君の視界に僕はいない
水木
眼中にない
『眼中にない。』
良い表現だと思う。最初に言った人を誉めたい。
相手にしない、構わない、気にもとめない。
そのことを「眼中にない」と表現する。
今回は、その一例。まさに言葉どうりの例をご紹介しよう。
ぼくには片思いしているひとがいる。
高校で出会って、クラスは違うものの、同じ部活なのでほぼ毎日会う。
ぼくの通う高校は、いわゆる「自称進学校」といわれるようなところで、みんなそこそこに勉強ができ、人気もそこそこだ。だからといって、東京大学にいけるような天才はいるわけでもなく、部活もこれといって特徴はない。どの部も県大会より上には行くことはない。
そんな中途半端な学校なため、モデルやアイドルみたいな人もいないが、
その子はまぁかわいい。校内でも有名なぐらいに。
いつでも人に囲まれている。人気者だ。
だが、「眼中にない」とはルックスとか人気の話ではない。
彼女もかわいいで有名だが、ぼくもそこそこの人気はある。
クラスでいつも真ん中の方にいるし、ルックスも良い方だ。そこそこの頻度でキャーキャー言われるレベル。授業中寝ててもテストで点を取るので先生からの評判も悪くない。行事で前に出て何かすればそのあと、知らない人からも声をかけられる。
ね?そこに大きな差はない。
「じゃあ、そんな人気者の美男美女ならコクればどうにでもなるだろ。」
と思った方。そんな簡単ではないのです。
まぁ、お互いにこれまで沢山告白されてきたし、恋愛経験もある。
でも、それはいつも「される側」。するのに耐性はないのだ。
あっちに気があるかないか。
ぼくらからするととても重要なキーなのだ。
でも、多分君はぼくのことなんて眼中にないだろう。
なぜ、そういえるか。
それは、精神的、心象的なことではなく、物理的なことだ。
彼女は、背が低い。ちっちゃい。高校生だけど150あるかないか。
中学生、下手したら小学生でもいける感じだ。
まぁ、それがかわいいのだが、問題はぼくの背が180あるということ。
すれ違ったとしても君は、ぼくの顔を、目を、見ることはない。でもぼくからはいつでも見えてしまう。目で追ってしまう。
いつもそこに大きな溝を感じるのだ。
「そんなことで?」と思うかもしれないが、好きな人が振り向いてくれない。それどころか向かい合ってるのに目が合わないのは、だいぶ心にくる。
君が前に付き合ってた元カレも背が低かった。いつも手を繋いで、目をみて喋りながら帰っていた。多分、キスするときも、少し背伸びをすれば、彼が屈まなくても届くのだろう。
そんな想像をすると、胸が痛くなった。
部活の時だっていつも君とぼくほ同じ方向を向いている。
君は前で、ぼくは後ろ。前だけをまっすぐ見てる君の目を、ぼくは後ろから見る。
恋なのか、憧れなのか、劣等感なのか。また心が痛くなるのだ。
いつも君が見ている世界にぼくはいない。
まさに「眼中にない」といったところだろう。
君がぼくのことを見ていなくても、ぼくからは見えている。
キミの見てる世界を僕は知らない。
僕は、キミの見える世界を想像しながら、キミの幸せを願い、見守るのだ。
君の視界に僕はいない 水木 @Dog_wood
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