第14話 みんなで作る共同作品

「こんにちはー」

「あ、ころちゃん!どしたの?遅かったねぇ?」

「あ、何でもないよー。今日、掃除当番だっただけー」

「そぉかぁ。おつかれ様ねっ!」

授業も何回かこなしてきて、そらぞらにも慣れてきた今日このごろ。私は育練塔のドアを引き開けた。

今日は水曜日。

授業はないけど、そらぞらに通うのが日課になっててここへきてる。

ふうなは部活で遅くなるし、家に居ても仕方がないしね。

それにそらぞらにいると、なんだかとっても落ち着くんだ。

お母さんもここにいたんだと思うとなんだか温かい気持ち半分、寂しい気持ち半分って感じだけどね。

それにやっぱりここ、育練塔は心地いい。

みんなも同じみたいで、何の予定もなしに集まっては、それぞれ好きなことをしている。

おしゃべりしたり、空紐で遊んだり、ここのこと説明してもらったり、勉強教えてもらったり、宿題手伝ってもらったり……。

あれ?手伝ってもらったりとか、教えてもらったりとか……。

なにかしてもらうことがほとんど……?あれ、私ってみんなに迷惑かけてる……?

えっと、と、とにかく、いちいち気をつかわないでいられる友達って初めてだからなんか嬉しいんだ!

「お、そうだ。ころなは宿題、どうだ?進んでるか?」

宿題……嫌な響き。とくに昨日、数学の課題が山ほど出たんだよー…

「う……。いやぁ、XとかYとかこんがらがっちゃって。全然です……」

数学って難しいよね……。なんで数字に英語が混ざってくるのかなぁ…

なのにたくさん宿題を出す先生、鬼だあぁ!

「いやいやそうじゃなくて。そらぞらの実技の宿題だよ。みんな、何やればいいか迷ってるところなんだ。だからみんなまだ手付かず。ころなはどんなことしてるの?」

じつぎのしゅくだい……ん?そんな宿題は知らないぞ……?

「そんなのあったっけ?」

「……もしかして忘れてたのかしら?」

急いで記憶を探すけど、わかんない。

うーん。あったようななかったような……?

「あはは、覚えてないみたい……。」

「…また、ね。」

「ほんと。」

あーもう、私のハードディスク、小さすぎっ!

今もみんなが話題にしてくれなかったら絶対アウトだったよね。

「じゃあさ、この際、共同作品にしない?」

きょうどうさくひん……共同作品!?素敵な言葉だよー!

「さんせいっ!みんなで考えた方がきっといい作品になるんじゃない!?」

「そうね。行き詰って何も出てこないよりはいいかも」

「おれも賛成だな。なんか楽しそうだ」

みんなの顔がキラキラし始めた。

やっぱりここはそうでなくっちゃね!

「ころなは?」

顔をのぞき込まれて、私がまだ答えてないことに気づく。

「え、あ、できるなら頼みたいくらいなんだけど」

そういってはにかむと、みんなに笑顔の波紋が広がっていった。

「よし、そうと決まればテーマ決めて作り始めよう!」

「「「「おー!」」」」

やったー!なんだか気分が上がってきた!けど。

「あれ?テーマって……。なんの宿題?なにをするの?」

「あ~、ころちゃんはそこからだったねぇ」

ゆずちゃんに苦笑されつつある私。

ゆずちゃん、天然でおっとりしてるけど実は頭はすごくいいんだよ!

特に文系はいつも学年一位なんだそう。

このメンバーの中で一番気が合うのはゆずちゃんだけど、成績は合わないっていうか、天と地ほどの差があるわけでして。

みんなに引っ張ってもらうのは申し訳ないけど、でもこの時間が楽しいのは私だけじゃないはず。

これがわがままだとしても、もう少し、このままでいたいな。

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