第25話 戦いから一転して

「おいっ。おい!」

痛い。痛いよぉ。たたかなくてもよくな、い……

「あのね…。はやく起きなさいったら。」

あれ、この声、美零さん?

「私達、生きてるのっ!?」

ガバっと起き上がって周りを確認する。見えたのは、いつもある空き地の風景。

どうやらあの変な空間は消え去ったみたい。

「みんないる……。よ、よかったー……。」

「安心しきってる場合かよ。何が起こったか知らんがあいつは逃げた。だが問題はまだ残ってる。あの人が乱入してきて、結果的にはおれたちを怪しげに思ってるんだろうから。」

完全に疑ってる目で、まだ寝てるふうを見る一同。

「あの人って……、私の妹のふうなだよ?」

「「「「えぇ!?」」」」

「ころな、妹なんていたんだね。」

「うん。双子のね。」

「「「「双子っ!?」」」」

ありゃ?話してなかった?

「聞いたこともないわ。空使いの家系に双子なんてあまりいないものよ。」

そうなんだ……知らなかった。

「ま、狸寝入りもやめてよね。盗み聞きはよくないよ。ふうなさんとやら。」

狸寝入りって、ふうのこと!?

ボーゼンとする私をよそに、「ばれちゃ仕方ないか」といって、起き上がるふう。

「あなたたちは確か、ころの組に転校してきた萩澤蓮斗くんと上橋美零さんかな。あとの二人は……もしかして東中と西中の有名人、柚加ちゃんと倉畑くん?」

「…さすがね。日中のスターさん。」

なんか、お互い口以上の会話が目と目で交わされてる!何この集団!怖いよ!

「やめてよー。私そんなんじゃないよ。ころの方がすごいし、可愛いもの。あなたたちもころと仲いいならわかるんじゃない?無自覚天然と思いきや、妙なところでしっかりしてて、なのに大事な時には肝が据わってるっていうの?そういうところが萌えポイントなのよっ!」

「ふう……何言ってんのかわかんないけど、なんか恥ずかしいからもうやめて……」

か細い私の声は届いていないみたいで。

「ふふっ、伊達にシスコン十年やってませんから。」

いぇいとブイサインしてる。

シ、シスコンって……あれ、えっと、なんだっけ?

「言い切った……」

「なぜ自慢気に……?」

若干、男子が引いてる気がするんですけど……。

はぁっとため息をついた美零さん。でもそのあとすぐ、口元だけ微笑んで、クイッと首をかしげる。

うわぁ!美少女オーラ全開!普段のクールさをみじんも感じさせない、他人への顔だよ!

「で、わかってるんでしょ?私たちが聞きたいこと」

「じゃあこっちが聞きたいことと交換条件でどーお?」

こちらもニコッと無邪気な顔になって首をかしげる、ふう。

しばらくの間、ニコニコと向き合う二人。

こわいこわいこわいですって!

でも、ね。決まり事と、わからないこと。はかりにかけがたいけどっ!やっぱり!

美零さんは言葉に詰まって、ため息をついた。

「………飲むわ」

「仕方ないね」

「わかった」

「はぁい」

みんなも同じ。

「そうだよね!」

「……なんか一人だけずれてるわね」

「そう?……って私のこと!?」

みんなの笑い声があふれる空き地でした。

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