第8話 大失敗!!


あれから数日後。

私は、サングラスにマスクに深い帽子、普段は全く着ないようなブカブカのパンツにワイルドなアニマルプリントのTシャツという格好で駅前に立っております!

そりゃあ、クラスの子たちに見つかりたくないからに決まってる。

なんでこんな格好なのかと言うと。前も後ろも右も左も人!人!人!

ここって駅だったっけって不安になっちゃうぐらいまわりが見えない。

「おーい、夏野!ここ!ここだ!」

「あっ!」

パッと声のした方を向くと。

例の、あの男の子と女の子がいた。

うん、やっぱり。

こんなにたくさん人がいる中でも目立つんだよなぁ、あの二人…。

そんなことを思いながら、私はそのまま二人の方へ走っていく。

「まったく探したわよ。待ち合わせは東口でっていったじゃない。ここは西口よ?」

「あ、えっ?」

看板を確認しようと、慌てて首をぐりんと回す。

人が多すぎて見えないっ!

ぴょんと飛んでみえたのは。

『日中日駅 西口』

「……ごめん。私、バカだから………」

え、えへへ。間違えちゃった。

そう、今日もこの二人に『そらぞら』へ連れて行ってもらうことにしたんだ。

実は『そらぞら』は現実世界のものじゃないんだって。

あくまでも幻影に近いもので、例の瞬間移動しゃぼん玉を通してじゃないと辿りつけないらしい。

そのしゃぼん玉、思い玉っていうらしいんだよね?

えっと、

「人々の信じる心を玉の中に込めて作っているのが思い玉。どんな心をいれるかで用途が違うけど、この思い玉はそらぞらを信じる心を込めてある。」

って、楓さんが説明してくれた気が、する……

で、まだ私に思い玉を預けると何をしでかすかわからないからってことで、昨日とおんなじように三人一緒に来るよう楓さんに言われたのです。

「それにしても不審者みたいな格好だが、どうかしたのか?」

ギクッ

や、やっぱりヘンデスカ?

できればそこはツッコまないでほしかった……

「まぁいいじゃない。ところで。あれは持ってきた?」

「あ、うん!バッチリ持ってきた!」

私はポシェットのなかから箱を出し、さらにその中から綺麗な紐を取り出した。

お母さんの残していった、あの紐。

なんとなんとなんとっ!

この紐を使って空の天気を操るんだって!

いやぁ、こんな繋がりがあったなんて、知らなかったなぁ……

糸と糸を組んで作られた組紐の中でも特別なものだから「空紐」っていう名前があるそう。

どんなふうに使うかは今日教えてもらえるっていうんだからなんか楽しみ!

「ふ〜ん、雲だから灰色かと思ってたけど水色なのね。」

「やっぱり綺麗だよな、空紐」

だよねだよねっ!

二人も目をキラキラさせてる。

あははっ、やっぱりこの二人、空使いのこと好きなんだな〜。

このことになると目の色が変わるもん。仕事バカっていったら、また怒られちゃいそうだけど。

でも、分かる気がするんだ。私だって気になる。

他の空紐はどんな感じなのかなーって!

ってあれ?そういえば二人も空使いなんだよね?

二人も空紐持ってくるように要求されてたと思うんだけど。

どこにあるのかな? 

「ここらへんで、いいだろう」

男の子の声で一気に現実に戻された。

私たちはいつの間にか人影のない路地に立ってた。

「じゃ、ころな。これ封筒。よろしくね」

手の上に封筒をポンとのせられた。え、私がまた割るの?

「嫌なのか?」

えっとね、うん。嫌とかじゃないんだけど。

でもさ。私、肩に手を置かれるとかなれてなくてドキドキしちゃうからさ?

「…あぁ、うっとうしい。ほらここに立って!」

「ふひゃっ」

両肩をつかまれて二人の間に入れられる。

「いくよ」

ま、待って!まだフラフラしてるからっ!

ビリッ グラッ パンッ

それは本当に一瞬の出来事だった。

1つ目は、男の子が封筒を破って開けた音。

2つ目は、まだふらついていた私の体が倒れていく音。

そして、3つ目は………まだ二人とも私の肩に手をおいていないのに、私の体が封筒から飛び出してきた思い玉を割っちゃった音。

つまり私は二人を置いてそらぞらに行っちゃったわけです。

……えへっ

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