第16話 ふうに見つかっちゃった!?
「うー、なんかうまくいかない……」
私は自分の部屋のベッドで頭をかかえた。
左手に空紐をまいて、家で練習中!!
「モチーフから連想されるもの」をつくるのが難しくって……
共同作品を作るとき、みんなに置いて行かれないように練習することにしたんだ。
もちろん、ふうには内緒でね!
「もう一回やってみよう!」
今私がやってるのは、左手で雲のモチーフを出して、それを羊のぬいぐるみに変えるっていう練習。
形がすごく似てるし、本物でなければやりやすいと思って、これで頑張ってるんだ。
モチーフを羊にっっ!
ひつじ、羊、ヒツジ……
一点に集中して、羊を思い浮かべて、雲に触れる。
お願い、できますようにっ…………
ポン
軽い効果音の後、でてきたのは…
「……あぁ」
失敗だぁ……
出来た羊は、また顔なし。他はうまく、可愛くできてるんだけど……
なんでだろう……
…あ、そういえば私、羊の顔のイメージがないかも!
実際に羊を見たことはないし、ぬいぐるみやイラストはもう忘れちゃって、ぼんやりしてる。
もしかしたらそれが原因……!?
よし、さっそく羊のイラスト、調べてみよう!
スマホを取り出して、検索する。
「あー、実際の羊はこんなんなってるんだ……あれ、こっちのイラスト、可愛い。このぬいぐるみは、なんか他のと違う……」
調べてみるといろいろ面白くって、ついつい夢中になっちゃった。
だから、ふうの呼びかけにも、うわの空で。
「ころー?部屋、入ってもいい?」
「…うーん……」
ガチャ、とドアが開いて、顔を上げる。
「あれ……?ころな、こんなぬいぐるみ持ってたっけ?しかも顔がないし、こんな大量に」
「………えっ!?」
うわぁぁぁぁあ!
ふう、はいってきちゃったんだ!
ばっとあたりを見渡すと、処理するのを忘れてた、失敗作の羊がたくさん転がってる!
やばい、空使いのこと、バレそう!!
「あー、うん。と、友達にもらったの……」
「こんなにたくさん?」
………ソウオモイマスヨネ。
「えーっと、あーっと、友達、ユーフォ―キャッチャーで調子にのって取りすぎちゃったんだって。それで、くれたの」
「不良品を?」
うん、まぁ、顔なしですからねぇ。
「も、もともとそういうものらしいよ。自分で書くんだって」
「へぇ……?そうなんだぁ?」
こんな苦しい言い訳で通るわけないか……?
でも!お願いお願いお願い!納得してー!
「……うん、まぁいっか。あ、これこんな大量にいらないだろうから、少しちょーだい」
「え、うん、いいけど」
「ありがとー。あ、そうだ。お風呂わいたから、先入っていーよ」
「あ、うん、ありがと……」
ガチャ
ドアが閉まる。
……よかったぁ…
なんとかごまかせたみたい…。
これからは、うっかり見つかるなんてことがないように、気を付けなくっちゃ。
あ、そういえば、扉がしまったあとで、ふうの笑い声が聞こえた気がしたんだけど……気のせい、だよね??
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます