第6話 ねんねんころりよ鳥のうた

 こもりうたを歌うカラスを僕はみたことがない。あ、でもカラス語わかんないからな。カラスの鳴き声は嫌いじゃない。


 姉貴の手伝いをして一緒に夕飯作って、絵本読んだりして一緒に遊ぶ。夜になって隣の部屋が寝静まる。僕は自分の部屋で勉強を始める。飽きたら音楽を聴いて、好きなことをする。昼間眠れないと早織ちゃんにいったら羊の絵をかいてくれた。僕にくれるという。真似してノートの端っこに羊をかいた。けっこううまくかけた。今日は眠れそうだ。明日姉貴の買い物の荷物持ちをするよう言われた。大丈夫な時でいいよ、と。実家からの墓参りの誘いは姉貴が断ったようだった。ノートパソコンの明かりを消した。真っ黒になる。カラスを思い出した。


 引っ越したあと遊んだのは何回か数えるほどで、中学生になると忘れていった。彼女は名字が変わると言っていた。今じゃ名前もうろ覚えだ。花火を見る横顔が可愛くて、光に照らされたり消えたり、とてもキラキラしていた。思い出せるのは小さな頃の楽しい思い出ばかり、それ以上は僕が拒んでいる。いつからこんな風にひねくれたのかさかのぼる作業。


 早織ちゃんを寝かしつけている姉貴を見て、お母さんと重なる。お母さんもお父さんもいつまでも子ども扱いしてさ、と姉貴は僕のことを怒らない。



「私寂しがり屋だから、あんたがいてくれて助かってるのよ」


「早織ちゃんもいるじゃん」


「いないときもあるでしょ」



 姉貴は寂しがりでいじっぱりだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る