第7話 ネジをゆるめる鳥のうた

 頭のネジがどこかにいったって、すぐにずれるとは限らない。ネジのない頭がしだいにずれていく。


 あの子の願いは晴れにしてくださいだった。僕の願いは一つ。恩返し。つるじゃないけども。恩返しができる人になれますように。それは願い事じゃないと言われそうだから、誰にも話したことはない。小さなことでもいいから少しずつありがとうを返せる人になりたい。僕を置いてくれる姉貴にも、時に怒ってくれる優しい早織ちゃんにも、見守ってくれる両親にも、飯に連れ出してくれる友だちにもお礼をしたい。


 僕の頭のネジはゆるくなって、今もすごくバカなことを考えている。仕事をやめたとき、二度とやるもんかと思った。貯金を切り崩しながら生活しているけれど、このままゆるくてぶっ飛んだ頭のままで。そのままでいれたらどれだけ楽だろう。気を使わずに、無理せずに頑張らずに、ゆっくりした時間を過ごして。時々思い出を引っ張り出して。


 だけどそんなことではお礼はできない。そのうち生活すらできなくなる。


 かごの中の鳥のように誰かに飼われるのは嫌だ。小屋の中のニワトリのように飛べないのは嫌だ。海の上のカモメのようにたかく、ひくく飛びたい。屋根の上の風見鶏のように魔除けにはなれない。夕方のカラスのように誰かと一緒に帰りたい。あの子が描いた鳥のように自由に青空にいたい。


 よく眠れて朝早く起きた。スズメが賑やかに話している。スズメ語も分からない。日本語もあやしい。

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