第3話 しゃぼん玉で瞬間移動!?

放課後、中等部の廊下に響く声。

「おーい、まて!まてったら!」

「まてっていわれてもまたないですーーーー!!」

私、廊下を全力疾走中!

なぜならばあのキラキラ転校生二人と鬼ごっこをしているからです。

といっても仲良しこよしで遊んでるわけではなく、ただ現実から逃げたくてクラスから逃げたらなぜか追いかけられちゃってる、ってわけなんだけど。

まったくもう、関わりたくないオーラ伝わってないのかなぁ?

ここまで来るときにどっかの先生に注意されたけど言い終わる前に通り過ぎちゃった。うわぁぁ、こんなんじゃ悪目立ちしちゃうよ!

とはいえ、足の遅い私と彼らとの距離はあっという間につめられていて、すぐに捕まってしまった。

「あのね、どこまで逃げる気なの?」

女の子に肩をつかまれて私は真っ青。

「とっ、とりあえずこっちに!」

天野川乃華率いるクラスのカースト上位の子に気づかれたくない一心で、二人を人気のないところに引っ張る。 

私は普通に、何事もなく日常を過ごしていたいだけなのにっ!

誰もいないところ、誰にも見つからないところはない!?

右見て左見て前を向いて。

見つけた!

…………数字が並んだ液晶パネルを。

コレ、生徒が入っちゃだめ系のやつだよね?

パスワードを知ってる人しか開けないーってやつ。

だったら、この先には誰もいない可能性大。

ええい、こうなったらヤケだ!

急いでかけより、ダメ元で数字をテキトーに押す!

すると、なんとなんとなんと!

「ひっ、開いちゃった!?」

私、すごくない!?幸運すぎる!

よし、こんなときは幸運に身を任せて入っちゃえ!

開いたおもそーなドアに二人を引っ張りながら身を滑り込ませる。

最後に体全身を使ってギーっとドアを締めた。

「……お前、なんか、すごいやつだな」

「同感」

不意に後ろから聞こえてきた声。

へ?

「そ、それほどでもー」

「いや、ほめてねぇし」

………ですよね。

「お前、なににそんなオドオドしてんの」

「それにしても私達に話しかられることがそんなに嫌なわけ?」

うっ!

女の子の目がさっきとは変わって冷たい!怖い!

「そそ、それよりなんですか?ここまで私を追いかけ回した理由は。あなたたちは誰なんですか?会ったことないですよね?」

質問攻めにして必死でごまかす。

女の子はため息をついてからあるものを取り出した。

白い、1枚の封筒。

それを、はい。と私に渡す。

あ、どうも。うんうん。封筒1つね。ありがとうございます。

……………え?

いやいや、「はい」って渡されても何をすればいいのよ!

心の中のツッコミなんて聞こえない二人はフリーズした私を見て不思議そう。

「………えと、あの、これ、どうしたらいいんですかね?」

「「はぁっ!?」」

「いや、思い玉が何か知らないなんて言わないよな?」

「さっきから薄々思ってたけど、あんたホントに夏野未奈様の娘?」

や、そんなに怒られましても私そんなもの知らないよ!?

それに、夏野未奈様って!

「なんで私のお母さんの名前を知ってるの?」

「……娘なのは間違いなさそうね。夏野未奈様は私が尊敬する空使いの一人なのよ。私たちはその空使いの端くれ」

「ソラツガイって何?」

「そーらーづーかーい!!」

話が全然噛み合わない私たち。

「わかった、わーがった。」

しばらく傍観していた男の子は不穏な空気を断ち切って私達を黙らせると、はぁーっと大きくため息をつく。

「夏野、お前が何にも知らないのはわかったから一旦黙れ。そして俺たちの言う通りにしてみろ」

…………なんか勝手に呆れられてる。

けどまぁ、このままわけわかんないこと聞かれるより大人しく従ったほうが良さそうかも。

「まず封筒を開封しろ。」

私は「夏野ころな様」と書いてある封筒をビリビリッと破く。

すると中から出てきたのは紙ではなく。 

「しゃ、しゃぼん玉………?」

そう。

丸い形をゆがませたり戻したりしてふわふわ浮いてる、あのしゃぼん玉。

何か違うことがあるとすればいつもより、虹色の光が濃いような。

「これ、何?何でしゃぼん玉がここから出てきたの?」

「説明はあとだ。百聞は一見にしかず、論より証拠っていうしな。ほら、それこっちによこせ。」

ひややっこはいっぺんにしかたべず?

らーゆよりしょうゆ?

なんか意味わかんない言葉ばかり言われる。

それによこせって………割れちゃうよ?

ためらう私にイライラしたのか、女の子が「ああっもう!」といって自分でそのしゃぼん玉を両手に持つ。

目の前でそんなことされちゃ、割れて液が飛び散っちゃうじゃん!

びっくり目をつぶるけど。

「触って割れたりなんかしないわよ」

女の子は目も合わせず言った。

なんなのよぉ、と思いながらゆっくり目を開ける。

「じゃあ、次はおれたちの間に立って」

ただ立てば、いいの?すこし緊張ぎみの足取りでおとなしく従った。

隣から「よし」と聞こえたと同時に私の肩に2つの手が乗っかった。

「なっ何?どうしたの?」

「いいから。今度はこの思い玉、割って」

えっ?このしゃぼん玉もどき、割れないんじゃなかったっけ?

割れって言われてもどうしたら割れるのっ?どうすればっ?

アワアワしてる私を尻目に女の子はしゃぼん玉もどきを空中に放り投げる。

「ほら、つつけばいいのよ」

いや、触って割れたりしないっていってませんでしたっけ。

もー意味わかんない事だらけ。

だけど今はもう何も考えないようにする!

えい、と人差し指でしゃぼん玉もどきをつつく。

するとそれはテレビで見るように触れたところから、スローモーションで割れていった。

だけど割れたのはそれだけじゃなく。

それまで普通に見えていた景色も歪んで、しゃぼん玉の動きと全く同じように割れた。そして割れたところには違うどこかの景色が見えていて。

あっという間に、日中日学校の風景は消えた。

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