの交差点で止まる。
「ったく。定番だけど、そういうことしてくるやつってまだいるのね。ころなも友達じゃないならちゃんといいなさいよねー」
「う、うん。ありがとう……」
予想外だった。
あの二人は、私が夏野未奈の娘だから仲良くしてくれて仕方なく一緒に居てくれてるんだと思ってた。
でも、二人は自分で選んで私のそばにいるっていってくれた。
それがなんともいえず嬉しくて。
無意識のうちに口元にあてた手が口角にふれて、笑っていることに気づいた。
なんだろう。気持ちが軽い。ふわふわしてる。
なにかしらしゃべりたくなって、少し前を歩く美零さんの隣にならんだ。
「今日も『そらぞら』に行くの?」
「今日は授業もないし、行かなくてもいいわよね……。あ、そうだ。ころな。ここの学校って、学校配布のスマホをスキャンすれば6時まで、再登校可能なんでしょ?」
「え、うん。そうだけど……」
……やったことはないけどね。だってただでさえ行きたくないのに、もう一回いくなんて絶対いやじゃない?
「それだったら、学校図書館の使い方教えてもらえないかしら?どうあつかえばいいのかわからなくて、今日、なにも借りずにもどってきちゃったのよね」
「あ、それだったらおれも。友達に、初等部の先生に返しといてって渡されたペンがあってさ。でも初等部への入り方とか全くわからないんだよ」
そっか。二人とも、入学のときからはいないから、詳しい説明受けてないんだね。
学校は好きじゃないけど、この二人となら楽しいかも。
「いいよ!じゃ、うちにカバンおいていこっか!学校の空き地はさんでとなりだから……」
ふうは委員会と部活で毎日帰りが遅いから、鉢合わせにはならないはず。
「「ええっ!?となり!?」」
「あなた、すごい近いところに住んでるのね……」
えへっ、いいでしょ?
「忘れ物したって、余裕でとりにこれるんだ!」
「や、忘れ物すんなよ」
「えー、間に合うんだからいいじゃん」
みんなで、家に向かって、駆け出した。
二人は、さっきあった出来事なんてもうすっかり忘れてるかもしれないけど。
一緒にいるかどうか決めるのは私たち、お前らには関係ないっていってくれたこと。
たぶん、私にとって忘れられない思い出になるんだろうなぁ。
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